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1999年前半のショート・ニュースと噂とヨタ話と...
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走り書き程度で正式公開するには内容が不十分と思えるのですが、速報性等を考えて試験的にアップします。御意見を頂ければ幸いです。年表の作成を基本に始めたので、事件の日付順に列挙しています。ですから更新箇所はランダムです。
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(※完全に個人的な覚え書きです。裏を取ってないものや、他言無用の未確認情報故、内容は保証致しませんのであしからず)
 
更新:2002/04/23
 
最近のひとりごと 1999年7月以降のたわごと
 
1999年前半のひとりごと 1999年1月〜6月のたわごと

1998年のひとりごと 1998年のたわごと

IPニュース 1999年の最新ニュース


1999/06/30 !!!Final!!!
 
1. 日本の特許裁判判決、ホームページで公開へ
 7月5日から遂に日本でも最近の判決文がウェブから容易に入手可能になる。しかも東京、大阪に限っては地裁判決も!
 判決文のウェブ上公開が進んでいるアメリカでも、地裁判決はなかなか入手できないので、これは快挙!!!
 読売オンライン社会面より。
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 半導体などハイテク分野やコンピューターソフトの特許権、著作権などをめぐる複雑な知的財産権訴訟が増加している中、最高裁は29日、東京、大阪の地裁、高裁などで言い渡された同訴訟の判決全文を来月5日からインターネットで公開することを決めた。
 日々進歩している先端技術をめぐる訴訟は、裁判所で新たな判断が示されるケースが多く、経済界からは「より早く、多くの判決の内容を入手したい」という声が強かった。最高裁が地裁、高裁の判決文をインターネットで公開するのは初めての試みだ。
 判決は、最高裁のホームページの「知的財産権判決速報」コーナーで公開される。全国の同種訴訟のうち8割以上が係属している東京、大阪の地裁、高裁の判決についてはすべてを翌日、それ以外の地裁、高裁の判決は、著名な訴訟などに限って後日、公開する。
 ただしプライバシーや企業秘密に配慮する必要がある場合には公開されない。
 訴訟は、特許権侵害による損害賠償や侵害差し止め請求のほか、特許庁の審決の取り消しを求めるケースなどがある。
 
関連情報:
・「『知的財産権』判決をネットで速報」Yomiuri On-Line(1999年6月30日)
http://www.yomiuri.co.jp/newsj2/ic30i301.htm
・最高裁ホームページ
http://www.courts.go.jp/
 
2. 2000年訴訟制限法案、成立へ
 懸念されていた2000年問題を原因とする訴訟を制限する法案につき、連邦議会とホワイトハウスが合意に達した模様。
 毎日デイリーニュースより。
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 2000年問題が原因のトラブルで消費者が企業相手に起こす損害賠償訴訟の頻発が予想される米国で29日、米議会とホワイトハウスが、この種の訴訟を制限する法案で合意に達した。企業救済策を主にした議会側と、消費者保護の盛り込みを求めるホワイトハウス側で長い間、綱引きが続いていたが、結局、来年の大統領選挙の有力候補であるゴア副大統領が、支援組織のハイテク企業を重視し、企業寄りの法案で決着した。2000年問題の対策にも、大統領選挙を念頭に置いた政治的妥協が行われたことから、消費者団体は「消費者の権利をはく奪したホワイトハウスを断じて許せない」と怒っている。
 2000年問題では制限法案がなければ、米国では総額1兆ドルに達する訴訟が相次ぐとの試算もある。29日発表された合意案では、消費者が訴訟を起こすまでに最高90日間の猶予期間が設けられ、この間に企業がコンピュータートラブルを修復したり、法廷外での調停などが可能になる。
 さらに、総額1000万ドル以下の集団訴訟は起こせないようにし、企業にとって負担の大きい集団訴訟を制限した。小企業を守るため、正社員50人未満の企業に対する訴訟は損害賠償金に特別の上限を設けた。
 一方で、消費者の権利を保護するため、企業が消費者の信頼を裏切ったケースでは、消費者は全面的な利益を得られると明記した。
 
関連情報:
・「2000年問題:米議会と政府、消費者の訴訟制限で合意」毎日新聞(1999年6月30日)
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/199906/30/0630e039-300.html
 
 
1999/06/29
 
1. カリフォルニア大対ジェネンティック、まだまだ続く泥仕合
 ローニュースネットワークのIP LAW CENTERより。
 こないだの陪審評決不能(deadlock)に続き、当然ながら再審理が請求されたこの事件、先週の最高裁判決によってまた動きがありそうである。
 ジェネンティック社は本件の裁判地(venue)としてインディアナ州インディアナポリスが妥当と主張していた。ジェ社は1990年、インディアナポリスにおいてカ大を提訴、その後カ大はジェ社をサウスサンフランシスコに提訴した。ジェ社の拠点はサウスサンフランシスコであるが、同社はイーライ・リリー社に対しても関連訴訟をインディアナポリスに提訴しており、ここが適切な裁判地であると長年主張していた。
 CAFCはこの主張を受け入れ、故にカ大は裁判地の変更を余儀なくされていた。カ大は、憲法修正第11条に基づきあらゆる州機関は特許権侵害訴訟から免責されると主張したが、CAFCはカ大が特許権を取得しジェ社を脅したことで免責特権を放棄した(waived)と判断(実際はこんな単純な理由でないけど)、カ大に州の訴追免除(state immunity)なしとしている。
 しかし、カレッジ・セービングス・バンク事件の最高裁判決によって、裁判地変更の判示は無効になりそうである。カ大は最高裁に上告していたが、カレッジ・セービングス・バンク事件の判決が下るまで裁量上告の可否決定は保留にされていた。先日カレッジ・セービングス・バンク事件の判決が下り、最高裁は州立大学を含む州の機関に対し、特許権侵害訴訟における訴追免除を与えた模様。
(この記事、これまでの流れを俯瞰しているが言葉を端折っているので判りにくい。)
 
関連情報:
・Mike Mckee, "UC Regents v. Genentech: The Changing Face of Battle.", The Recorder/Cal Law (June 29, 1999).
http://www.lawnewsnet.com/stories/A2862-1999Jun28.html
・College Savings Bank v. Florida Prepaid Post-Secondary Education Expense Board, 99 C.D.O.S. 4936 (1999).
・Florida Prepaid Post-Secondary Education Expense Board v. College Savings Bank, 99 C.D.O.S. 4945 (1999).
 
 
2. 米特許庁、シリコンバレー見学を再開か
 4年前まで米国特許商標庁は、審査官をシリコンバレーに送り込み、最先端技術に直にふれるというプログラムを行っていた。しかし、クリントン政権の横暴(?)によって、庁予算を他の政府機関に回すという暴挙のおかげで特許庁は重大な資金難に陥り、このプログラムを断念する羽目になった。(例えば審査官向けのトレーニングコース「パテントアカデミー(Patent Academy、現"PP")」を一般に開放することもやっていたが、予算難のため中断されていた。最近復活したが、値段が恐ろしく高騰している。)
 で、最近このプログラムを復活しようという動きがある。このところ審査の質の低下が非常に問題となっており、関連業界から審査の質改善の要望が強いことも受けて、審査官教育を強化しようということらしい。研究視察(sabbatical、慰安旅行?にならなきゃいいが)は結構なことかもしれないが、別件で、先行技術調査を審査官にやらせず審査のみに専念させるという案も検討されている。サーチ分野を特定して効率を高めようとか、いろいろ合理化案を検討しているが、ちょっと問題がないだろうか...
 
関連情報:
・Brenda Sandburg, "PTO's Destination: Silicon Valley" The Recorder/Cal Law (June 29, 1999).
http://www.lawnewsnet.com/stories/A2865-1999Jun28.html
 
 
3. CAFC判決−補強証拠の必要性
 フィニガン対ITC事件(Finnigan Corp. v. International Trade Commission)において、CAFCは特許を無効とする証言を証拠として有効にするため補強証拠(corroboration)の必要性を検討している。担当合議体は、リッチ、ミッシェル、ローリー判事で、判決主文担当はローリー判事。
 結論として、公然使用を理由に特許を無効とするには、補強証拠が必要である。
 特許を無効とする証言証拠(testimonial evidence)は「明白かつ説得力のある証拠(clear and convincing evidence)」でなければならない。これまでの事件では102条(f)(冒認)や(g)(発明の優先性)等の証言には補強証拠が必要とされていた。
 「証言が先行技術としての適格を有するためには、合理の原則(rule of reason)の下、当該先行技術が102条(g)の要件を具備しているという当該証拠全体(totality of the evidence)が明白かつ説得力のあるものでなければならない。冒認や発明の優先性の主張を取り巻く事実に関する発明者の主張は、それのみでは(証言を裏付ける補強証拠なしでは)明白かつ説得力のある証拠のレベルに達し得ない」(Price v. Symsek)。
 今回の事件では102条(b)の他人による公然実施が問題となったが、これとて同様である。
 「補強証拠の必要性は、特許を無効にする行為について証言する当事者が訴訟の結果に利害を有する(この者が被告だから)か、利害関係はないが利害関係のある当事者側に立って証言しているかに関わらない。...証人自身に利害関係がないからといって、補強証拠の要件を免除されるわけではない。(Barbed Wire Patent)」
 一方、従前のトムソン社対クイックソット社事件(Thomson S.A. v. Quixote Corp.)でCAFCは、補強証拠のない証言で102条(g)を理由に特許無効としていたが、これは本件と矛盾しないという。トムソン社事件で証言した二名は訴訟当事者でない第三者(MCA社の従業員)であった。CAFCはこの事件では補強証拠なしでこれらの証言を証拠として認め、特許を無効としている。トムソン社事件では「証言の補強は、証言に係る発明者が冒認もしくは発明の優先性の問題を主張しており、争点に関わる特許クレームの優先性が認められることで利益を得る立場にある場合にのみ必要」と判示していた。しかしトムソン事件では、補強証拠のない一の証人のみしか証拠がなかったわけでなく、証人が2人いた他様々な物証があったので、(証言に係る発明者が第三者であったことなどを含め)状況全体を検討した結果、補強証拠がなくても特許無効とされたのである。要するに証拠が法的基準を満たしているかどうかの問題と言える。
 さらにフィニガン事件ではITCで提示しなかった主張が、当然のことながらCAFCで採用されなかった。
 
関連情報:
・Finnigan Corp. v. International Trade Commission, No.98-1411 (Fed. Cir. 1999).
http://www.ipo.org/FinniganvITC6_9_99.htm
・Thomson S.A. v. Quixote Corp., 166 F.3d 1172, 49 USPQ2d 1530 (Fed. Cir. 1999), petition for cert. filed, 67 U.S.L.W. 3692 (U.S. May 11, 1999).
http://www.ipo.org/Thomsonv.Quixote.html
・Price v. Symsek, 988 F.2d 1187, 26 USPQ2d 1031 (Fed. Cir. 1993).
・Barbed Wire Patent, 143 U.S. 275 (1891).
 
 
4. ジオシティの無料ホームページに突然の落とし穴?(1999年7月4日追加)
 無料ホームページやメールアカウント等のサービスで有名なジオシティーズは、先頃ヤフーに買収された。(かく言う私も、ホームページを初めて立ち上げるときにジオシティを練習台として使わせていただいた。)
 Hot Wiredを読むと、ヤフーはジオシティにアップしたホームページの内容を同社の所有物とする旨契約を変更したらしい。
 「ヤフー社のサービス規約によると、ウェブ制作者はヤフー社に対し、あらゆる形態、媒体において『コンテンツを使用、複製、修正、借用、公開、翻訳、派生的作品制作、配布、演奏、展示するための、使用料無料、恒久的、変更不能、非排他的、サブライセンス自由な権利およびライセンス』を与えなければならない。」という。さすがにちょっとやりすぎでは、と非難の声が上がっている模様。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++
 その後、ヤフー社は方針を変更した模様。
 
関連情報:
・Declan McCullagh,日本語版:林 智彦,岩坂 彰「ヤフーがジオシティーズを完全占拠」Wired News(1999年6月30日)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/2674.html
・Declan McCullagh,日本語版:林 智彦,合原弘子「ヤフーがジオシティーズに対する方針を変更」Wired News(1999年6月30日)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/2684.html
・Sandeep Junnarkar,日本語版:小山敦史「ボイコットをうけてヤフーが譲歩」CNET Japan Tech News(1999年6月30日)
http://japan.cnet.com/News/1999/Item/990702-3.html
・Declan McCullaph,日本語版:中嶋瑞穂,合原弘子「ジオシティーズ難民の引寄せに各サイトは懸命(上)」Wired News(1999年7月2日)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/2690.html
・Declan McCullagh,日本語版:合原弘子,合原亮一「ジオシティーズの紛争終結」Wired News(1999年7月8日)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/2720.html
 
 
1999/06/25
 
1. カレッジ・セービングスバンク事件の影響
 
 まだまだ続く最高裁ネタ。ダウ・ジョーンズ社によると、昨日連邦最高裁はCAFCに対し、9年も継続しているカリフォルニア大対ジェネンティックの特許権侵害訴訟を、カレッジ・セービングスバンク判決の見地から再審理するよう命じた。
 この事件、関係が複雑なのであまりつっこまないが、カリフォルニア大側は、自身が州立大学だから、主権者の免責により連邦法(特許法)違反で連邦裁判所に訴えられることはないと主張していた。CAFCはこの主張を退けている。
 ダウ・ジョーンズ社といえばウォールストリート・ジャーナル、という安易な発想でWSJのホームページを探したが、この件について触れられている記事はなかった。かわりに、最高裁が今回の開廷期間1998年〜1999年で下した判決を、企業にとって重要な事項という観点からまとめた記事が本日付けで掲載されていた。これによると、州権支持はレンキスト法廷の最重要テーマの一つであるらしい。面白いので、一部紹介させていただくと、
・州を拘束する連邦法制定の権限を持つ連邦議会に新たな制限を課した。
 カレッジ・セービングス・バンク対フロリダ...(College Savings Bank vs. Florida Prepaid Postsecondary Education Expense Board)
・供給者と購入者の関係における制約は、自動的に独禁法(antitrust laws)違反となるものでない。
 ナイネックス社対ディスコン(Nynex Corp. vs. Discon)
・障害者差別禁止法(Americans With Disabilities Act)で保護される障害の範囲を最高裁判事は狭く解釈。
 サットン対ユナイテッド航空(Sutton vs. United Airlines)
・科学者でない専門家証人(nonscientific expert witnesses)が法廷で証言できるかどうかを裁判官が判断するルールを強化。
 クモー・タイヤ社対カーマイケル(Kumho Tire Co. vs. Carmichael, 119 S. Ct. 1167, 50 USPQ2d 1177 (1999).)1999年3月23日判決
多数意見:ブレーヤー判事
同意・反対意見:スティーブンス判事
"...Daubert referred only to 'scientific' knowledge because that was the nature of the expertise there at issue,"
→the Daubert "gatekeeping" obligation applies not only to "scientific" testimony, but to all expert testimony.
(※「国際法務戦略」1999年6月号、「発明」に説明あり)
 
情報元および関連資料:
・ROBERT S. GREENBERGER, "Businesses Win Several Decisions, But States-Rights Cases May Hurt", THE WALL STREET JOURNAL(June 25, 1999).(有料)
・Genentech Inc. v. University of California, 46 USPQ2d 1586 (Fed. Cir. 1998).
・University of California v. Eli Lilly and Co., 43 USPQ2d 1398 (Fed. Cir. 1997)
・「月刊・国際法務戦略」1999年6月号
・服部健一「日米ホットライン」発明,発明協会
 
2. iMacの外観はトレード・ドレス?
 iMacの大ヒットにあやかり、これをまねたスタイルの周辺機器やパソコンが続々登場している。いずれもカラフルで中身が見える半透明のスケルトン仕様。しかし、度が過ぎると知的所有権問題もあり得るのでは...著作権侵害では難しいかもしれないが、トレードドレスなら該当の可能性も考えられる。トレードドレスを主張するには、外形が機能的でないことが必要だが、どう考えてもパソコンの機能にあの形状や特徴は無関係だろう...
 
関連情報:
・Joanna Glasner,日本語版:合原弘子,岩坂 彰「『iMac』まねっこパソコン」Wired News(1999年6月24日)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/2648.html
・Joel Deane,「“Think Different”しない? iMacライクマシン」ZDNet/USA(1999年6月25日)
http://www.zdnet.co.jp/news/9906/25/pcexpo1.html
 
 
3. 特許公報のダウンロード支援ソフト
 下記のホームページで公開されている。Sissy氏作のシェアウェアで、米特許庁、日本特許庁用がそれぞれ1200円。
 
・Patent Re*Search ToolBox
http://member.nifty.ne.jp/sissy/
 
 
4. 特許翻訳ソフトのバージョンアップ
 ZDショッピングニュースより。
 ノヴァは特許翻訳ソフト「PAT-Transer/ef Ver.2.0」(パットトランサー)の今秋発売を記念して、「無償バージョンアップ&PC-Transer/ejプレゼントキャンペーン」を開始。現行バージョンのPAT-Transer/ef購入者に対し9月発売予定の次期バージョンを無償アップグレード。これは普通だが、加えて汎用翻訳ソフト「PC-Transer/ej Ver.6.0」がもれなくプレゼントされるとのこと。キャンペーンは、新しいバージョンが発売されるまで実施。
 「PC-Transer/ej Ver.6.0」は私も使っている。個人的な使用感としては、以前使用していたWindows3.1版よりは使い勝手が改良されている。しかし、依然バグがある。これまでどおり、仕事の翻訳には使っていない。英文記事のあらましを掴むとき等に使う程度。定価198,000円。パットトランサーは使ったことがないので何とも言えない。ある人から聞いたところでは、やはり実用的でないとのこと。
 なお、ノヴァでは専門語辞書がホームページから無料で利用できるサービスを提供している。これはありがたい。
 
関連情報:
・「ノヴァが特許翻訳ソフトの無償バージョンアップキャンペーンを実施」ZDショッピングニュース(1999年6月25日)
http://www.zdnet.co.jp/news/shopping/990625/nova.html
・ノヴァのNEWS RELEASE
http://www.nova.co.jp/release/990625.txt
・辞書参照サービス
http://www.nova.co.jp/webdic/webdic.html
 
 
5. パテント・エージェント試験問題、Now Available!
 本年4月のエージェント試験問題がL/W Patent Bar Reviewのページでアップされている。PDF形式だけど、あまり綺麗でない。特許庁の公式版に期待。現在のところ、PTOの公式ページにはまだ掲載されていない。
 前回よりも長文問題は少なくなったので、日本人にはありがたい。
 
関連情報:
・L/W Patent Bar Review -- Homepage
http://www.patentbarreview.com/
・米特許庁登録統制部門(OFFICE OF ENROLLMENT AND DISCIPLINE)
http://www.uspto.gov/web/offices/dcom/olia/oed/
 
 
1999/06/24
 
1. 昨日の最高裁
 昨日米最高裁が下した3件の「州権擁護」判決は、本日のワシントンポスト第一面に載っていた。残念ながら、メインは特許・商標事件でなく公正労働基準法であったが...
 なお、日本版ニューズウィークのホームページでは、ワシントンポストのトップニュースの幾つかが日本語で紹介されている(動くCM付)。バックナンバーは一週間前まで。
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Justices, 5-4, Strengthen State Rights
By Joan Biskupic
 
5対4で裁判所が州の権利を強化
 最高裁判所は昨日、連邦政府から州に権限を移し、関連する3件の事例について、連邦法に準ずる個人の権利を州が侵害したと判断した場合、個人の告訴能力を実質的に制限する判決を下した。最高裁判所では意見が2つに分かれたが、この判決によって新たな面を切り開いたことになる。
 
 
High Court Overturns Asbestos Settlement
Ruling Limits Firms' Options in Class Actions
By Sharon Walsh
 
最高裁、アスベスト訴訟の和解を覆す
判決により、集団訴訟に関する企業の選択肢に制約が課されることに
 最高裁判所は昨日、次の2点で企業が数千件の訴訟を一つの和解で収拾することを一層難しくさせる決定を行い、15億ドルによるアスベスト訴訟の和解を覆した。すなわち、判事は7対2の多数で、企業側が支払額に上限を設けてはならないことと、同一集団内でも利害が対立する人々は別々の弁護士を立てなければならないという決定を下したのである。
(c)1998 The Washington Post Company
(c)1998 TBS-Britannica Co., Ltd.
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 もう一つワシントンポストネタ。ワシントンポスト新聞版(?)に、州の免責を扱った最高裁判決がまとめられているのでご紹介します。近年、最高裁は連邦議会の権限を縮減する方向にあるようです。
 
 最高裁がこれまで無効とした主なもの:
 
・低レベル放射性廃棄物の投棄を規制するよう州に要求した連邦法の一部
1992年 ニューヨーク州対米国連邦政府事件(New York v. United States)
 
・連邦政府が公立学校の1,000フィート以内に銃を持ち込むことを禁止しようとしたことは、(憲法1条に定められた)州際通商(interstate commerce)を規制する権限を逸脱するもの
1995年 米国連邦政府対ロペス事件(United States v. Lopez, 1995)
 
・インディアン居留区のギャンブル契約の交渉が不調に終わった場合、インディアン種族が連邦裁判所に訴え出ることを認めたインディアン賭博規制法の一部
1996年 セミノール族対フロリダ州事件(Seminole Tribe of Florida v. Florida, 1996)
 
・健康上、安全上その他の「やむを得ない必要性」がある場合にのみ、政府が宗教上の活動に介入することを認めた「信仰の自由回復法(The Religious Freedom Restoration Act)」
1997年 ブーン市対フロレス事件(City of Boerne v. Flores, 1997)
 
・拳銃購入希望者の経歴を調査するよう地方自治体の保安官に命じた「ブレイディ拳銃暴力防止法(Brady Handgun Violence Prevention Act)」の一部
1997年 プリンツ対米連邦政府(Printz v. United States, 1997)
 
 
情報元:
・ニューズウィーク日本版「ワシントンポスト:今日のヘッドライン」Newsweek Japan Online(1999年6月24日)
http://www.nwj.ne.jp/
・Joan Biskupic, "Justices, 5-4, Strengthen State Rights", Washington Post (June 24, 1999).
(オンライン版)
http://www.washingtonpost.com/wp-srv/WPcap/1999-06/24/028r-062499-idx.html
(新聞版、年表付でちょい詳しい※大文字に注意)
http://www.washingtonpost.com/wp-srv/WPlate/1999-06/24/139l-062499-idx.html
 
 
2. 2000年問題の訴訟制限法案、何とかして通したい財界
 2000年問題により多発すると危惧されている訴訟を制限する法案の、前途は依然暗い。経済界としては、できるだけ訴えられるリスクを抑えたいから法案を通したいのだが、例によって民主党の反対等のため成立は容易でなく、大統領の拒否権発動が予想されている。なんとか、議会を説得して法制化を図ろうとしているとの記事。
 
関連情報:
・AP通信"Congress Urged To Negotiate Y2K Bill", New York Times (June 24, 1999).
http://www.nytimes.com/aponline/w/AP-Y2K-Lawsuits.html
 
 
1999/06/23
 
1. 州を特許、商標裁判にかけることはできない!(修正中)
カレッジ・セービングス・バンク事件、最高裁で判決下る
 
 本日、特許権侵害、虚偽宣伝による商標法違反で州政府を連邦裁判所に訴えることの可否が争われていた裁判の判決が、共に最高裁で下された。結果は、不可。
 州の免責を無効にした連邦法は、憲法修正14条5項のデュープロセス条項の保障を根拠に立法化された法律として認められないので、無効であるという。
 州を訴えることが出来ないとは驚くべき結論であるが、最近の最高裁の動向を見ていると、なんとなく予想できた結果でもある。
 先日のザーコウ事件でも、最高裁はCAFCの大法廷判決を覆していた。今回の事件は大法廷ではないものの、やはりCAFCの判決を覆している。ヒルトンデイビス事件以降の展開を見ていると最高裁の判断と離れる方向に進みつつあるようにも思えるCAFCに対し、最高裁は警鐘を鳴らしているのだろうか?
 それはさておき、この問題は憲法や連邦と州の問題といったアメリカ特有の、法技術的な問題をはらんでいるので、特許関係者としては理論に深入りしなくても結論さえ押さえておけば十分と思われる。しかし、検討してみると面白い...
 1998年〜1999年の最高裁審理日程最終日となった本日、州権の拡大を認める判決3件がまとめて出された。予想されていたとおり、すべての事件が5対4の僅差できれいに割れている。決定票を握っているとされたケネディ判事(Justice Anthony Kennedy)が州権擁護側に付いたため、この結果となった。州権拡大を主張する保守派が、レンキスト裁判長をはじめとするオコナー、スカリア、ケネディ、トーマス判事。これに対するリベラル派はスティーブンス、ソーター、ギンスバーグ、ブレイヤー判事。(保守派の最高裁判事は、全員がレーガン政権もしくはブッシュ政権時に任命もしくは昇進されている。もちろん、リベラル派はクリントン政権。)
 州権擁護の保守派は、特許法及び商標法(及び著作権法も?)の一部(「保護明確化法」と名付けられた、州を被告として侵害訴訟を提訴できる旨を確認的に定めた規定)が、憲法修正11条に基づき違憲であると判断している。具体的には、1992年に改正された上記法律の「明確化法」制定によって、州の免責を無効にしようとした連邦議会の行為は憲法違反である、とした。
 とにかく結論としては、州政府やその機関を訴えることが極めて困難、事実上不可能となった訳だ。例えば、州立大学や病院などで特許権侵害が起こっているとしても、これらの機関を訴えることはできない。また商標権も問題となり得る。(今回争われたのは、商標権侵害ではなく、出所混同を生じさせる虚偽の広告行為であるが、直接商標権侵害が起こった場合も十分危ない。)
 この分でいくと、今回の判決を待って審理が再開されると思われるチャベス事件(Chavez v. Arte Publico Press)についても、ほぼ間違いなく著作権侵害で州を連邦裁判所に提訴不可との判決が下されると予想される。
 また余談であるが、これらの法と同様に州を被告として提訴することを規定していた公正労働基準法(Fair Labor Standards Act of 1938)が争われたオールデン対メーン州事件も、同日判決が下されている(ALDEN et al. v. MAINE, No. 98-436 (U.S. 1999).)。未払い賃金の支払いを求めて職員が地方自治体を訴えていた事件で、こちらも州側の勝ち。この事件では既に法律自体の違憲性には決着が付いていて、じゃあ州裁判所に訴えたらよかろうということで原告側は改めて州裁判所に提訴したものの、結局州裁判所でもダメ、ということに。
 この判決を書いているのはケネディ判事。判決によれば、合衆国憲法の「構成及び歴史」は州政府を連邦裁判所において提訴することから保護しているだけでなく、連邦法上の権利行使を求めて州裁判所へ提訴した個人による訴追からも免責される、とのこと。
ケネディ判事「連邦政府は強大な権限を有しているが、すべての権限を有している訳ではない。...憲法に基づき連邦政府に委譲された権限には、州裁判所において損害賠償を求める個人の訴訟に対し、提訴に同意していない州を従わせる権限は含まれていない。」
 これに反対意見を書いたソーター判事は、自身の反対意見を裁判官席から11分もかけて読み上げるという珍しいやり方で、強く反対の意を表明した。
ソーター判事「『法を超える者は存在しない('no man is above the law')』という原則は、アメリカ大統領から末端の公務員まで適用されており、同様に州にも適用されなければならない。」
 
 
関連情報:
・FINDLAW US SUPREME COURT CASE SUMMARIES, (June 23, 1999).
http://www.findlaw.com/casecode/supreme.html
・U.S. high court expands states' immunity from suits.", FindLaw (June 23, 1999).
http://legalnews.findlaw.com/news/19990623/bccourt.html&nofr=y
・"Supreme Court Boosts States' Rights", (AP通信発) NY Times (June 23, 1999).
http://www.nytimes.com/aponline/w/AP-Court-States-Rights.html
・LINDA GREENHOUSE, "States Are Given New Legal Shield by Supreme Court." New York Times (June 24, 1999).
http://www.nytimes.com/library/politics/scotus/articles/062499state-laws.html
・Bill Scanlon, Gregory Aharonian, "Supreme Court says states can't be sued for IP infringement" Internet Patent News (June 23, 1999).
・Florida Prepaid Postsecondary Education Expense Board v. College Savings Bank, 98-531 (U.S. 1999). (College Savings Bank II)(特許権侵害が「カレッジ・セービングスバンク『2』」)
判決文はレンキスト裁判長自らが担当し、オコナー、スカリア、ケネディ、トーマス判事が賛同。反対意見はスティーブンス判事が担当、ソーター、ギンスバーグ、ブレイヤー判事が賛同。
http://laws.findlaw.com/US/000/98-531.html
http://supct.law.cornell.edu/supct/html/98-531.ZS.html
・College Savings Bank v. Florida Prepaid Postsecondary Education Expense Board, 98-149 (U.S. 1999). (College Savings Bank I)(商標法に基づく虚偽宣伝)
判決文はスカリア判事が担当、レンキスト、オコナー、ケネディ、トーマス判事が賛同。反対意見はスティーブンス判事が担当。ブレイヤー判事も反対意見、これにスティーブンス(再度)、ソーター、ギンスバーグ判事が賛同。
http://laws.findlaw.com/US/000/98-149.html
http://supct.law.cornell.edu/supct/html/98-149.ZS.html
Alden et al. v. Maine, No. 98-436 (U.S. 1999).(公正労働基準法の違憲性)
判決文はケネディ判事が担当、レンキスト、オコナー、スカリア、トーマス判事が賛同。反対意見はソーター判事が起草、スティーブンス、ギンスバーグ、ブレイヤー判事が賛同。
http://laws.findlaw.com/US/000/98-436.html
College Savings Bank v. Florida Prepaid Postsecondary Education Expense Board, 148 F.3d 1355, 47 USPQ2d 1161 (Fed. Cir. 1998)
http://www.ipo.org/CollegeSavings97-1246.htm
College Savings Bank v. Florida Prepaid Postsecondary Education Expense Board, 131 F.3d 353, 45 USPQ2d 1001 (3rd Cir. 1997)
http://laws.findlaw.com/3rd/971755p.html
http://www.ljx.com/trademark/1297trca.html
Chavez v. Arte Publico Press, 139 F.3d 504 (5th Cir.), modified, 157 F.3d 282, 48 USPQ2d 1132 (5th Cir. 1998), rehearing en banc granted (Oct. 1, 1998).(著作権侵害と商標法違反、現在休廷中)
http://laws.findlaw.com/5th/9302881cv1.html
Seminole Tribe of Florida v. Florida, 517 U.S. 44, 116 S.Ct. 1114 (1996)
http://laws.findlaw.com/US/000/u10198.html
・憲法修正条項の原文
http://gopher.nara.gov/exhall/charters/constitution/amendments.html
・Brenda Sandburg, "Justices Issue States Free Pass in Patent Lawsuits" The Recorder/Cal Law (June 23, 1999).
http://www.lawnewsnet.com/stories/A2704-1999Jun24.html
http://www.lawnewsnet.com/stories/A2702-1999Jun23.html
http://www.ipmag.com/dailies/1999/june/990624.html
・"Enforcement of Federal Rights in States Is Limited by Court: Alden v. Maine", Law News Network (June 23, 1999).
http://www.lawnewsnet.com/stories/A2675-1999Jun23.html
http://www.lawnewsnet.com/stories/A2674-1999Jun23.html
 
 
1999/06/21
 
1. 違法コピーは高くつく
 違法コピーをしていた企業が、損害賠償に対する和解金として1億57万8318円をソフト会社7社に支払った。ソフトの価格が驚異的に安くなった今日、一億円以上払うリスクをおかしてまで違法コピーを使うのは、果たして得策なのか。。。違法コピーの問題を今一度見直そう。
 毎日デイリーメール他より。
====================================
 コンピューターソフトウエアの権利保護団体「ビジネス・ソフトウェア・アライアンス」(BSA、本部:ワシントンDC)は21日、会員7社のビジネスソフトの違法コピーを社内利用していた京都府内の中堅ソフトメーカーに対して起こした訴訟が、被告会社が約1億円支払うことを条件に和解すると発表した。BSAの申し立てに基づき京都地裁は今年2月にこのメーカーに対する証拠保全手続きを執行。同地裁の検証と、その後の被告側の自主調査の結果、大量なビジネスソフトの違法コピー利用の事実が分かったといい、BSA側とメーカーとの間で和解交渉が進められていた。
 
関連情報:
・毎日新聞社Daily Mail編集部「コピー訴訟、1億円で和解:BSA、京都府のソフトメーカーと」Mainichi Daily Mail Internet In-Box Direct(1999年6月21日)
・田中 一実「違法ソフトのコピーで1億円を超える和解金--BSA発表」日経BizTechNews(1999年6月21日)
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/show/leaf?CID=onair/biztech/pc/74343
 
 
1999/06/18
 
1. CAFC判決:112条補正と主張しても禁反言(さらに修正)
 ローラル・フェアチャイルド社対ソニー事件でCAFCは1999年6月8日、ソニー側非侵害としたニューヨーク州東部地区連邦地方裁判所の判決を維持。合議体はミッシェル、アーチャー、プレーガー判事で、現在シニアのアーチャーが判決文を起草。
 ローラル社はソニーを始め多くの家電メーカーを訴えているが、他の事件は本件の判決があるまで中断している。
 地裁ではソニー側の申し立てた文言侵害なしのサマリージャッジメントが認められたが、均等論侵害なしのサマリージャッジメントは認められなかった。陪審は均等論侵害ありと評決したが、裁判官はソニー側の申し立てた均等論非侵害のJMOLの申立(Motion for Jadgement as a Matter Of Law)を認めた。要するに、陪審評決を無視し、ソニー非侵害と判決したのである。これに対しローラル側はCAFCに控訴した。
 ローラル側は2件の特許権につき侵害を主張している。いずれもCCD技術に関する半導体の製造方法である。ソニーの製品と特許クレームはモノは同じだが、製造方法が異なり、クレームの工程中、第4工程が第3工程よりも先に来る点が異なっていた。争点は、特許の審査段階で引例に基づく拒絶理由に対しクレームを補正した出願人が、放棄した範囲。
 この特許につき、審査段階での補正はクレーム明確化を理由とする米特許法112条違反の拒絶理由に対するものと主張したが、CAFCは「特許性に関する理由」の補正と判断、したがって禁反言適用により均等論侵害なしとした。
 従前の事件(リットン対ハネウェル事件、バイ事件、セクスタント事件等)でもそのように言及していたが、要するに引例回避の補正をクレーム回避の補正に見せかけてもダメだ、ということ。
 
関連情報:
・IPO Daily News
・BNA's Patent, Trademark, and Copyright Journal
Loral Fairchild Corp. v. Sony Corp., No. 97-1017 (Fed. Cir. 1999).
http://www.ipo.org/LoralFairchildv_Sony6_8_99.htm
 
 
1999/06/17
 
1. さらばDivx
 DVDプレーヤの拡張版、Divx(Digital Video Express)のサービスが停止されるとのこと。
 基本的にDVDと同じだが、Divxのソフトは5ドルくらいで買える(普通のDVD映画ソフトは20〜25ドル程度)。最初に再生した日から2日間は自由に再生できるが、以後は再生できない。要するに、レンタルして返さなくて良い使い捨て(買い取り)ディスクのようなもの。
 Divxソフトの再生には、Divx対応のDVDプレーヤが必要だが、「サーキットシティ」でしか売ってなかった。なぜかな〜と気にはなっていたが...
 米では昨年末の感謝祭商戦あたりからDVDが攻勢に出ている。プレーヤーは300ドル位から購入できる。このためLDは全く奮わなくなり、売り場面積をDVDに奪われついに消滅してしまった。なお、DVDソフトのレンタルも既に開始されている。
 ところで、Divxはサーキットシティとロサンゼルスのエンターテイメント関係法律事務所Ziffren, Brittenham, Branca & Fischerのジョイベンだったらしい。法律事務所が関与しているとは、さすがはアメリカ!
 日経エレクトロニクスDigital Storageより
===================================
 DVD(ディジタル・ビデオ・ディスク)ソフトの新しい販売システムの事業を展開してきた米Digital Video Express, L.P.は1999年6月16日、事業の不振を理由に業務を停止すると発表した。Digital Video Express社は、米家電販売大手のCircuit City Stores,Inc.とロサンゼルスの法律事務所などが共同で設立した会社である。
 同社は「Divx」と呼ぶ、DVDソフトの新しい課金方式を1997年9月に発表し、対応するプレーヤやDVDソフトを販売していた。Divxは、セル・スルーとビデオ・レンタルを組み合わせた方式である。まず、Divx対応のDVDディスクを5米ドル以下と低価格で販売する。ディスクを購入したユーザは、たとえば2日間は自由に見ることができる。この期間を超えると、Divxディスクは再生できなくなる。ただし、Divxプレーヤを公衆電話回線などに接続し、オンラインで追加視聴権を3?3.5米ドル程度で購入すれば、再度視聴できる。視聴するときの価格はビデオ・レンタルとほぼ同等だが、ディスクそのものはユーザの所有になるため、返却しなくてよい。ユニークな課金方式にもかかわらず、しかし、Divxディスクは一般のDVDプレーヤでは再生できないため、発表当時から一部のDVDユーザから反発を買うなど、前途は多難とみられていた。
 今回、業務の停止に追い込まれた理由について同社は「映画会社の協力が思ったよりも広げられなかったことや、Circuit City以外の小売り店がDivx対応DVDプレーヤの販売に消極的だったこと」などを挙げている。
 業務停止にともない、同社は1999年6月16日までにDivx対応プレーヤを購入したユーザについて100米ドルの現金を返還する予定。さらに、Divx対応のDVDソフトは、2001年の6月30日まで自由に視聴できるようにする。Circuit Store社はDivx事業関連で、税引き後で1億1400万米ドルの損失を計上するもよう。
 
関連情報:
・原田 衛,「『Divx』の米Digital Video Express、業務を停止」日経エレクトロニクス,Digital Storage(1999年6月17日)
http://ne.nikkeibp.co.jp/d-storage/1999/990617divx.html
・Miran Chun,「Divxの失敗からMP3と音楽業界が学ぶべき教訓」ZD Net(1999年7月9日)(音楽ファイル規格MP3やRioに関する判決等)
http://www.zdnet.co.jp/news/9907/09/music1.html
 
 
1999/06/16
 
1. MP3プレーヤ「RIO」は違法でない
 ロイター、AP通信その他より
 ダイヤモンド・マルチメディア・システムズ社(Diamond Multimedia Systems Inc.)がMP3ファイルを再生できる携帯型プレーヤ「RIO」を発表したとき、音楽業界は「違法コピーを助長するもの」として反発した。米レコード協会(Recording Industry Association of America (RIAA))はRIOの販売差し止めを訴えた。しかし、当初のRIO発売予定日から10日ほど延期されたものの、連邦地方裁判所は昨秋この訴えを退けた。これに対して原告側は控訴していたが、昨日この控訴を棄却する判決が出された。
 第9巡回控訴裁判所は、3対0の全員一致で差し止め請求却下を適法とし、さらにRIOがオーディオ家庭録音法(Audio Home Recording Act of 1992)に違反していないとも判断した。原告側はRIOがデジタル録音機器(digital audio recording device)」であり、同法が要求するコピー防止方式「SCMS(serial copyright management system)」を備えていないのは違法であると主張していた。これに対し第9巡回控訴裁判所は、RIOがCD等から音楽データのファイルを直接コピーすることも、転送やアップロードもできず、単に一旦コンピュータのハードディスクに落とし込まれたデータをコピーできるのみであるから、「デジタル録音機器」に当たらないと結論した。判決によると、同法はデジタルオーディオ録音物(digital music recordings)からコピーする装置のみを禁じており、RIOのようにハードディスクからコピーする装置を禁じるものでないという。
 今やRIOに限らず多くのメーカーが類似の装置を発表、販売しているし、当の音楽業界も法的に阻止することが困難と見てか、新技術に反対するよりもこれをどうやって生かすかという方向に転換を余儀なくされている模様。
 
関連情報
・Bob Egelko(Associated Press), "Court Supports Portable MP3 Player ", Washington Post (June 15, 1999)
http://www.washingtonpost.com/wp-srv/business/daily/june99/mp315.htm
・"MP3 rebels party as music giants struggle with Net", Reuters: SAN DIEGO, Calif. (June 15, 1999).
http://legalnews.findlaw.com/news/19990615/bcinternetmusic.html
・Dawn Kawamoto,日本語版:寺下朋子「MP3裁判でダイアモンド勝訴」C NET Japan Technical News(1999年6月15日)
http://cnet.sphere.ne.jp/News/1999/Item/990616-5.html
・Polly Sprenger,日本語版:喜多智栄子,合原弘子「『リオ』がRIAAに勝訴」Wired News(1999年6月15日)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/2599.html
・高橋史忠「『MP3プレーヤは違法ではない』RIAAとの裁判でDiamond社に勝訴判決」日経エレクトロニクス,ディジタル・コンテンツ流通(1999年6月16日)
http://ne.nikkeibp.co.jp/d-contents/1999/990616mp3.html
・BRENDA SANDBURG, "Court Upholds Rio Player: Ninth Circuit rules that the portable music player does not run afoul of recording piracy laws.", IP Mag.com (June 16, 1999).
http://www.ipmag.com/dailies/1999/june/990616.html
Recording Industry Association v. Diamond Multimedia, No. 98-56727 (9th Cir. 1999).
http://laws.findlaw.com/9th/9856727.html
・井上雅夫氏による上記判決文の翻訳
http://www.venus.dti.ne.jp/~inoue-m/el_ref_990615RIAA_Diamond.htm
・The Audio Home Recording Act of 1992: COPYRIGHT ACT OF 1976, AS AMENDED
http://www.hrrc.org/ahra.html
・Dawn Kawamoto, "MP3 device makers win key court ruling", CNET News.com(June 15, 1999).
http://www.news.com/News/Item/0,4,37873,00.html
 
 
2. 2000年問題の訴訟制限法案、上院で可決
 ワシントンポストより。
 火曜日、2000年問題で起こる訴訟を制限するための法案が上院を通過した。しかし、投票結果は62対37で3分の2に達していない。通常、上下院を通過した法案は大統領の署名により法律として発効するが、大統領は拒否権を行使することもできる。拒否権を超えて法を発効するには3分の2の投票が必要となる。クリントン大統領は拒否権行使を公言しているため、今後両者間の協議が予想される。
 法案では、従業員50人以下の企業では懲罰的損害賠償額を25万ドルまでに制限し、またすべての企業に対し2000年問題解決のため90日の猶予を与えるとなっている。
 
情報元
・DAVID E. ROSENBAUM, "Senate Passes Bill to Curb Suits on Year 2000 Computer Bug", Washington Post (June 16, 1999).
http://www.nytimes.com/library/tech/99/06/biztech/articles/16year.html
・John Moore, "Senate passes Y2K bill.", Sm@rt Reseller (June 15, 1999).
http://www.zdnet.com/pcweek/stories/news/0,4153,2276456,00.html
・「Y2K法案が上院を通過」ZDNN(1999年6月16日)
http://www.zdnet.co.jp/news/9906/16/b_0615_16.html
 
 
1999/06/15
 
1. 特許庁庁舎ビル移転
 
 IPOデイリーニュースによると、特許庁の庁舎移転が正式に決まった模様である。発表によると、現在の庁舎ビルがあるバージニア州アーリントン郡のクリスタル・シティから約5マイル南へ下ったカーライル・ストリートに新庁舎ビルが建設され、2004年に移転するとのことである。(現在係争中の訴訟で問題がでない限りは。現在の庁舎ビルのオーナーであるスミス社が政府を訴えている。)
 
・IPOデイリーニュース
・Office of Space Acquisition
 特許庁の移転計画。移転先の地図が見える
http://www.uspto.gov/web/offices/ac/qs/osa/index.html
・PTOの正式発表
http://www.uspto.gov/web/offices/ac/qs/osa/gsapr.htm
 
 
1999/06/14
 
1. CAFC判決−パル社対ヒメージャー社事件
 
 パル社の血液濾過装置に関する特許を文言侵害としたニューヨーク州東部地区連邦地方裁判所のサマリージャッジメントを、CAFCは覆した。このところ、CAFCはアンチパテント寄りである。プロパテントで有名なニューマン判事が判決文を担当。合議体の他の判事はメイヤー、シャル判事。
 文言侵害なしで、均等論侵害もなし。引例回避のため追加した新クレームなので、審査経過禁反言が適用された。
 原告側は、地裁が文言侵害を認定したため均等論侵害を検討していないとして、本件を中間控訴("interlocutory appeal"、まだ決着はついてないから地裁に差し戻して戦闘再開だ)と主張。しかし、CAFCは原告に勝ち目なしとして逆転自判決(reversed)とした。
「原告の主張、『文言侵害を逆転した後の正しい手順は、均等論侵害の争点を地裁に差し戻すこと』を我々は注意深く検討した。控訴審においては、争点に係る事実にさえ原告側が勝てないとき、法律問題として相手方に有利な判決を認めることができる。コール対キンバリー・クラーク事件参照(Cole v. Kimberly-Clark Corp., 102 F.3d 524, 41 USPQ2d 1001 (Fed. Cir. 1996)、均等論侵害を差戻審で認定できるか否かの問題を、法律問題として決定)」
「原告のイ号装置の構造に関し争いはない。...既に述べたように、審査経過禁反言、クレーム解釈、イ号の構成等を審理した結果、原告側が均等を立証できる合理的な根拠は存在しないと我々は結論する。したがって、均等の問題を地裁に差し戻すことは妥当でない。」
 
関連情報
・1999年6月14日付 IPOデイリーニュース
Pall Corp. v. Hemasure Inc., 98-1388 (Fed. Cir. 1999).
http://www.ipo.org/PallvHemasure6_8_99.htm
 
 
1999/06/11
 
1. サーチエンジン用「キーワード」の登録
 先日思うところあって、このホームページを(未だ未完成、不十分であるが)検索エンジンに登録してみた(6月1日付)。この分野では有名な「一発太郎」という、サーチエンジンの登録を自動でやってくれるサイトを利用させて頂いた。極めて有用なサービスを無料で提供されている作者の方に深く感謝し、このようなボランティアで支えられているインターネットのありがたさを実感した。
 「一発太郎」を利用する前に使用方法や注意事項などに目を通していると、すごいことが書いてあった。
(Q&Aを見ていると、好意でサイトを運営されている方にこんな口調で質問やら苦情やらをメールしてもいいの?という書き込みがかなりあったので驚きました。まだまだ私などはこの方面に疎いというか甘いというか、とにかく無知なことが多いですが、最低限の節度は守りたいなと部外者の目から自戒しました。ネットでは相手の顔が見えないので普段喋るときよりも強い言葉を使って相手を傷つけることがあると聞きましたが、こういったところにも表れているのでしょうか。)
 サーチエンジンでのヒット率を上げるためには、キーワードに内容と関係のない言葉をちりばめておく、という裏技があるらしい。こんなものは裏技でも何でもない単なる詐欺行為だし、そこまでして...と思う。別のページにはもっとすごいテクニックも披露されており呆れてしまったが、こんなことをすると信用問題どころか、法律違反にもなり得るということを知っておきたい。
 1997年9月8日付の古い事件だが、プレイボーイ事件(Playboy Enterprises Inc. v. Calvin Designer Label)でカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所は商標権侵害による使用差し止めの仮処分を認めている。
 訴えの一つは、原告がplayboyxxx.comとplaymatelive.comというドメイン名を使っていたことだが、もう一つは、サーチエンジンが読み取るキーワードにプレイボーイの名前を使っていたこと。
 HTMLで書かれたホームページは、タグと呼ばれる情報を埋め込まれている。このうち、メタタグ(META TAG)で埋め込まれたキーワードをロボット型のサーチエンジンは自動収集して、キーワードとするようだ。しかしこのような情報は、通常は見えない。
 例えば、モスバーガーのホームページに、キーワードとしてマクドナルドの名前を入れておくようなもの。マクドナルドのサイトを見たくてヤフーで調べたら、モスバーガーが出てくる、というわけ。(現実にはヤフーは内容を確認してるそうなので、これはあくまで「たとえ」です。)
 商標権侵害の可能性が高いうえ、使用者のミスリードを招く使い方でしょう。
 
 ちなみに、プレイボーイといえばサーチエンジンを運営するエキサイトやネットスケープを相手取っての訴訟も起こしていた。こちらはちょっと事情が異なり、キーワードに「プレイボーイ」「プレイメイト」(どちらも登録商標)と入力すると、他社のアダルト企業のバナー広告が現れるというもの。上の例を使えば、「マクド」と入力すると、カラー画像でうまそうなモスの広告が現れ、クリックを誘う、というもの(マクドのリンクは普通通りの単なる文字説明)。こっちはちょっと複雑ですが...
 
 
関連情報
Playboy Enterprises Inc. v. Calvin Designer Label, No. C97-3204 (DC NCalif 1997).
・"Hidden Use of Trademarks on Web Site May Infringe" BNA's PTCJ, Volume 54, Number 1343 (September 18, 1997).
・一発太郎
http://ippatsu.net/TARO/
・大澤健一「サーチエンジンはTM侵害か?」IPサークル・Cyberspace law (1999年3月10日)
http://www.ipcircle.com/cyber.html
・CARL S. KAPLAN, "Lawsuits Challenge Search Engines' Practice of 'Selling' Trademarks" New York Times (Feb. 12, 1999).
http://www.nytimes.com/library/tech/99/02/cyber/cyberlaw/12law.html
・Mitchell Zimmerman (Fenwick & West), "Free Ride: Is Advertising on Search Engines 'Results' Screens Trademark Infringement?" FindLaw Library (April 1999).(後段の事件について、現在3件の訴訟が係属しているそうな。この記事によれば、こういった商標の使い方、要するに有名ブランドをキーワードにして広告スペースを競業他社に売る方法が法律違反にあたるかどうかは、先例がないらしい。まさに「フリーライド(只乗)」だと思うが。)
http://library.findlaw.com/scripts/getfile.pl?FILE=firms/fenwick/fw000007&TITLE=Features
Estee Lauder Inc. v. The Fragrance Counter Inc., No. 99 Civ. 0382 (S.D.N.Y. March 5, 1999).
Playboy Enterprises Inc. v. Netscape Communications Corp., No. 99-320 (C.D. Cal. Feb. 5, 1999).
Playboy Enterprises Inc. v. Excite Inc., No. 99-321 (C.D. Cal. Feb. 5, 1999).
 
 
2. パテント・エージェント試験、合格発表。
 本年4月27日に行われた米パテント・エージェント試験の通知がきているようです。合格された方々、おめでとうございます。
 試験問題は、まだ公開されていない。公開されるとすれば、米特許庁の以下のページか?
 
・米特許庁登録統制部門(OFFICE OF ENROLLMENT AND DISCIPLINE)
http://www.uspto.gov/web/offices/dcom/olia/oed/
 
 
3. シカゴを安全にした法律も、最高裁の手で無効に
 全く知財とは関係ないが、ニュースで印象に残ったので。
 以下、日本版ニューズウィークによるワシントンポスト日本語ヘッドラインより引用。
===================================
「最高裁、彷徨を禁止する条例を却下:ギャング取締りが目的の条例、あいまいすぎると判断」
Supreme Court Strikes Anti-Loitering Ordinance Law Aimed at Gangs Is Called Too Vague
By Joan Biskupic
 
 最高裁は昨日、各都市は、ギャングの一味との疑いがあると勝手に判断して、それらの人々が公共の場でうろつくことを禁止することはできないとの判決を下した。これにより、地元の市街地を安全にしようという賛否両論のある手法は却下された。
(c)1998 The Washington Post Company
(c)1998 TBS-Britannica Co., Ltd.
 
情報元:
・ニューズウィーク日本版「ワシントンポスト:今日のヘッドライン」Newsweek Japan Online(1999年6月11日)(※バックナンバーは一週間前まで)
http://www.nwj.ne.jp/
 
 
1999/06/07
 
1. 米国の輸出規制も電子商取引では有名無実化
 日経マルティメディアより。
===================================
 国内の電子商店でも、より安全な128ビット暗号のSSL(SecureSockets Layer)を利用できる――。128ビット暗号の利用に必要なサーバー用のデジタル証明書は、一般の電子商店でも取得できることが判明した。
 SSLはWebブラウザーとWebサーバーとの間で暗号通信するための仕組み。国内では通常40ビット暗号が使われている。128ビット対応のSSLは128ビット暗号を利用できるため、40ビットのSSLに比べて「10の26乗倍」も安全になる。米国の暗号輸出規制のため、日本では128ビット暗号の利用に制限があったが、98年12月に米国政府が規制を緩和し、金融機関に加えてヘルスケア関連企業などでも128ビット暗号を利用できるようになった。
 こうした米国政府の規制緩和を受けて、電子認証会社の米ベリサイン社は日本など海外向けに128ビットSSL対応のデジタル証明書を発行するサービス「Global Site」を提供している。日本でも99年4月に同様のサービスを開始した。実は今回の規制緩和は「オンライン・マーチャント」、つまり電子商店も対象にしているが、日本ベリサインは安全性の理由から、一般の電子商店への128ビット対応のデジタル証明書の発行は見送っていた。
 ただ今回ベリサイン本社に直接申請すれば、原則的には日本の電子商店でも128ビット対応のデジタル証明書を取得できることが判明した。これにより、薬品など武器に使われる可能性のある商品を販売しない限り、米国国内と同等の高い安全性を持つSSLを利用できることになる。
 
関連情報:
・永井学,「日本でも128ビット暗号が利用可能--米国の輸出規制もECでは有名無実化」日経BizTechニュース(1999年6月7日)
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/show/leaf?CID=onair/biztech/prom/72881
Global Site
http://www.verisign.com/server/prod/global/index.html
 
 
2. 改正特許法の法案
 何とか通過しそうな今年の特許法改正。今回はローラバッカー議員が支持に回っているので、見込みもちょい高。
 Greg Aharonian氏が運営するインターネット・パテントニュースでは、なんで彼が寝返ったのかという噂を披露、あいかわらずスカしています。彼曰く、「(議員再選のため)共和党幹部とお近づきにならんがため」「(個人発明家や小企業など、これまで彼を支持していた)団体が法案阻止のための費用として、カネを同議員に『寄付』しなかったから」等々。もっとすごいのは、同議員の妻が訴追されていた事件のウラ事情。選挙運動の汚職に関わったかどによりローラバッカー議員の妻Rhonda Carmonyは重犯罪(軽犯罪に減刑された)の訴追を受けた。同議員は支持を求めて個人発明家団体に近づいたが、彼らは知的所有権と無関係な問題故一蹴した。今回の同氏の裏切りは、この報復措置では???とゆーのである。
 法案の原文は、米議会図書館のホームページから閲覧可能。
 
関連情報:
・Greg Aharonian, "Complaints about rushed patent bill; Why Rohrabacher's
betrayal?", Internet Patent News Service, #19990606.
・American Inventors Protection Act of 1999 (Introduced in the House)
http://thomas.loc.gov/cgi-bin/query/z?c106:H.R.1907.IH:
・BNAのサイト
http://www.bna.com/ptcj/patent2.pdf
 
 
3. 2000年問題非対応ソフトの訴訟却下
 日経BizITより
====================================
 「2000年問題に非対応のシステムを売りつけた」として、昨年12月にIBMとソフト会社がイリノイ州の婦人科医から訴訟を起こされていたが、このほど、裁判所がこの訴えを却下した。
 
情報元:
・「IBMなどを訴えた2000年問題非対応ソフトの訴訟、裁判所が却下」日経(1999年6月7日)
http://bizit.nikkeibp.co.jp/it/y2k/commentw/index.html
http://bizit.nikkeibp.co.jp/it/y2k/commentw/index.html
 
 
1999/06/04
 
1. 富士フィルム、ITCで勝利
 政治的だと批判のあった(訴えたらほとんど勝つから)米国際貿易委員会(ITC)に、富士フィルムが1998年2月、計26社に対しレンズ付フィルムに関する15件の特許権侵害で輸入差し止めを求めていた事件で、排除命令を得たらしい。テストダイレクトより。
 富士フィルムのホームページ、プレスリリースより。
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 ITCは、1998年2月に富士フイルムが提起したレンズ付フィルムの特許侵害に関する申立について、被申立人(26社)が富士フイルムの米国における特許を侵害していると認定し、特許を侵害するレンズ付フィルムの米国への輸入禁止を最終決定したものです。これは、被申立人以外の 事業者も対象としています。尚、この一般排除命令は、大統領承認(60日以内)を経て確定します。
 
関連情報:
・「富士写真フィルムが使い捨てカメラでITC排除命令獲得」知財ニュース速報サービス,テスコダイレクト(1999年6月4日)
http://www.tesco-direct.com/index.html
・ITCのホームページには記載がなかった。
http://www.usitc.gov/er/nl1999/newslist99.htm
・「米国国際貿易委員会(ITC)が、富士フイルムの特許を侵害しているレンズ付フィルムの米国への輸入禁止を決定」富士写真フイルム株式会社(1999年6月4日)
http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj459.html
 
 
2. 日本も国有特許開放策
 「バイ・ドール法」にならう 朝日新聞より
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 企業の競争力を高めるため、通産省は国が持つ特許権などの知的財産権について、積極的に民間に開放する方針を固めた。民間への委託研究はこれまで、特許権を国に帰属させていたが、今後は実際の研究機関に与えるという。国有特許が製品化されて市場に出回ることは少なく、「持っているだけでは意味がない」ため。米国の好景気が国からの技術移転で支えられたという判断もあり、米国で効果を上げた「バイ・ドール法」の日本版の法案を今秋の臨時国会に提出する予定だ。
 国が持つ特許権には、国の研究機関や国立大学が開発したもののほか、企業や民間の研究機関へ委託したものがある。今回の法案では委託研究分について抜本的に制度を変える。これまでは「資金は国が出している」という理由で国が全面的に特許権を得ていたが、今後は委託先の企業や団体が希望した場合、すべての権利を取得できる。その場合も期間を区切って「製品化する」という条件を付け、高い技術力を持った商品の生産に結びつける意向だ。
 
情報元:
・「国の特許独り占めしません:通産省、民間に開放へ」asahi.com最新ニュース(1999年6月4日)
http://iij.asahi.com/0604/news/business04032.html
 
 
1999/06/03
 
1. ウェスト対マシューベンダー、上告却下
 1999年6月3日付Law News Network「Today's Legal News」より
 1999年6月1日連邦最高裁は、ウェスト社が上告していた2件の著作権侵害事件を取り上げないことを発表した(要するに上告不受理)。うち一件は、同社がマシューベンダー社を訴えていたもの。(West, West Publishing Co. v. Matthew Bender & Co. Inc.)
 ウェスト社はミネアポリス州セントルイスに拠を置く法律サービスの最大手で、ご存じの通り法律データベースWESTLAW等の提供を始め、判例を広範に渡り収集している。ウェスト社の発行する判例集はほとんど公式の判例集であるから、そのページ番号は特定の事件を引用する際に重要となる。よって他社の判例集でも、判例を引用する際にはウェスト社の判例集の巻数とページ番号による引用を併記して利用者の便を図っていることが多い。そこでウェスト社はページ番号の割り振りに関して著作権を主張し、他社を抑えようと試みたのが今回の事件であると思われる。
 ウェスト社は「星形ページ指定("star pagination" )」というシステムに著作権を主張した。判例は通常判例集のページ番号で表記されるが、例えばWESTLAW等コンピュータ画面上で表示するものでは、本の一ページ分とスクリーン画面が一致しなくなる。よって、判例集でページの区切りに当たる部分を星印で表示して、利用者が判例集の何ページを閲覧しているかを判断できる。さらにウェスト社は、裁判所の事件番号や併記引用等を文書中に追加した「編集上の拡張(editorial enhancements)」についても著作権を主張していた。
 しかし1998年11月3日、第2巡回裁判所はこれらの追加は著作権を生じさせるに不十分として、訴えを退けていた。(第2巡回控訴裁判所の判決内容は、発明協会発行の「発明」紙上で服部健一先生が「日米ホットライン」で紹介されている。)
 
関連情報:
・Brenda Sandburg, "West Denied Supreme Court Review On Copyright Claim:Legal publishers at West Group have fallen short in their effort to copyright internal pagination and editorial enhancements to", The Recorder/Cal Law (June 3, 1999).
http://www.lawnewsnet.com/stories/A1987-1999Jun2.html
・最高裁の命令一覧
http://supct.law.cornell.edu/supct/html/060199.ZOR.html
West, West Publishing Co. v. Matthew Bender & Co. Inc., 98-1500 (U.S. 1998).
Matthew Bender & Co. v. West Publishing Co., 48 USPQ2d 1545 (2nd Cir. 1998).
West Publishing Co. v. HyperLaw Inc., 98-1519 (U.S. 1998).
Matthew Bender & Co. v. West Publishing Co., 48 USPQ2d 1560 (2nd Cir. 1998).
・服部健一「日米ホットライン」発明1999年4月号,発明協会(1999年)
『判決集の巻数及び頁番号は、作成が容易にできる場合は著作権保護の対象にならない』
・Young Working Group(YWG)「MATTHEW BENDER & CO. v. WEST PUBLISHING CO.事件」ソフトウェア情報センター(SOFTIC)
http://www.softic.or.jp/YWG/reports/MatthewBender_v_West.html
 上記事件高裁判決の判例要旨
 
 
2. カリフォルニア大対ジェネンティック、陪審不一致
 上記事件で陪審は6日間の陪審評議の結果、8対1で分かれたまま意見がまとまらず、評決不能となった。カ大は再審理を請求する模様。州裁判所での民事事件と異なり、連邦裁判所では陪審評決が9対3で一日続くと、裁判所は当事者が同意した場合を除き評決不成立としなければならないらしい。8人がカリフォルニア大側の主張を認めているものの、1人だけが納得いかなかったため。
 1999年6月3日付法律ニュース・ネットワーク「本日のリーガルニュース」では、反対した陪審員カーティス・ヒル氏の背景について書かれている。同氏に化学の知識がいくらかあること、同氏の妻がカ大に関わっていること等々。少し引用すると、、、
 反対したヒル氏はカリフォルニアベアーズの大ファンで、奥方はカ大の書籍購入部に勤めている。当然、陪審選定の際には先入観が取りざたされた。
 裁判長「あなたはカ大に対して不利な評決を出すことになっても奥さんとのことで問題になりませんか」
 陪審候補「問題ないでしょう」
 ジェ社側弁護士「あなたはカ大に非常に好意的でも、ジェ社に有利な投票ができますか」
 陪審候補「さあ、それを今から約束できませんねえ」(笑)
 弁護士「裁判長、彼が気に入りました。」
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 なお陪審団は被告側ジェネンティック社の主張した、1982年にカ大の取得した特許が(公用により)無効との反訴を認めない点については同意している。つまり特許の有効性は認められたわけで、この認定は今後の再審理においても拘束力を有するだろう。ただし、ジェ社は別個に不衡平行為に基づく権利行使不能についても主張しているので、まだ判らない。
 この裁判は9年前の1990年に提訴されており(4/14付小欄参照)、極めて技術的になった公判の後、5月20日陪審評議に委ねられた。
 カ大は4億ドルの損害賠償を求めており、もし故意侵害が認められれば3倍賠償で12億ドルに膨れ上がる可能性もある。
 訴えに係るジェネンテックのヒト成長ホルモン剤(成長ホルモンの不足している幼児に投与する大事な薬らしい)「プロトロピン(Protropin)」は、本件とは別に、未承認の使用により連邦政府当局から刑事訴追を受け、先般4月にジェ社は和解金5000万ドルを支払っている。
 
関連情報:
・Paul Elias, "Juror Derails Billion Dollar Patent Case" The Recorder/Cal Law (June 3, 1999).
http://www.lawnewsnet.com/stories/A1989-1999Jun2.html
・"Calif. jury deadlocks in Genentech patent trial" Reuters SAN FRANCISCO (June 3, 1999).
http://legalnews.findlaw.com/news/19990602/bcgenentechtrial.html&nofr=y
・MIKE McKEE, "Jury Gets UC v. Genentech: Deliberations begin Monday over which institution will control the human growth hormone patent" The Recorder (May 21, 1999).
http://www.ipmag.com/dailies/1999/may/990521.html
 
1999/06/01
 
1. コンドームの形状を巡る戦い−ニューヨーク・ロージャーナルより
 ニューアークの連邦地裁が、避妊具の特許に関する侵害訴訟で争われているコンドームの出荷差し止めを5月21日に却下したとのこと。問題のコンドームは、特許に係る製品とは構造、機能において異なると判断されたため。
 
情報元:
・Padraic Cassidy, "War of the Weird-Shaped Condoms" New Jersey Law Journal (June 1, 1999).
http://www.lawnewsnet.com/stories/A1899-1999May28.html
 
 
1999/05/31
 
1. 高校生でも著作権法違反で摘発
 宮城県警ハイテク犯罪対策室と仙台南署は5月31日、東京都世田谷区の男子私立高校2年生(16)が、マイクロソフト社のソフト「Visual Besic Ver.2」を複製し、千葉県鎌ケ谷市の男性会社員(32)のホームページ上に無料でダウンロードできるように掲載したとして、自宅等2カ所を著作権法違反(「公衆送信権」と「公衆送信可能化権」の侵害)の疑いで家宅捜索し、パソコンやフロッピーディスクなど200点余りを押収した。
 なお、件のソフトはウィンドウズ3.1用の製品。現行のビジュアルベーシックはVer. 6なので、かなり旧式といえる。見せしめ的摘発では、との声もあり。
 
情報元:
・「他人のホームページに市販ソフト掲載:高校生宅を捜索」asahi.com(1999年5月31日)
http://www.asahi.com/0531/news/national31009.html
「著作権法違反で高校生摘発:HP上にソフトを無料公開」毎日新聞(1999年5月31日)
http://www.mainichi.co.jp/digital/netfile/archive/199905/31-1.html
http://mp3tidalwave.com/kyotsubu/Past_9906.html
 
 
2. 海淀裁判所、「99インターネット初の事件」を受理
人民日報より
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 北京市海淀区人民法院(裁判所)知的所有権法廷はこのほど、「瑞得在線」が四川宜賓東方情報公司サイト(「東方公司」と略称)に対して起こしたホームページ著作権侵害事件提訴を受理した。伝えられたところによると、この事件は中国の「99インターネット初の事件」と呼ばれている。関係法律専門家は、この事件の審理は企業の自己保護意識の強化と立法の促進についていずれも有益な推進役を果たすであろうと見ている。
 
情報元:
・「海淀裁判所、『99インターネット初の事件』を受理」人民日報(1999年5月31日3面)
http://web4.peopledaily.com.cn/j/1999/05/31/newfiles/a1060.html
 
 
1999/05/27(著作権がらみで)
 
1. ネット上の著作権違反取締強化へ−個人運営のMP3違法サイトを摘発
 朝日新聞の一面で、警察が違法コピー(MP3ファイル)を掲載するホームページの摘発を強化する旨が掲載されていた。翌日、早速検挙者が出たとの報道。
 MP3とは、ご存じ通り音声圧縮ファイルの規格名(MPEG Audio Layer 3)である。CD等の音源から音声ファイルを作成する際、ファイルサイズをおよそ10分の1〜12分の1まで圧縮でき、音質の劣化が少なくWeb上での取り扱いに便利なため瞬く間に普及した。ダイアモンドマルチメディア社の携帯用MP3プレーヤRIOが発売された際には、違法コピーの問題で大いに物議を醸した。MP3という規格自体は優れたものであるが、違法コピーを防止する手段がないことに大いに問題があるとして、議論されている。
 日本の著作権法は、昨年1月の法改正によってインターネット上での複製・配布も著作権侵害としている。違反した場合は刑事罰の対象となるらしい。
 毎日新聞社Mainichi Daily Mail In-Box Directより。
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 「ヒット曲を無断複製し流す違法なホームページの摘発強化」MP3サイト運営の会社員摘発:愛知県警、著作権法違反容疑で初
 愛知県警生活経済課と愛知署は27日までに、「MP3」を悪用して人気アーチストのヒット曲を、日本音楽著作権利協会(JASRAC 、ジャスラック)の承認を得ないでホームページ上で公開していたとして、札幌市の会社員(18)を著作権法違反(公衆送信権)の疑いで検挙した。宇多田ヒカルやL'Arc-en-Ciel、B'zら30人以上のヒット曲をフルコーラスで公開していた。MP3を使った音楽情報サイト運営者の摘発は全国初。
 
関連情報:
・「ヒット曲を無断複製し流す違法なホームページの摘発強化」asahi.com news update(1999年5月26日)
http://www.asahi.com/0526/news/national26050.html
・毎日新聞社Daily Mail編集部「MP3サイト運営の会社員摘発:愛知県警、著作権法違反容疑で初」Mainichi Daily Mail In-Box Direct,No. 713(1999年5月27日)
http://dm.mainichi.co.jp/
・本田雅一,「MP3配布で少年検挙。警告か,それとも……」ZDNN,ZDNet/JAPAN(1999年5月28日)
http://www.zdnet.co.jp/news/9905/28/mp3.html
・1998年1月の著作権法改正について、以下が判りやすい
http://www.ichiben.or.jp/iplegal/back1997.6/1997.6chiteki.html
 
 
2. 「著作権法の一部を改正する法律案の概要」文部省ニュースより
 更なる法改正により、1996年12月にWIPO(世界知的所有権機関)で採択された「WIPO著作権条約」に対応するもの。
 米で成立した「デジタル・ミレニアム著作権法」等と同じく、コピー防止機構を解除する装置の製造販売を禁止。違反した場合は刑事罰の対象となる。また、著作物に付された権利管理情報の改変も規制されるとのこと。
 具体的には、
「新しい技術を活用した権利の実効性の確保」として、
1.コピープロテクション等技術的保護手段の回避に係る規制
2.権利管理情報の改変等の規制
著作者等の権利の充実」として、
3.著作物等の譲渡に関する権利(譲渡権)の新設
4.上映権の拡大(現在、「映画の著作物」にのみ認められている上映権を、美術、写真等すべての著作物に対して認める)
5 演奏権に係る経過措置(附則第14条)の廃止
 施行予定日は、1〜2→1999年10月1日、3〜5→2000年1月1日
 
http://www.monbu.go.jp/news/00000338/
 
 
3. ゲームソフトに頒布権なし!(1999年6月8日(火)修正)
 ゲームは著作権法上、「映画」に該当しない
 中古ゲーム販売に絡んで注目を集めていた事件の判決が言い渡された。ゲームソフトは「映画の著作物」(第2条第3項)に該当せず、従ってゲーム開発者に頒布権はない、という画期的で明確な判決である。
 従来の判決では、有名なパックマン事件(ナムコ)でゲームソフトが映画の著作物と認められた例があった。ここでは、ゲーム中の映像が予めプログラムにより設定されていることが根拠となっている。最近では「ときめきメモリアル(コナミ)」でも同様の判断が下されている。逆に「三国志(コーエー)」では、映画の著作物と認められなかった。理由はシミュレーションゲームでは画像が静止した状態で進行するから。
 メーカー側は「ゲームソフトはプレイの過程が動的に映像化されており、音楽ともシンクロしているから映画の著作物」と主張していた。
 これに対し中古販売店側は今回の裁判でゲームソフトの「インタラクティブ性」を主張。要するに、映画は常に同じ内容、映像の繰り返しを表示するが、ゲームの場合はプレイヤーによって展開が変わる、という点。東京地裁も「プレイヤーの意志で操作可能なゲームソフトは映画の著作物にはあたらない」と判断している。
 ゲームメーカーの次の一手に期待したい。
1999/03/09小欄参照。
 
 毎日デイリーニュースより。
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 ゲームソフト中古販売について、ソフトメーカーのエニックスが著作権を根拠にソフト小売チェーン、上昇(山口県下松市)に販売中止を求めたことに対し、上昇側が差し止め請求権が無いことの確認を求めていた「中古ゲームソフト東京訴訟」の判決言い渡しが17日、東京地裁(三村量一裁判長)であった。三村裁判長は「ゲームソフトは、エニックスの主張する『映画の著作物』(著作権法2条3項)にあたらない」として、差し止め請求権は存在しないとする判決を言い渡した。ゲームソフトの中古販売について判断が下されたのは初めて。
 争点は(1)ゲームソフトが「映画の著作物」にあたるか(2)あたる場合、ゲームソフトメーカーは映画の著作物に認められる頒布権を持つか(3)頒布権がある場合、その権利は永久的に認められるか、の3点。判決では、このうち(1)について、94年の「パックマン訴訟」などの過去の判例で示されていた「ゲームソフトは映画の著作物にあたる」との考えを修正。ゲームソフトは「一種の素材としての多様な影像集合でありプレーヤーの操作により画面表示の連続映像が決まる」とし、映画とは質的に異なるとの判断を示した。
 これによってメーカー側の頒布権の主張は入り口で退けられた格好。ゲームメーカーの団体などは、頒布権を根拠として昨年初めから「違法中古ソフト撲滅キャンペーン」を展開しており、根拠がなくなったことから影響は必至だ。
 ゲームソフトが映画の著作物かについては、東京高裁が今年3月、コーエー(旧光栄)のパソコン向けゲーム「三国志3」について、映画の著作物にあたらないとの判断を下しているが、今回の判決はそれに続くもの。上昇が差し止め請求権不存在確認を求めていたゲームソフトは、エニックスのプレイステーション向けロールプレイングゲーム「スターオーシャン・セカンドストーリー」と同音楽ゲーム「バスト・ア・ムーブ」。動画がふんだんに使われており、シミュレーションゲームの「三国志3」に比べると、マーケット規模の大きいジャンルのゲームで、今後、ゲームソフト各社に与える影響は大きい。
 裁判とは別に、エニックスはメーカーに頒布権があることを前提に9カ月の中古販売禁止期間を設け、中古販売を行う際は7%の著作権料をメーカーに支払う内容の契約を小売店側と結び始めており、業界に広がる動きがあったが、これらの動きにも影響が出そうだ。
 判決後、原告側はゲーム小売店で組織するテレビゲームソフトウエア流通協会(ARTS、約1700社加盟)と上昇の合同会見を開いた。ARTSの新谷雄二代表理事は「特定の業界の利益に偏重することなく著作権法の世界的潮流を踏まえつつ、頒布権のゲームソフトへの適用を否定した点を高く評価する」と述べた。
 一方、エニックスやコンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)も会見。エニックスの福嶋康博社長は「夢にも思わなかった判決で、おかしいと思う。中古販売が現在の状況で(認められて)はメーカー側の開発費が出なくなる」と述べ、控訴することを明らかにした。
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 日経Biz Techより
販売店側が勝訴--中古ゲーム・ソフト流通訴訟
 ゲームソフト販売会社が起こした、「ソフト開発会社は、中古ゲームソフトの頒布権(流通を管理する権利)を持たない」ことの確認を求めた裁判の判決が5月27日午後、東京地方裁判所で申し渡された。東京地裁は「ソフト開発会社は頒布権を有しない」と判断、原告側請求を全面的に認める判決を出した。
 ゲームソフト販売会社は、中古ソフトを販売する際、開発会社の許諾を得なくても良いと、司法が判断したわけだ。同様の司法判断は、国内ではこれが2例目。ただし、「ゲームソフトに頒布権は存在しない」と明確にした判決は初めて。中古ゲームソフト流通/販売に関して、この判決の与える影響は非常に大きい。また、「テレビゲーム・ソフト」とは何か、「映画」とは何かを法的に定義する上で、注目すべき判決と言えよう。判決当日は約30人分の傍聴席に対し少なくとも100人以上が傍聴を希望、関心の高さを伺わせた。
 被告側は同判決に対して猛烈に反発、同日夕刻に控訴の意思を表明した。
●開発会社は頒布権を楯に販売差止請求
 この裁判は、ゲームソフト販売会社「上昇」(本社:山口県下松市)がソフト・ハウス「エニックス」(本社:東京都渋谷区)を相手取って起こしたもの(東京地裁平成10年(ワ)22568号 著作権侵害差止請求権不存在確認請求事件)。98年にエニックスはソフト販売店に対し、「98年12月31日以降、中古ソフトを販売する場合は、新作発売の9カ月後以降、かつ売上の7%をエニックスに支払う」という条項を盛り込んだ売買取引契約書を送付、これに従わない販売店には契約解除や出荷停止をすると警告した。
 さらにエニックスは同契約書に同意しなかった販売会社「アクト」(本社:岡山市)を著作権法違反とする販売差し止め請求訴訟を98年7月、大阪地方裁判所に提訴した。今回の訴訟で原告となった上昇にも同様の売買契約書が送付され、同意を拒否した上昇に対しては警告書の送付とともに出荷停止措置がとられている。
 これらの措置をエニックスは「テレビゲーム・ソフトは著作権法上の“頒布権”(著作権法第26条)があり、著作者(ソフト開発会社)がソフトの流通を管理する権利を持つ」という法解釈を根拠に実施した。これに対し上昇は「テレビゲーム・ソフトは映画の著作物(著作権法第2条3項)に該当しない。従って頒布権は存在しない」ことの法的確認を求め、東京地裁に提訴した。
 争点は、(1)ゲームソフトは著作権法が定める「映画の著作物」には該当しない、(2)仮に頒布権があったとしても最初の流通時点における権利のみで、2次以降の流通には及ばない(ファースト・セール・ドクトリン、いわゆる「用尽」)。この結果、ソフト・ハウスは中古ソフト販売を差し止める権利を持たない---の2つ。これら争点に対し東京地裁民事第46部(三村量一裁判長)は、「テレビゲーム・ソフトは“映画の著作物”に該当せず、ソフト・ハウスはゲームソフトの著作権に基づく差止請求権を持たないことを確認する」との判決を出した。
●インタラクティブ性に着目して判断
 東京地裁が「テレビゲーム・ソフトは映画の著作物ではない」と判断したポイントは「インタラクティブ性」。映画とは、いつどこで上映しても同一内容の連続映像が得られるものと定義し、テレビゲーム・ソフトはこれに該当しない、と判断したのだ。
 テレビゲーム・ソフトは同一ソフトを使用しても、プレイヤ(操作者)の操作に応じて画面上に表示される映像の内容や順序が各プレイごとに異なる。従って劇場用の映画著作物と同等に扱うことはできない。このため映画の著作物には該当せず、頒布権も存在しない、とした。三村裁判長は主文朗読の後、「映画の著作物に該当するかを、インタラクティブ性に着目して判断した」と述べた。この種の民事訴訟事件として裁判長が主文朗読以外の意見を述べるのは極めて異例のことだ。
●「最高裁まで徹底して戦う」--被告ソフト・ハウス側
 判決後、原告側/被告側ともそれぞれ記者会見を開いた。全面勝訴した原告・ソフト販売会社側は「非常に正当な判決」(原告側弁護団の藤田康幸弁護士)。「ソフトを収録したCD-ROMは大量生産されるものなのに、なぜ書籍など他の著作物と同様に扱うことができないのか。流通の隅々まで開発会社がコントロールする権利があるのか。こうした問題点を、この判決では明確にしてくれた」(同団長の椙山敬士弁護士)。
 一方の被告側は「到底容認できない不当な判決。控訴して徹底的に争う」(被告側弁護団の浜野英夫弁護士)と強烈に反発、対決姿勢をさらに明確にした。「そもそも今更、インタラクティブ性を映画か否かの判断材料にするのはおかしい」(浜野弁護士)。インタラクティブ性を持つゲームソフトも「映画の著作物」であることを認定した判決がすでに過去出ている(東京地裁昭和56年(ワ)第8371号事件:いわゆる「パックマン判決」)ことが主張の根拠だ。「著作権法第2条3項の解釈を明らかに誤っている」(浜野弁護士)。
 なお、被告側は14日以内に控訴し、今度は東京高等裁判所を舞台に裁判が繰り広げられることになる。原告/被告とも最高裁まで争う構えを見せているため、結論が出るのは当分先となりそうだ。
 
関連情報:
・「『中古ゲーム東京訴訟』判決、小売店の中古販売を認める」毎日DailyMail COMPUTING(1999年5月27日)
http://www.mainichi.co.jp/digital/computing/199905/27/01back.html
・田中 一実、加藤 慶信「販売店側が勝訴--中古ゲーム・ソフト流通訴訟」日経Biztechニュースセンター(1999年5月27日)
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/show/leaf?CID=onair/biztech/gen/71959
・東京地裁平成10年(ワ)22568号 著作権侵害差止請求権不存在確認請求事件
http://www.arts.or.jp/judge/judge_tokyo.html
・「昨日のエニックス敗訴の判決に:CESAらが声明を発表」ZDNet/JAPAN(1999年5月28日)
http://www.zdnet.co.jp/gamespot/news/9905/28/news02.html
・テレビゲームソフトウエア流通協会(上記事件判決文他、「ARTS通信」で被告側を支持する見解)
http://www.arts.or.jp/news/fromarts.html
・コンピュータエンターテインメントソフトウェア協会(CESA)
「『ゲームソフト』が有する知的財産権について」等、原告側の見解
http://www.cesa.or.jp/cesa/jpn.html
・降旗淳平「中古ゲームソフト販売合法判決でソニー困惑!?、SCEの中古排除戦略に打撃」日経BizTech Newsビジネス・経営(1999年6月8日)
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/show/leaf?CID=onair/biztech/biz/72983
・「『ゲームは“映画の著作物”ではない』エニックスが敗訴」PC Watch,インプレス(1999年5月27日)
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/990527/accs.htm
 ACCSの記者会見の模様。
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 ただし、記者から「“ゲーム=映画”とすることは、いささか無理があるのではないか? ゲームは新しい著作物として別途立法化してはどうか」といった問いには「我々は現行法内で論議している。そうした場合映画が一番近いので、現在の主張となっている。販売店としては頒布権の効力が大きいことが不安だとする意見もある。将来、ゲームを独自の著作物として立法化される時がくるかもしれないし、ユーザー、販売店、メーカー等皆が納得する方法であるならば、それが一番いい」といった柔軟な意見も聞かれた。(強調は筆者)
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 その後、予告通りエニックス側は6月8日付で控訴。
情報元:
・「『中古ゲームソフト東京訴訟』で、エニックス控訴」毎日デイリーニュース(1999年6月10日)
 
 
4. コンピュータ・ソフトウエアの違法コピー率は世界で38%
 だそうである。どうやって算出したのかは知らないが...
 国別では、不正使用の金額が多い順に米国(29億ドル)、日本(5億9700万ドル)、独(4億7900万ドル)、英(4億6500万ドル)、仏(4億2500万ドル)等。上位10カ国で全世界の7割近く(73億ドル)。
 不正使用率ではベトナム(97%)、中国(96%)、オマーン(93%)、レバノン(93%)、ロシア(92%)、インドネシア(92%)、ブルガリア(90%)等。
 
関連情報:
・"Worldwide Business Software Piracy Losses Estimated At Nearly $11 Billion In 1998.", Business Software Alliance (BSA), Washington, DC (25 May 1999)
http://www.bsa.org/bin/show.cgi?URL=pressbox/enforcement/927637266.html
・芳尾 太郎「コンピュータ・ソフトウエアの違法コピー率は38%」日経エレクトロニクス(1999年5月27日)
http://ne.nikkeibp.co.jp/d-contents/1999/990527bsa.html
・Take-C Coma,「コピーソフト使用、世界で110億ドル 不正使用率最悪はベトナム」毎日インタラクティブ(1999年5月31日)
http://www.mainichi.co.jp/digital/netfile/archive/199905/31-2.html
 
 
1999/05/26
 
1. テレビ番組にWebへのリンクを埋め込む技術に特許
 インプレス・インターネットウォッチ他
 WorldGate Communications社は5月24日、同社の「Channel HyperLinking」技術に対して米特許庁から特許を付与されたことを明らかにした。
 同技術は、テレビ視聴者が番組やCMに張られたリンクから直接インターネット上の該当するホームページにジャンプすることができるようにするもの。視聴者はアドレスをタイプする必要がなく、リモコンのボタン1つで操作することが可能。
 クレームの範囲は「ケーブルネットワークのテレビ番組配信等の分散ネットワークシステムを通して情報源に双方向接続を実現するシステムあるいは方法」。キーボードやリモコンのボタンでリンクを操作する方法も含むらしい。
 同社によると、現在70の企業がこの技術を使用しており、中にはCNNなどの大手も含まれているという。
 
関連情報:
・taiga@scientist.com,「テレビ番組にWebへのリンクを埋め込む技術に特許」Impress INTERNET Watch(1999年5月26日)
http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/1999/0526/chlink.htm
・WorldGate Communications
http://www.wgate.com/news/1999/0524.html
 
 
1999/05/25
 
1. 野村総研のNRI、ダウエントの「Derwent World Patents Index」利用可能に
 ZD Net Japanより。
==================================== ダウエント・インフォメーション・日本は5月24日、海外40カ国の特許情報をカバーする「Derwent World Patents Index」のデータを5月31日からNRIサイバーパテントデスク上で公開すると発表した。
 「Derwent World Patents Index」は、各国発行の特許明細書に独自のコードやインデックスを付与し、また同社の専門家が抄録を作成して提供、世界40カ国の全技術分野の特許情報を含んでおり、収録レコードは数800万件という世界最大級の特許情報データベース。野村総合研究所が提供しているサイバーパテントディスクでの利用が可能になり、同データベースの記録をWeb上で閲覧できるようになるという。デモ版の利用は無料。
 
関連情報:
・中野恵美子「特許情報データベース『Derwent World Patents Index』を公開」ZDNet/JAPAN(1999年5月25日)
http://www.zdnet.co.jp/internet/news/9905/25/news04.html
 
 
1999/05/24
 
1. 日米欧が特許の審査協力−asahi.comより
 日米欧による特許の審査協力が26日から試験的に始まる。それぞれの特許の担当庁に共通で出された出願について、審査情報を交換し、参考にする仕組みで、1ヵ国(地域)が認めた特許を相互認証する「世界特許」の確立を念頭に置いている。特許庁では「情報交換によって質の高い、効率的な審査ができる」と説明している。
 今回の試行は「3極共同サーチパイロットプログラム」で、昨年11月の日米欧特許庁長官会合で決まった。26日から申し込まれた200件を対象にする。
 各庁は先行する技術の有無などを調べ、電話やファクスなどで情報を交換、制度の違いや調査の信頼性などを確認する。特許を与えるかどうかという最終的な判断は、各国地域が独自に行うが、将来は相互認証の導入を目指す。
 
出典:
・「日米欧が特許の審査協力 26日から試験的にスタート」asahi.com news update(1999年5月24日22:40)
http://iij.asahi.com/0524/news/business24029.html
 
 
2. ザーコウ事件、判決間近???(←根拠なし)
 特許庁の下した判断を審決取消訴訟で再審理する際の基準が最高裁で争われているザーコウ対ディッキンソン事件で、さる1999年3月24日に開かれた口頭弁論を公聴に行ったら、えらい大勢人がいた。特許庁の審査官が大勢で応援に駆けつけたのか?確かに審査官も来ていた。でも実は、、、
 ザーコウ事件は3番目(最高裁は会期中、一日の午前中に2件〜3件扱う)、つまりその日の最後の事件だったが、その前にやってた事件が図らずも注目を集めていたのだった。マスコミのカメラも来ていた。おかげで、10時開始のところを7時45分から並んだのに、1、2番目の事件はおろかザーコウ事件の最初も(ほんのちょっとだけど)見逃してしまった。
 さて、今朝フジサンケイニュースを見てたら、その人騒がせな事件の判決が下ったと報じられていた。ウィルソン対レーン事件(WILSON v. LAYNE, 98-0083 (U.S. 1999).)で、要するに警察の現場の捜査にマスコミを同行させた(よくTVのドキュメント番組でありますね)ことがプライバシー侵害になるかどうかが問題になってたらしい。結論、「レポーターは捜査逮捕の現場から追い出された」(詳しく読んでません)。
 ということは、順番からするとザーコウ事件の判決もそろそろ、かな...?
 
情報元:
・1999年5月25日付フジサンケイニュース
・"Reporters Kicked Off Searches and Arrests.", Lawnetworks(May 25, 1999).
http://www.lawnewsnet.com/stories/A1747-1999May25.html
WILSON et al. v. LAYNE, DEPUTY UNITED STATES MARSHAL, et al. 98-0083 (U.S. 1999).
http://supct.law.cornell.edu/supct/html/98-83.ZO.html
 
 
1999/05/19
 
1. ディズニー元重役の逆襲
 数年前、スピルバーグとカッツェンバーグ、ゲフィンの3人は、大手映画スタジオに対抗して「ドリームワークスSKG」を結成した。その内の一人ジェフリー・カッツェンバーグ(Jeffrey Katzenberg)は、ウォルトディズニー社で「美女と野獣」等を成功させた立役者らしいが、どういう理由からか社内で評価されなかったらしく、同社を1994年に去った。その彼が、ディズニー社との間で争っていた事件(退職金未払いのトラブル?)で、ロサンゼルス地裁は氏が同社を辞める際に特別手当を剥奪されることはないと判示した。つまり、退職金2億5千万ドルを得る中間決定を勝ち取ったわけである。なんでもこの事件では、トレードシークレット(営業秘密)法に関する事項が争点となっているらしい(詳細不明)。トレードシークレットは特許法と相反するもので、従来から州法で保護される分野であった。近年は連邦法(Economic Espionage Act)も制定されており、少し注目してもいいかも知れない。
 
関連情報
・IPO Daily News
・"Judge Rules in Favor of Former Disney Exec.", TV Guide Online Insider (May 21, 1999).
 
 
1999/05/18
 
1. ネット上の公文書検索(有料→とりあえず無料)
 アメリカは本当に情報公開が進んでおり、ネット上でも国を挙げて情報公開を推進している。そこへ民間支援による文書検索サービスが登場した。商務省の国内技術情報局(National Technical Information Service (NTIS))がNorthern Light社と協力して「Gov.search」という検索エンジンをスタートさせた。なんでも2万以上の政府/軍関連のサイト(総計380万ページ以上)、1964年以降のNTISのタイトル/抄訳データ、Northern Lightの雑誌(!)、および5400の刊行物が検索できるそうである。また情報ソースには、wwwに限らず「NTIS Archive」「Special Collection」(購入して読む)も対象となっている。通常のWeb検索では出てこない情報も検索できるということか!
 当初、有料で24時間15ドル(月30ドル、年間250ドル)とアナウンスされていたのだが、翌日には少なくとも6月1日までは無償となっていた。政府から有料化に待ったがかかった模様。将来は、有料のものとそうでないものに分けられるらしい。基本的にネット上で利用できる政府情報は無償らしいのだが、検索サービスの付加には民間企業が関与している以上有料化もやむなしか。そうすると、探し難い情報の検索には威力を発揮してもらい、そうでない情報は直接既知のサイトにアクセスする、というのが賢明かも。例えば、個人的には「米特許庁」と「トーマス」のサイトから大抵の欲しい情報は入手できると思っているが、当然ながらこれら以外のサイトにも特許情報はあるはず(有用な情報かどうかは別として)。もしもそういった情報が必要なら、有効だろう。試しに「patent」でサーチしてみたら...色々出てきました。
 
情報元
・「米政府関連文書が検索可能なGov.search」ZDNN/USA News Bursts(May 17, 1999)
http://www.zdnet.co.jp/news/9905/18/b_0517_19.html
・Lindsey Arent,平井眞弓・岩坂彰訳「米政府が連邦サイト専用検索エンジンを一般開放」Wired News(1999年5月17日)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/2452.html
・Lindsey Arent,中嶋瑞穂・合原弘子訳「連邦政府サイト検索サービスは無料に」Wired News(1999年5月18日)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/2459.html
・「『Gov.search』は当面無料」ZDNN/USA News Bursts(May 18, 1999)
http://www.zdnet.co.jp/news/9905/19/b_0518_14.html
・"Oops! Gov't search engine on hold - Following complaints, Commerce Department rethinks plan to charge fees for new service." ZDNN Tech News Now (May 18, 1999).
http://www.zdnet.com/zdnn/stories/news/0,4586,2260715,00.html
・Gov.search
http://standard.northernlight.com/cgi-bin/govsearch_login.pl

THOMAS -- U.S. Congress on the Internet

http://thomas.loc.gov/

 
 
1999/05/17
 
1. 世の中、何でもかんでもロイヤリティ!?
 仮にも知的所有権を守らんとする立場の人間が言うべきでないだろうが、最近は「実施料を徴収できるところからはきっちり徴収すべし」という風潮が強くなってきたのでは?これを世知辛い世の中ととるか、いままでがおかしかったのだ、正しい方向へ向かっているのだ、ととるか意見が分かれるところだろう。(両方のものが混在しているから、ひとまとめにして語ることはできないが...)
 日経Biz Techによれば、BGMとして店内で流す音楽の著作権料を徴収するための法案が、近々提出されるらしい。
====================================
 レストランやデパートなどで,BGMとして再生している音楽から著作権料を徴収する法案が、1999年5月中にも国会に提出される。これまでは、ディスコや音楽喫茶などにおいて営利目的で音楽を使用する場合を除いて、著作権料を徴収しなかった。今回の法案では、著作権法の附則14条で規定していた除外の取り決めを廃止する。順調に国会を通過すれば2000年1月1日から施行の予定。
 ただし,BGMを流すレストランやデパートは「全国でおよそ120万店」(文化庁著作権課)に上るため、それぞれから著作権料を個別に徴収することは実質不可能である。このため、「有線放送会社やBGM配信会社など6万店から徴収することになる」(文化庁)という。著作権料の徴収は、JASRAC(日本音楽著作権協会)が担当する。著作権料率は未定。今回の法案通過後にJASRACが文化庁に対して認可申請することになる。
 
情報元
・芳尾太郎「レストランのBGMからも著作権料を徴収へ」日経エレクトロニクス(1999年5月14日)
http://ne.nikkeibp.co.jp/d-contents/1999/990514copy.html
 
 
1999/05/14
 
1. 変わった発明−動物は優れた薬品製造工場?
 変わった発明の話(今回はニューヨークタイムズでなく、ワイアードから)。
 米ジェンザイム・トランスジェニックス社が、DNA技術に関して日本で特許を取得。ヤギの体内で人体に有用なタンパク質を生産するもの。ヤギの乳にこれを含むようするためのDNA配列とそのDNAによる遺伝子組み換え動物の乳を使って医療用タンパク質を生成する方法。動物愛護団体が反対しているとか。
・Lindsey Arent(日本語版 高橋朋子,岩坂彰)「遺伝子組み換え動物を製薬工場に」Wired News (1999年5月14日)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/2447.html
 
 
1999/05/10
 
1. 弁護士のTV宣伝、解禁か?
 従来はほとんど禁止されていた弁護士の宣伝活動が大幅に緩和されて、TVのCMからダイレクトメール、電車のつり広告までOKになる?
 日弁連・業務対策委が倫理規定の改正を検討しているとのこと。日本弁理士連合会の弁護士業務対策委員会が宣伝活動の原則自由化すべきとの最終答申をまとめ、早ければ年内にも総会に提出されるとか。ということは、弁理士も右へならえか!?
 ちなみに、アメリカでは弁理士の宣伝は当たり前。TVCMも面白いが(郵便局から軍隊までTV宣伝してるお国柄である)、雑誌広告なども楽しい。「ポピュラーサイエンス」(日本でも購読できるはず)なんかに載ってるので、無料案内(大手ローファームの宣伝パンフよりも、もっと個性的な代理人によるガイドブック)など取り寄せてみては。
 
情報元
・1999年5月11日付読売新聞 他
 
 
1999/05/06
 
1. プログラムのソースコードは言語か、ツールか?
 アメリカでは輸出管理規制というのがあって、軍事利用できる技術は政府の許可なく外国に持ち出すことができない。例えば特許出願でも、アメリカで発明したものは原則として先に外国に出願できないのである。出願するには、どんな発明でも(明らかに軍事利用できないものであっても)「外国出願ライセンス」を取得しなければならない。この辺の厳しさは、(平和ボケしている)我々日本人には理解し難い部分であるが、世界一の軍事大国であるアメリカでは現実にこういう縛りがある。
 ソフトやインターネット技術の発展著しい最近では、暗号化ソフト(エンクリプション・ソフト)がこれに引っ掛かって問題視されていた。RASやらPGPやらも苦労しているようである。RASなど、わざわざ米国外で開発して規制を逃れた程である。
 ところが、このような規制が憲法違反であるという判決が第9巡回裁判所で下された。これは大事件である。判決をまだ読んでないが、言論の自由にからめて「プログラムのソースコードは、合衆国憲法修正第1条で保護される」とのこと。サンフランシスコに位置するカリフォルニア州北部地区連邦地裁の下した「ソースコードは言葉に近いため、言論の自由によって保護される」との判決を支持したものである。
 ソースコードが果たしてコミュニケーションできる言語にあたるのか、あるいは政府側の主張するように「ただのツール」にすぎないものなのか、議論としては興味深いが、それよりも厳格な米国の輸出規制に風穴をあけた意味は大きい(と思いません?)。最高裁の判断が注目される。
 この訴訟では、数学者のダニエル・ベルンスタイン氏が開発した暗号アルゴリズムをインターネットに掲載するため、米商務省など複数の政府機関を相手取り、起こしたもの。米国のプライバシー擁護団体である「電子フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation (EFF))」は、この訴訟をディジタル世界における表現の自由や電子商取引、プライバシーにとって重要な問題と位置づけ、1995年以来ベルンスタイン氏を支援している。
 訴えに対し第9巡回控訴裁判所は、「ソフトウェアや関連技術の輸出規制は、政府が言論の自由に干渉することを禁じた憲法修正第1条に違反する」として違憲判決を下した。
==================================
 判決後(偶然のタイミング?)「ハッシュメール(hush mail、『しーっ』メール)」という無料の暗号化メールサービスが登場。これも輸出規制の問題を避けるため、アメリカ国外で開発されている。
 
情報元
・Paul Elias,ロイター協力「米政府の『敗訴』で米国の暗号規制は緩和されるか?」ZDNet/USA(1999年5月6日)
http://www.zdnet.co.jp/news/9905/07/crypto.html
・Robert Lemos,「米国の暗号技術輸出規制 違憲か否かが再び焦点に 」ZDNet/USA(1997年12月9日)
http://www.zdnet.co.jp/news/9712/09/bernstein.html
・「暗号輸出規制に違憲判決 米控訴裁判所が下級審支持」毎日DailyMail INTERNET In-Box Direct, No. 697(1999年5月10日)
・Paul Elias, "Court Says Encryption Has Free Speech Rights -Government worried about national security" The Recorder/Cal Law (May 7, 1999)
http://www.lawnewsnet.com/stories/A1253-1999May6.html
・Declan McCullagh, "Landmark Ruling on Encryption" Wired News (May 6, 1999).
http://www.wired.com/news/news/politics/story/19553.html
・「暗号訴訟での勝利を受けEFFが記者会見」ZDNet/USA(1999年5月7日)
http://www.zdnet.co.jp/news/9905/08/b_0507_14.html
・Maria Seminerio, "Will Bernstein case change the Net? -Privacy advocates believe landmark court battle will decide contentious debate in their favor." ZDNet/USA (May 7, 1999)
http://www.zdnet.com/zdnn/stories/news/0,4586,2255362,00.html
・Lindsey Arent,藤原聡美・岩坂彰訳「暗号メールを一般ユーザーの手に」Wired News日本語版(1999年5月21日)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/2484.html
 
 
1999/05/
1. 商標の取得が得意な事務所は?
 アメリカの特許(法律)事務所における、商標取得件数のランキングが発表されている。特許とは若干傾向が違っていて興味深い。
 
・"Top Trademarkers" Intelectual Property Today, May Issue
http://www.lawworks-iptoday.com/current/top.pdf
 
 
1999/04/21 (今日はネタ多いな...)
 
1. 州の免責は、微妙
 昨日最高裁でカレッジ・セービングス・バンク事件の口頭審理が開かれた。やはり微妙な線で、最近の最高裁の動向によれば州権拡大の方向に傾いているように思われるので、若干州側が有利かも知れない。決定票はケネディ判事が握っているようだ。いずれにしても、5対4の僅差となるだろう。
 この事件では、州政府および州営の機関(大学とか)が通常の商業活動を行っている場合に、これらを特許法または商標法(しいては著作権法も)等の連邦法違反で連邦裁判所に訴えることができるかどうかが争われている。民間の銀行(大学預金銀行?)が特許権侵害と商標法違反(虚偽宣伝)に基づき、フロリダ州の一機関(フロリダ州高等教育費用積立委員会?)を訴えた。いずれも、侵害責任等までは未だ審理されておらず、提訴自体が有効か否かという点が争われている(長い裁判だ...)。地裁では特許は提訴有効、商標は提訴不適となり、控訴審ではCAFC、第3巡回裁判所がそれぞれ地裁判決を支持している。この2件共が、同日審議された。
 
 フロリダ州高等教育費用積立委員会の代理人、ジョナサン・グロゴー(Jonathan Glogau)フロリダ州法務次官(assistant attorney general from Florida)の主張「特許権を侵害したというだけでは、憲法上の違反にならない。したがって、修正14条5節に基づく立法の根拠は存在しない。」
 ソーター判事「特許権者が州を州裁判所に提訴するよう定めるとなると、特許制度の統一を目指す連邦議会の趣旨に反する。特許権者に対する救済の続きを、単純に州裁判所に移送することはデュープロセスの否定に等しい。」
 グロゴー弁護士「連邦議会は州を除いて何人に対しても決定を下せる。」
(ピッツバーグのウィリアム・マリン(William Mallin)弁護士も州側)
 
 大学預金銀行側の代理人、ケビン・クリガン(Kevin Culligan)弁護士の主張「連邦議会が特許救済法(Patent Remedy Act)を制定した際の立法趣旨は、州を含む何人も特許権の無断使用を禁止するという排他権を含め、州が権利の所有者から当該権利を剥奪することを禁止する目的であった。」
 スカリア判事「それは(修正14条でなく)憲法1条の趣旨である。(1条で憲法は連邦議会に対し州際通商(interstate commerce)を規制する権限を含め、連邦法制定の権限を一般的に認可している点に触れた。)」
「連邦議会は州の免責特権を変更する手段として憲法1条を使用することはできない。」
 
 司法省の弁護士(連邦議会の権限を守るため、この争点のみ銀行側に参加) セス・ワックスマン司法長官(Seth Waxman, Solicitor General)の主張
「フロリダ州は商活動に参入することによって、連邦裁判所における虚偽宣伝の訴訟から免除される免責特権を放棄した」
 特許権侵害については、特許権者は単純に州裁判所に頼ることができないと強く主張した。「州の主権免責を決して放棄しない州がある。」「不法行為に関する免責を決して放棄しない州がある。」
 
 リベラル派の判事は、民間企業側の主張に同調気味である。
 ブレーヤー判事「カモの様に振る舞うなら、カモのように扱う。(もし州が民間企業と同じく)ビジネスとして振る舞うなら、ビジネスとして扱うべきだ。」
「連邦の定める商規制は(州にとっては)蚊帳の外と?」
「個人が連邦裁判所へ出訴して損害を被っている範囲で、すべての連邦法規制は適用対象外と?」
(銀行側の提訴を退けると判示した場合、州が運営する団体は多くの連邦法規制から実質上免除されることになると示唆)
 これに対し保守派の判事は、州に対する主権侵害と見ているようだ。
 スカリア判事「連邦政府は州の主権免責を無効にする権限を有さない。」
 オコナー判事「(虚偽宣伝から守られる権利について)これは一般人が所有権と考えるどのようなものよりもかけ離れており、(憲法修正14条で保護される範囲から)除かれる。」
さらにスカリア判事「(大学預金銀行が)ビジネスを行う上で(虚偽表示というだけでは)阻害するものはない」
 そして、これまでの連邦主義の争点がそうであったように、今回もアンソニー・ケネディ判事が決定票を握っているようだ。同判事の発した質問からすると、この裁判は連邦裁判所でなく州裁判所に属すると主張する州側の意見に賛同しているようにも思える。ケネディ判事は民間側弁護士に対し、「一般には不法行為とされているものを「憲法違反」にするために憲法を適用している」と述べた。また後に同判事は、連邦議会が1994年に、特許権侵害事件で州に対し三倍賠償並びに懲罰的損害賠償を科すと決定したことに動揺している様子だった。この点について同判事は、罰則が問題と「均衡」していないことを示唆した。「均衡の基準」は、州権にも影響を及ぼし得る救済立法に関する基準であり、ケネディ判事が起草した1997年の最高裁判決で確立されている。この事件、ブーン市対フロレス(City of Boerne v. Flores, 117 S.Ct. 2157 (1997).)では、個人が州を連邦裁判所に提訴することを規定する法律はすべて、連邦議会が言明しようとした問題と釣り合っていなければならないと判示された。この判決は、連邦議会が憲法修正14条に基づいて救済法規を制定する権限に制限を加えている。これより前の最高裁判決であるセミノール族事件(Seminole Tribe of Florida v. Florida, 517 U.S. 44 (1996).)では、連邦議会は憲法1条に基づき州の免責を無効にする法律を制定できないが、一方で修正14条第5節に基づくことによってのみ、法の適正手続(due prosess)と平等保護(equal protection)の権利を保障するための救済法規を制定することができるとされていた。ケネディ判事の起草した判決は、この権限をさらに制限していることになる...
 
・Kenneth Jost, "States' Rights Split Evident at Patent Argument - Kennedy's the key in bid to stop infringement suits." The Recorder/Cal Law (April 21, 1999).
http://www.lawnewsnetwork.com/practice/techlaw/news/apr/e042199a.html
Seminole Tribe of Florida v. Florida, 517 U.S. 44, 116 S.Ct. 1114 (1996).
http://laws.findlaw.com/US/000/u10198.html
・City of Boerne v. Flores, 117 S.Ct. 2157 (1997).
http://laws.findlaw.com/US/000/95-2074.html
 
2. 鬼より怖い米司法省、外国だろうと容赦なし
 日本とアメリカの違いは、と訊かれれば独禁法違反が厳しいこと、と答える。そのくらいアメリカで司法省は恐れられていた時代があった。今でも変わってなさそうなことはマイクロソフトとの争いを見ても想像が付く。国民の血税を何に使っているんだ、といわれようが何だろうが、とにかく執念深い。
 今日の日経BizTech Mailにすごい話が載っていた。曰く、「日本企業同士が日本国内で結んだカルテル行為に対し、外国の司法当局が刑事責任を追及できるのか――」主権無視もここまで来たか、いやいや訴状や判決を見てないので何ともいえんが、とにかくすごそうである。
===============================
 「域外適用」の是非を焦点として始まった裁判が、異例の展開を見せている。米国向けファクシミリ用感熱紙の価格カルテル疑惑で、米司法省が日本製紙を刑事訴追した事件だ。昨年7月13日、米ボストン連邦地裁で、有罪か無罪かで陪審員の意見が割れて評決不能となって以来、9カ月も公判が再開されず、空白状態が続いているのだ。
 一部には「米司法省が有罪の証拠を固められず、苦戦している」との観測もある。だが、仮に日本製紙が「シロ」を勝ち取っても日本企業は警戒を緩めるべきではない。「面目を失った司法省が、他の案件で域外適用に執念を燃やすだろう」(日本大学の野木村忠邦教授)との予測もあるからだ。国内では公正取引委員会の目を逃れさえすればいいなどと考えていると、大きな代償を払うことになりかねない。
 裁判の経緯は右表の通りだが、争点は前半と後半で2つに分かれる。1995年から98年1月までは、米シャーマン法(日本の独占禁止法に相当)を刑事事件で域外適用することの是非、98年6月から現在までは、カルテル行為の有無がそれぞれ争われている。
 日本製紙は「カルテルの事実はない」と主張しつつも、まず、「域外適用は日本の主権を侵害している」として訴えの却下を求めた。米マサチューセッツ連邦地裁は日本製紙の主張を認めたが、米司法省が控訴。米第1巡回区控訴裁判所は一転して米司法省に軍配を上げ、域外適用を認めた。
 これに不服の日本製紙は米最高裁に上告受理の申立書を提出。日本政府も「国家主権に配慮すべきだ」との文書を送ったが、米最高裁は申立書の受理を拒否した。このため、焦点はカルテルの有無を巡る事実審理に移った。
業界団体の会合には用心が必要
 しかし98年7月、ボストン連邦地裁で12人の陪審員の意見が割れ、裁判長が評決不能を宣言した。米国の陪審制度では、全員一致が必要だからだ。8月には日本製紙が「有罪を立証できなかったのだから、これ以上争うのは無意味」(中島巖常務)として、裁判所に無罪の申立書を提出。米司法省は反論書を出した。この後、裁判長が日本製紙の申し立てを認めるか、公判のやり直しを命じるか、いずれかの判断を9月中にも下すと見られていた。
 しかし、決定は延期に次ぐ延期で今日に至っている。日本製紙の中島常務は、「無罪申し立てが認められると期待している。だが、推測でしかない」と困惑気味だ。
 裁判の行方は予断を許さないが、米司法省反トラスト局出身のジョエル・ダビドゥー弁護士は、「再公判の可能性が大きいし、いずれにせよ米司法省は徹底して争うだろう。決着にはまだ時間がかかりそうだ」と推測している。米司法省が最近、ある日本人関係者に対し、「公判が再開したら証言する」との文書に署名を求めた、との情報もあり、同省の執念をうかがわせる。
 日本企業は、「米国の消費者に影響が及ぶカルテル行為があれば、企業の国籍や謀議がなされた場所に関係なく、刑事責任を追及する」(ダビドゥー氏)という米司法省の姿勢に注意すべきだろう。
 米国で事業展開している企業は今後、日本でも「李下に冠を正さず」という姿勢が求められそうだ。カルテルに厳しい米司法省から見れば、大手の競合企業が集まる各種業界団体の会合なども、怪しげな存在に映りかねない。野木村教授は、「競合他社との会合には弁護士を立ち会わせ、独禁法に触れる話題が出ないか監視させるといった用心深さが必要」と指摘している。
 
出典:塩田宏之「日本製紙を『域外適用』で訴えた米司法省の執念」日経ビジネス(日経BP社99/04/21)
 
3. 「i.Link」は登録商標だったのか!
 ソニーしか使ってないなーとは思ってたんだが、商標登録されてたとは知らなんだ。多くのメーカーでは、規格のまま「IEEE1394」と呼んでいる。なお、同じ意味の「FireWire」は米アップル社の登録商標で、この技術自体の特許を同社が保有している。先日も、使用料の設定で一悶着あったばかり。日経マックより
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i.Linkの商標採用を30社が検討中
 ソニーの登録商標「i.Link」の採用を検討しているメーカが約30社に上ることが明らかになった。i.Linkは、ソニーがIEEE1394の呼称として登録した商標である。ソニーは、手数料として5万円または500米ドルを請求するものの、その後は機器メーカが無償で自由にi.Linkという呼称を使えるという。IEEE1394という規格名では一般消費者に浸透しにくいとみたソニーは、i.Linkの普及を急いでいる。
 
・浅見直樹「【解説】i.Linkの商標採用を30社が検討中」日経エレクトロニクス(1999年4月21日)
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/show/leaf?CID=onair/biztech/pc/56496
 
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 その後、使用料が25セントに落ち着いた。
 
 日欧米11社は,IEEE1394に関連した特許を共同ライセンスすることで合意した。11社とは,米Apple Computer, Inc.とキヤノン,米Compaq Computer Corp.,米Intel Corp.,松下電器産業,三菱電機,オランダRoyal Philips Electronics N.V.,ソニー,伊仏合弁のSTMicroelectronics社,東芝,米Zayante Inc.である。1999年2月に,Apple社やソニーなど6社が共同ライセンスで合意していたが,合意会社の数が増えたことで,影響力は一段と強まりそうだ。得に注目されるのは,2月時点の6社に,米Intel Corp.が加わったことといえる。Intel社は,USB2.0の開発計画を明らかにしたことで,IEEE1394からはややトーンダウンしていた。そのIntel社は,高速版の仕様1394.bをはじめ,IEEE1394関連の基本技術をもっている。今回,Intel社も共同ライセンスに合意したことで,IEEE1394関連製品を開発するメーカは,Intel社と個別に特許使用料の交渉をする必要がなくなる。11社の共同ライセンスに含まれるのは,「IEEE1394-1995」のほか「IEEE1394.a」,さらにディジタル記録のVTRに向けたプロトコルの仕様「IEC61883」などである。現在標準化作業が進んでいる高速版および長距離版の仕様「1394.b」も,共同ライセンスの対象になることが予定されている。加えて,1999年当初から話題になっていたライセンス料も,ようやく決着した。ライセンス料は,機器当たり25米セントである。ポート数にはよらない。以前は,物理層LSIの1ポートに当たり1米ドルというライセンス料をApple社が要求していたのに比べて,ライセンス料はぐっと抑えられたといえる。物理層LSIのメーカではなく,機器メーカがライセンス料を支払う。共同ライセンスの対象になる特許は,これから審査する。上記の11社以外でも応募できる。受付期間は1999年5月15日から同年6月30日。受付窓口はSullivan&Cromwell法律事務所のGarrard Beeney弁護士。電話番号は米国+1-212-558-3737,ファクシミリ番号は+1-212-558-3588。
 
情報元
浅見直樹日欧米11社,IEEE1394に関連した特許の共同ライセンスで合意」日経エレクトロニクス(1999年5月12日)
http://ne.nikkeibp.co.jp/IEEE1394/1999/05/990512pat.html
・「日米欧11社、IEEE1394デジタルインターフェースの利用を加速する必須特許共同ライセンス プログラムで合意」東芝プレスリリース(1999年5月12日)
http://www.toshiba.co.jp/about/press/1999_05/pr_j1203.htm
 
 
4. パテント・エージェント試験年2回でスタート
 今年からエージェント試験は年2回となる。ということは提出期限や準備などが厳しくなるということで、受験された方々ご苦労様でした。
 昨年よりは平易だったようです。
 
5. 米特許庁の無料公報サーチ、正式オープン!
 ベータテスト段階も終了し、晴れて正式オープンに。
 TIFFファイルの閲覧用プラグインは、特許庁のホームページ上に掲載されるようになった(以前は、ベンダーのサイトにリンクされていた。)
 このソフト、無料だしクイックタイムなんかと違って軽く、
(1)ツールバーに保存、印刷等のボタンが並び操作が簡単、
(2)印刷が一枚に収まる(IBMのやつだと、途中で切れてしまうのでテクが必要だった)
ので便利なんだけど、(1)英語表記。(2)圧縮方式が1ビットのモノクロと、ちょっと珍しいため、環境によってはデータを読めないこともある。だから他でデータを利用する場合は(データを送る前に)一般的な8ビットのグレースケールで変換し直した方がいいかも。
・特許庁
http://www.uspto.gov/patft/index.html
・TIFFのビューア
ftp://ftp.uspto.gov/pub/tiffview/
 
 
1999/04/20
 
1. 州政府の訴追免除、いよいよ大詰めへ
 本日、米連邦最高裁にてカレッジ・セービングス・バンクとフロリダ州との争いにつき口頭弁論が開かれた。本日の審理は、この件(特許と商標で2件最高裁に上がっている)のみ。で、今日のレコーダーによると、、、
 大学の研究室で高名な科学者の熱心な研究によって、州立大学の元締めである州は、例えばソフトウェアやバイオテクノロジー等の分野から多額のロイヤリティを何百万ドルも徴収できる。一部の大学(カリフォルニアだよ!)ではこのシステムがすごく活発で、企業以上に積極的な集金活動を行っている。(日本もこれを真似しようとしているのか?)もちろん、一般企業も研究をやって特許を得ていることは同じなのだが、州の特許を民間が使うと侵害で、州が民間企業の特許を使っても怒られない、というか裁判所に連れていくことができない、という争いがこの事件である。
 この事件でもアミカス・ブリーフが多く出されていて、特に著作権や商標権侵害を憂慮している民間団体が共同で民間企業側(大学預金銀行)を応援している。連邦政府も同じ。連邦政府は当事者として事件に参加している。(連邦議会の権限が損なわれると困るのは連邦政府だから、この争点にのみ参加)
 一方で州側は、自治権を守れとばかりに地方自治体からの援軍がついている。26州の州法務長官が共同でブリーフを出した。他の州にしてみれば自衛の意味合いが強く、どこの州も同じような教育費積立プログラムを州営でやっているため、これでフロリダ州が負けると次はうちの州が訴えられるのかとばかりに戦々恐々と裁判の行方を見守っている。当然、カリフォルニア州もフロリダ州側を応援しているのだが、ジェネンティックとの訴訟で代理しているジェラルド・ドドソン弁護士がアミカス・ブリーフを書いている。曰く、「州が特許を取得してそこから利益を得ている(実施料を徴収している)ことは、本件とは何の関係もない。州政府は、連邦政府と同じように主権を持っている。」
 
関連情報
・Brenda Sandburg, "Stating the Case for Immunity -States go to high court to avoid suits alleging patent infringement.", The Recorder/Cal Law, April 20, 1999.
http://www.lawnewsnet.com/stories/A795-1999Apr19.html
http://www.ipmag.com/dailies/1999/apr/990420.html
Genentech v. Regents of the University of California, 143 F.3d 1446, 46 USPQ2d 1586 (Fed. Cir. 1998).
http://www.ll.georgetown.edu/Fed-Ct/Circuit/fed/opinions/97-1099.html
・Paul J. Heald, Michael L. Wells. "Remedies for the misappropriation of intellectual property by state and municipal governments before and after Seminole Tribe: the Eleventh Amendment and other immunity doctrines." 55 Wash. & Lee L. Rev. 849-914 (1998).
 
2. CAFC判決−都合のいい仮想クレームはダメ
 ウィルソン・スポーツ用品(ゴルフボール)事件(Wilson Sporting Goods Co. v. David Geoffrey & Associates)でCAFCは有名な仮想クレーム理論(hypothetical claim)を導入した。これは、均等論侵害の判断において、イ号を文言上包含するクレームが仮に出願時にあったと仮想した場合、当該クレームが特許査定され得たか否かを先行技術と照らし合わせて判断する手法である。
a. もし仮想クレームが特許になったと考えられるなら、イ号は侵害となる(範囲まで、元のクレームの均等の範囲は拡大可能)、
b. 仮想クレームは先行技術のため特許にならなかったと考えられるなら、侵害にならない。そんなクレームを認めてしまうと、公知技術すなわち一般公衆が自由に利用できる範囲を犯すことになるから。
 さて、今回のストリームフィーダー対シュア・フィーダー事件(Streamfeeder, LLC v. Sure-Feed, Inc.)で、原告側は仮想クレームをミネソタ州連邦地方裁判所に提示して、均等論侵害を立証した。ところがCAFCは、当該仮想クレームにつき、確かにある部分では実際のクレームよりも範囲が広いものの、別の部分ではクレームを狭く限定しないと先行技術を回避できないとして、当該仮想クレームを認めなかった。CAFCの合議体は、ローリー、シャール、ブライソン判事で、判決文はローリー判事。
 格言「あるクレームを限定し同時に拡張するような手法で、既に特許されているクレームを訴訟において書き直すために仮想クレーム理論を使用することはできない。」("Hypothetical claim analysis . . . cannot be used to redraft granted claims in litigation by narrowing and broadening a claim at the same time.")
 
参考資料
・1999年4月23日付 IPO Daily News
Streamfeeder, LLC v. Sure-Feed, Inc., No. 98-1521 (Fed. Cir. 1999)
http://www.ipo.org/StreemfedervSurefeed.htm
Wilson Sporting Goods Co. v. David Geoffrey & Associates, 904 F.2d 677, 14 USPQ2d 1942 (Fed. Cir. 1990).
・C.ブルース・ハンバーグ、朝比奈宗太訳「米国における均等論」発明協会(1995年)
 
 
1999/04/19
 
1. CAFC判決−フェスト対焼結金属工業事件も差し戻し(さらに追加1999年9月2日)
 ワーナージェンキンソン対ヒルトンデイビス事件を受けて最高裁からCAFCに差し戻されていた3件の内、最後に残っていたフェスト対焼結金属工業事件(Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., Ltd.)も、この日判決が下された。リットン対ハネウェル事件とヒューズ・エアクラフト対米国政府事件は、昨年同時に判決が下されており、うちヒューズ事件は既に最高裁上告も却下され確定している。なんでフェスト事件だけ遅れたんだろう?逸失損失など別の争点もあるようなので、そのせいか?
 本件では磁気結合の中空シリンダ(magnetically coupled rodless cylinders)に関する2件の特許の侵害が争われており、この内キャロル特許では構成要件として一対の弾性封止リング(a pair of resilient sealing rings)が必要とされていた。これに対しイ号装置では、単一の両方向封止リング(single two-way sealing ring )で代用しており、この点が構成要件を欠くことになるか否かが争われた。最終的にCAFCはヒューズ事件と同じく、オールエレメントルールで審理し直しても均等論侵害成立と判断した。もう一方のストール特許については、ヒルトンデイビス事件やハネウェル事件と同じく、補正の理由が不明なので審査経過禁反言の適用有無および範囲を判断できず、審理不尽で地裁差し戻しとされた。
 なかなか、CAFCは一旦侵害と判断したものを差し戻されても覆してくれない。発明全体でも構成要件毎でも結局は侵害なんだからCAFCの判断は間違っていない、といってるように聞こえるのは私だけだろうか。合議体担当判事は、リッチ、ニューマン、ミッシェル判事で、判決文はニューマン判事。均等論侵害の歴史を紐解いてるので、勉強にいい。
 判決文を読むと、均等論侵害の分析について「構成要件毎に判断」とはいうものの、クレームの構成要件とイ号のそれとが一対一に対応してなくても良いとあり、かのコーニンググラス対住友電工事件(Corning Glass Works v. Sumitomo Electric U.S.A., Inc., 868 F.2d 1251, 9 USPQ2d 1962 (Fed. Cir. 1989).)で言われた「オール・リミテーション・ルール(all limitations rule)」を思い出す。
(構成要件毎というよりも「クレーム限定毎」というやつ。結果的には発明全体の判断に近いニュアンスがあるためか、日本ではこの事件を「実質的には『発明全体』基準の判断であり、現在無効」と誤解されている向きも多い。正しくは、この判決も「構成要件毎」の一種(というか、そのもの)であり、したがって現在も有効!)
 ニューマン判事は、コーニング事件以外にも幾つかの事件を引用し(Intel Corp. v. United States Int'l Trade Comm'n, 946 F.2d 821, 20 USPQ2d 1161 (Fed. Cir. 1991), Sun Studs Inc. v. ATA Equip. Leasing Inc., 872 F.2d 978, 10 USPQ2d 1338 (Fed. Cir. 1989)(ハンバーグ,朝比奈「米国における均等論」,発明協会,23頁).)、かような「豊富な先例」を最高裁が破棄したと思えるような根拠はどこにもないと述べている。
 「・・・最高裁はワーナージェンキンソン事件において、裁判所が『オールエレメントルール』を適用する際に、特定のクレームの実体において個々の構成要件が果たす役目を明確にすることは妥当であると説明した。この分析によって、イ号の代替要素がクレームの構成要件の奏する機能、方法、効果と合致するか、あるいは本質的に相違する役目を果たすかという問題も示されるであろう。
 ・・・オールエレメントルールもしくはオール・リミテーション・ルールに則していることは、先例に示される如くクレームの各構成要件がイ号装置もしくは方法の該当部分を含んでいるか否かに基づき、均等性判断の要として決定される。オールエレメントルールに従うことは、事実問題としての均等性判断とは区別される問題である。つまり、クレームにかかる組み合わせとイ号の要素との対応関係を構成要件毎に判断する問題である。ワーナージェンキンソン事件において最高裁は、当該ルールを均等論の適用における『法律上の制約』であり、本法廷で決定されるべき事項と表現した。したがって本法廷は、オールエレメントルール充足の有無を裁判所の問題として審理する。つまり、まずクレーム解釈の問題としてクレームの構成要件を明確にし、次にこれらの構成要件もしくは限定事項と、イ号装置もしくは方法の要素との対応を判断する。」
 クレームの各構成要件とイ号のそれとは、正しく一対一に対応していなくても均等論侵害が成立することは、従前のコーニンググラス事件でも明らかにされている。ただ、どの要素がどう対応しているのかという対応関係を、裁判所は明らかにしなければならないという。そりゃそうだ、対応があいまいなまま均等だと言ったのでは、結局全体で判断してることと同じになりそうだし。すべてのクレーム限定がイ号中で認められなければ均等論侵害が成立しないと言う建前を考えると、対応関係を明確にすることは当然と言える。
 (ミソは、やはりクレーム作成の基本単位である構成要件(エレメント)と、侵害有無判断の基準となるクレーム限定(リミテーション)とが一致しなくても良いところでしょうね。コーニンググラス事件のときからさんざん言われてきたことだとは思うが、侵害判断の単位を裁判所がどのように線引きするかで判断が分かれるわけだから。ここが一番知りたいんだけどね〜。)
 それと、拒絶理由に対する応答でなく自発補正の場合、禁反言は必ずしも働かないそうである。ニューマン判事らしい意見だ。以前のリットン対ハネウェル事件でも反対意見でそんな意味のことを述べられていたと思う。(特許性に関する補正についてのみ禁反言が働き、例えば引用されてない文献についてIDS中のサーチレポートで述べたことは禁反言を生じない、とか(記憶曖昧))
 本件では、ドイツ文献を元に特許権者自らが再審査を請求しており、その過程でクレームが補正されている。再審査の請求にはご承知の通り「特許性に関する新たな実質的問題(substantial new question of patentability)」が必要である。再審査請求が認められたと言うことは、「『特許性』に関する問題」で補正されたことになるような気もする。しかし、ニューマン判事によれば、禁反言を生じるのは審査の過程で「要求された(required)」補正、平たく言えば審査官に強要された補正である、とのことらしい。したがって、自発的に提出した補正は「強要」されたものでないから禁反言は生じないと言うことらしい。
 この事件は、1999年8月20日付で大法廷で審理し直されることが認められたため、この判決は破棄された。今後に注目!
 
 
1999/04/16
 
1. 権利期間満了間際に試験開始するのはOK?
 
 毎日新聞他より
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 特許が認められた新薬と同じ薬効を持つ「コピー薬品」を発売するため、特許権保護期間中に新薬と同一成分の試作品を作って試験を行うことが特許権侵害にあたるかが争われた裁判で、最高裁第2小法廷(河合伸一裁判長)は4月16日、「こうした試験は、特許権保護の例外となる試験・研究にあたり、特許権の侵害にはあたらない」との初判断を示した。そのうえで、同小法廷は特許権侵害を主張した小野薬品工業(大阪市)が敗訴した1、2審判決を支持し、上告を退けた。
 薬品の製造承認を受けるには、毒性や薬理作用などの試験結果を厚生省に提出することが義務づけられている。後発会社は特許権保護期間(出願から20年)の終了後、速やかにコピー薬品を発売するため、新薬と同一成分の試作品を作って臨床試験を行うことも多いとされ、訴訟が相次いでいる。この日の最高裁判決は類似の訴訟に大きな影響を与えるとみられる。
 最高裁判決は「試験には一定の期間がかかることから、特許権保護期間中に後発メーカーがこうした試験が行えないとすると、保護期間終了後も一定の期間、保護期間を延長することになり、特許制度の根幹に反することになる」と述べた。一方で、「試験に必要な範囲を超えて、発売に備えて多量のコピー薬品をつくることは許されない」と指摘した。
 判決によると、小野薬品工業は1976年1月、すい臓疾患治療剤の特許を出願。京都薬品工業(京都市)が保護期間終了直後の96年3月に同じ薬効をもつ製剤を発売したため、販売差し止めの訴えを起こした。
 
関連情報:
・「薬品特許判決:後発メーカーの試作試験は適法−最高裁」毎日新聞(1999年4月16日)
http://search.mainichi.co.jp/news/search/775135/93c18b96-0-2.html
 
 
1999/04/14
 
1. カリフォルニア大対ジェネンティック事件の公判開始
 カリフォルニア州立大学、イーライ・リリー社、ジェネンティック社の争いは、既に9年も継続しており泥沼化している。1999年4月13日、サンフランシスコのカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所にて、カリフォルニア大対ジェネンティック事件の本案の審理が、陪審を前に始まった。
 紛争が長期化しているので、判事も相当辟易としているようだ。カリフォルニア大側の弁護士はモリソン&フォスター、ジェネンティック側は合併に揺れるロジャーズ&ウェルズが担当している。
 本件では、ヒト成長ホルモン(human growth hormone (hGH))の権利をどこが有しているか、およびカ大の特許は、正しく記載されているのか(112条の問題だろう)が争われている。
 カリファルニア大は877特許を有している。この特許はPeter Seeburg、John Shine、Howard Goodmanの3人が開発したが、その内Seeburg博士は、その後ジェ社に移った。
 カリファルニア大はリリー社に対し上記特許をライセンスした。リリー社はHumatropeを販売した。
 一方ジェネンティックは832特許を取得している。同社は独自に開発したというProtropinを販売している。(これは未認可の使用の咎で連邦政府と5000万ドルの和解交渉中)
 ジェ社はカ大から特許に係る技術を盗んだと訴えられている。元カ大技術者でジェ社に移ったPeter Seeburgが、1978年の元旦夜中に密かにジェネンティック社を訪れている。このとき、DNAを盗んだとされている。
 
原告の主張(UC、877特許を所有)
 ライト兄弟はわずか数歩中に浮いただけで飛行機の基本特許を取った。後発組はみんなライト兄弟の基本技術(building block)を使用する許可が必要だった。ジェ社はUCの基本特許を使って、これに何か追加して改良特許を取った。したがって、同社は基本特許を侵害している。
 
被告の主張(ジェネンティック、832特許を持ってる)
 カ大のDNAでは、hGHを作れない。ジェ社の製品はMet-hGHである。特許庁は、審査した結果両者の特許が異なるといっている。
 仮に改良発明が特許になったとしても、基本特許を使ってる限り侵害だと思うが(私見)
 例えばアトラス・パウダー対EIデュポン事件(Atlas Powder Company v. E.I. Du Pont De Nemours & Company, 224 USPQ 409 (Fed. Cir. 1984).)では「侵害と目されたものに特許が付与されたという事実が、均等でないとの一応の決定をもたらすものではない」とCAFCは判断しているという。朝比奈「外国特許制度解説〔第七版〕」(東洋法規・1998年)519頁参照。
 
情報元および関連資料
・Mike Mckee, "Sparks Fly in UC, Genentech Patent Dispute -Trial to decide who owns human growth hormone", The Recorder/Cal Law (April 14, 1999).
http://www.lawnewsnet.com/stories/A667-1999Apr13.html
Regents of the University of California v. Genentech Inc., 90-2232 (N.D.Cal. 1999).
Genentech Inc. v. University of California, 143 F.3d 1446, 46 USPQ2d 1586 (Fed. Cir. 1998).
http://www.ipo.org/Genetechv.Regents.html
 この従前の事件では、州の免責が絡んでいる(別項参照)。ジェ社がカ大とリリー社を相手取り、特許無効および非侵害の確認判決、反トラスト法(独禁法)および州の不法行為(state tort)と契約違反でインディアナ州南部地区連邦地方裁判所に訴えた。結局、州(州立大学)を訴えることは可能と認められたので、やっと裁判が始まったという訳。
 なお、カ大を代理しているジェラルド・ドドソン氏は、このときはアーノルド何とかいう法律事務所にいたが、いまはモリソン&フォスターにいる!(↑の4/20記事では写真入り)
 ちなみにこの事件では、カ大は憲法修正11条に基づき本訴から免責されると主張して訴えの棄却を求めていたが、最終的にCAFCは州立大学が免責特権を放棄した(waived its immunity)と判断して当該主張を認めず、最高裁への上告も認められなかった。
 CAFCの担当判事はニューマン、ローリー、レーダー判事で、判決理由はニューマン判事。この中で、別に大学が特許を取ったからといって連邦法に従った→暗黙の了解で特権を放棄したということにはならないが、特許権を盾に権利行使するぞと脅したことで主権免責を放棄しているとされた。
 ただし、特許救済法の違憲性についてはここでは判断しなかった。→その後カレッジ・セービングス・バンク事件でCAFCとしての見解をきっちり白黒つけた。詳しくはカレッジ事件の拙稿(おもてページ)をご参照願いたい。とにかく、商業的指向の強い訴訟は大学本来の目的でないから、免責は認められないとされている(commercially-oriented actions were not "at the core of the educational/research purposes for which the University)。
・1998年5月5日付IPO DAILY NEWS
 
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 公判が開始されたので、追加記事が登場。
 1999年5月17日付ワシントンポストに、発明者が夜中に進入して盗んだ模様が書かれている。気の毒な(?)発明者氏は、ぼろくそに言われている。
 ロセンザルスタイムスは、ジェネンティック社がカリフォルニア大との争いについて、自社に不利な決定に対してすべて控訴するとの意向を明らかにしている。
・Justin Gillis, "20 Years Later, Stolen Gene Haunts a Biotech Pioneer.", Washington Post Page A01(May 17, 1999).
http://www.washingtonpost.com/wp-srv/WPcap/1999-05/17/033r-051799-idx.html
・Mike Mckee, "Hot-Button Battle Between UC, Genentech Goes to Jury", The Recorder/Cal Law (May 21, 1999).
http://www.lawnewsnetwork.com/practice/iplaw/news/A1644-1999May20.html
・Mike Mckee, "Jury Gets UC v. Genentech -Deliberations begin Monday over which institution will control the human growth hormone patent" The Recorder (May 21, 1999).(上記と同じ)
http://www.ipmag.com/dailies/1999/may/990521.html
・"Genentech to Appeal Any Adverse Ruling" L.A. Times (May 20, 1999).
http://www.latimes.com/CNS_DAYS/990520/t000045203.html
 
 
2. 北海道新聞社が特許庁長官を「提訴」
 asahi.com社会面より。でも、よく読むと単なる審決取消訴訟だった。そりゃ、特許庁長官を訴えることには違いないだろうけど...見出しってコワイ。
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 北海道新聞社(本社・札幌市)は14日、「函館新聞」など4件の商標登録が拒絶されたことをめぐり、不服申し立ての審判請求を退けた特許庁の審決は誤りだとして、同庁長官を相手取って、審決の取り消しなどを求める訴えを東京高裁に起こした。
 特許庁は3月の審決で、道新が出願した9件(のちに5件取り下げ)の商標について、(1)函館新聞(本社・函館市)の創刊構想を知った直後に登録出願したのは、通常の企業行動からみて不自然(2)9件の出願は新聞業界の事情からしても異例に多い出願だ――などと指摘した上で、「函館新聞の創刊構想に対抗することが主たる動機とみるのが自然であり、公序良俗を害する恐れがある商標だった」として、登録拒絶に誤りはなかったとした。
 北海道新聞社・島田哲社長室次長の話 特許庁の判断は基本的な事実認定に誤りが多く、法令の適用にも承服できないため、東京高裁の判断を仰ぐことにした。
 
出典
「北海道新聞社が特許庁長官を提訴 商標登録拒否問題で」asahi.com(朝日新聞社)1999年4月14日
http://iij.asahi.com/0414/news/national14048.html
 
3. CAFC判決−これではっきりした!?現在のトレンドは「何でも特許OK」(内容修正中)
 ステート・ストリート・バンク事件で、CAFCは特許の対象を正式に広く認めた。要するに、クレームが「数学的アルゴリズム」を含んでいても、「ビジネスの手法」であっても、それだけで有用性は否定されない、他の技術と同様に、具体的に有用な結果が得られるものであれば「有用性」の要件は具備される、というものであった。じゃあ、「有用で具体的かつ現実の結果物(useful, concrete and tangible result)」テストをクリアさえすれば、ビジネスの方法に限らず、ソフトウェアだろうが何だろうが特許の対象となるのか、という疑問があった。その答えは、今回のCAFCによればイエスらしい。(マークマン事件の後に、バイトロニクス判決においてマークマン判決の意味を具体的に述べたように、CAFCは重要事件(今回の場合はステートストリート)の後に、よりはっきりとした表現で立場を明確にしている。前の判決から時間が経った→熟考する時間があった、世間も落ち着いた→自信を持って言い切れるようになる?=後の判決の方が判りやすい?)
 AT&T対エクセル・コミュニケーションズ事件(AT&T Corp. v. Excel Communications, Inc., 98-1338 (Fed. Cir. 1999).)において、CAFCは「有用で具体的かつ現実の結果(useful, concrete and tangible result)」基準を採用して、AT&T社の特許を無効とした地裁のサマリージャッジメントを覆し、差し戻している。
 本件でCAFCは、過去の判決を最高裁、CCPAまで洗い直し、これに先般のステートストリート事件を当てはめて分析している。アルゴリズム関連の判決の変遷を見直すのにgood!
 被告側は、数学的アルゴリズムを含む方法クレーム中に、発明の対象をある状態から別の状態に「物理的に移行」もしくは変換する工程が存在する場合にのみ特許の対象と認められると主張した。しかしCAFCは、物理的変換の存否とは数学的アルゴリズムが実際に応用されていること(プロセスの特許性)を示す一例にすぎない(単なる十分条件)と述べ、常に必要条件でないとして当該主張を退けた。
 さらに被告側は、本件の方法クレームには物理的な構造上の限定(physical limitations)がないので特許の対象とならないと主張した。これは旧来の基準であるフリーマン・ウォルター・エイベリー・テスト(Freeman-Walter-Abele test)につながるもの。しかしながらCAFCは、原告の引用した判例にはミーンズ・クレームを採用した装置クレームが含まれており、このような物のクレームでは明細書中にクレームを裏付ける構造が必要であるものの、方法クレームにはこのような構造に関する要件は不要であるとし、原告の主張は誤りであるとしてこれを拒絶した。
 要するに、特許にならないものは自然法則、自然現象、抽象的なアイデア等で、これ以外は何でも特許になるよ!ということですかね。
 本件の担当はプレーガー、クレベンジャー、レーダー判事で、判決文はプレーガー判事による。
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 ちょっと補足...
 ステートストリート・バンク事件では、特許はミーンズ形式の装置クレームであった。
 今回の事件では、プロセスクレームである。ATT社の特許は「電話システム用通話記録(Call Message Recording for Telephone Systems)」と名付けられた、長距離電話の料金記録にある情報を付加する方法である。これは、PIC(primary interexchange carrier ("PIC")、主外部交換キャリア、要するにどこの長距離電話会社と契約しているかを表示するもの)表示器を追加して機能を拡張している。当該表示によって長距離電話会社は、電話をかけた契約者と通話先とが同じ電話会社に契約している場合と、異なる電話会社の場合とに応じてそれぞれ異なる料金を請求することが可能となる。PICの表示には様々な態様があり、通話先の電話会社名を記号(code)で明らかにするもの、相手先の電話会社が特定の会社かどうかフラグ(flag)で示すもの、話し手と受け手の電話会社が同じ場合にフラグで知らせるもの、等々。
 CAFCは、特許の対象に該当するか否かの問題はクレームの形式(発明が装置だろうが方法だろうが)に関係ないことを宣言した。従来から一部ではいわれてきたものの、多くの判例では結果として物のクレーム=OK、方法クレーム=不可とされるケース(シュレーダー事件、グラムズ事件)が多かっただけに、この判示は重要な確認の意味を持つ。また、「物理的な」適用が存在することを要求していたフリーマン・ウォルター・エイベリーテストは、物・方法いずれに対しても適用できる余地が(ほとんど)ないと明言。もうこのテストはお役ご免でしょうね。
 なお従前のシュレーダー事件では、入札方法のクレームが単なるデータの集合体と数学的アルゴリズムであるとして無効とされていたが、この事件では結果物の有用性を評価していないとして、本件の参考とならないとCAFCは述べている。現在の基準からするとシュレーダー事件の判断は異なっている(誤り?)と暗示しているかのようである。
 
AT&T Corp. v. Excel Communications, Inc., 172 F.3d 1352, 50 USPQ2d 1447 (Fed. Cir. 1999).
http://www.ipo.org/AT&TvExcel.htm
http://laws.findlaw.com/Fed/981338.html
State Street Bank & Trust Co. v. Signature Financial Group, Inc., 149 F.3d 1368, 47 USPQ2d 1596 (Fed. Cir. 1998).
http://www.ipo.org/97-1327.htm
In re Schrader, 30 USPQ2d 1455 (Fed. Cir. 1994).
・IPO Daily News
・"Process Claims That 'Apply' Algorithm For Useful Result Satisfy Section 101.", BNA's Patent, Trademark and Copyright Journal, Volume 57, Number 1422 (April 22, 1999).
(※PTCJは毎週木曜日発行。ネットから購読するには、登録必要。結構かかる)
http://pubs.bna.com/ip/BNA/ptc.nsf/id/a0a1u4p5n5_
 
 
1999/04/11
 
1. 最近の特許発明−ニューヨークタイムスから
・帯状疱疹予防ワクチン(A Vaccine That May Prevent Shingles)
 水痘(chicken pox)は幼児期の病であるが、成人後には水痘から生じる帯状疱疹ウィルス(varicella-zoster virus)により痛みを伴う帯状疱疹を煩う。従来のワクチンは活性ウィルス(live virus)を使用しているため、これが潜伏して後に再発を引き起こすおそれがあった。Abbas Vafai博士は、グリコプロテイン(glycoprotein、糖蛋白質)を使用して再発を防止できるワクチンを開発。米国特許第5,824,319号。
・その他、容器の中身を最後まで使い切る方法(米国特許第5,829,607号)、
 ミニチュア国旗を沿道で振っているときに先端が目に当たっても安全なように、先端に柔軟性を持たせた旗の軸(5,862,773号)、
 工場から排気する高圧の蒸気を暖房などに再利用するシステム(5,865,369号)
 
出典:TERESA RIORDAN, "A Vaccine That May Prevent Shingles", New York Times (April 12, 1999)
http://www.nytimes.com/yr/mo/day/news/financial/patents-column.html
 
 
2. ソニーはパソコン用プレイステーション・ソフトを阻止できるか?
 プレイステーション用のソフトをパソコン上でも楽しめるようにしたソフト、いわゆるエミュレータの販売を、ソニーは阻止しようと躍起になっている。
 まず、コネクティックス社(Connectix)が、Macintosh上で動作する「Connectix Virtual Game Station」を開発した(通称コネステ)。この製品の発売の際、日本のソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)と、その米国法人であるSony Computer Entertainment America(SCEA)の2社は、一方的緊急差止命令(temporary restraining order、いわゆる仮処分)を、サンフランシスコに位置するカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に請求したが、棄却された。
 SCEA側は、当該請求に先立ちコネクティックス社に対して損害賠償等を求める訴訟も起こしている。
 一方、ブリーム社(Bleem LLC)はウィンドウズ上で動作するエミュレータ「Bleem!」を開発した。このソフトについても、ソニー側は1999年4月2日、同様の内容で訴訟を起こした。(Mac版では、SCEとSCEAの2社共同で提訴したが、Win版ではSCEA単独で提訴している。)
 同社はこのソフトを24.95ドルで予約注文を受け付けており、1999年4月8日に出荷する予定だった。この製品出荷前に、SCEAは4月5日に上記連邦地方裁判所に対し、仮差止命令を出すよう要請した。
 しかし、同地裁は4月9日、請求を棄却する判断を下した。ブリーム社はこれを受けて製品の出荷を開始した模様。
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1999/04/20追加
 コネステは、その後仮処分が認められた。1999/04/22日経ビズテクその他より。
 サンフランシスコのカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所は米国時間4月20日、コネクティックス社に対して同社のプレステエミュレータ「コネクティックス・バーチャル・ゲーム・ステーション(Connectix Virtual Game Station (CVGS))」の出荷を止めるよう仮差し止め命令(preliminary injunction)を出した。ソニー・コンピュータエンタテインメント側の要求が認められたもので、裁判所は特許権、商標権侵害を認定した模様。コネクティックス社はこの判断に従い、一時的に出荷を停止した。
 この仮差し止め命令は、既に出荷した製品には適応されない。このため、各地の小売店では、在庫のある限り販売は続けられる。コネクティックス社は、ユーザーサポートを継続するという。
 コネクティックス社のロイ・マクドナルド社長(Roy McDonald)は、「今回の判断は、長い裁判の過程の最初のステージでしかない。上訴し再審されれば、必ずや出荷を再開できると確信している」とコメント。また同社は、今回の裁判所の判断で、今後の新製品(マック版の新版や将来のウィンドウズ版)の開発に影響が出ることはないと明言している。
 この裁判は、ソフトウェア・エミュレーターの扱いに関する判例となるかも。裁判所はさらに、コネクティックス社はソフトウェア・エミュレーターを開発するためにプレイステーションのBIOS、つまり、システムの基本的な命令セットをコピーしたと判定した。コネクティックス社には、ソニーのBIOSに基づいた製品の開発を中止し、そこから派生した全ての製品などを法廷に提出するよう命令が下された。
 コネクティックス社は、同社が行なったのはプレイステーションBIOSの合法的なリバース・エンジニアリング(←これ自体は違法でない)だとして、控訴の意向を明らかにしている。
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1999年4月22日付毎日デイリーメール・コンピューティングより
 ...連邦地裁は、併せてプレステのBIOSに基づく製品の開発を中止し、BIOSの複製および、そこから派生した製作物を全て法廷に提出するようコネクティクスに命じた。SCE側は、VGSが知的財産権を侵害しているとして、販売差し止めと損害賠償を求めて提訴している。今回の措置は同訴訟で最終的な判断が下されるまでの仮命令。
 SCEAは米国時間22日、今回の仮命令に対するコメントを発表。「連邦地裁が、VGSの開発でコネクティクスがソニーのBIOSをコピーし、ソニーの知的所有権および商標権を侵害したことを認定したことに基づくもの」としている。
 
「ゲーム・エミュレーター裁判、今回はソニーに軍配」
 ...訴訟においてソニーは、偽造ゲームの販売および配布を防止する目的でプレイステーションに搭載された海賊版防止機能を、VGSは巧みに回避しているとしている。理論上、VGSは偽造あるいはコピーされたゲームタイトルを再生しやすい仕組みとなっている。さらには、ソニーではMacintosh上でプレイステーション用タイトルを動作させた場合のゲーム品質についても問題があるとしている。
 コネクティクスは以前に、VGSではすべてのタイトルを完全に再生できるわけではないことを認めているが、Macintoshでプレイステーションのタイトルを利用できることで、ソニーはプレイステーション用タイトルの売上げを伸ばすことができる、と付け加えている。
 コネクティックスでは、プレイステーションのBIOSを解析してVGSを開発したが、ソニーが採用しているコードを直接搭載してはいない、とマクドナルド。「訴訟の論点は、公正な利用をどう定義するか、ということになる。これは著作権法でもかなり微妙な部分」と、パソコンメーカーの米コンパックコンピュータが米IBM互換機を製造した前例にも触れながら説明した。
「我々側が勝訴するという前例があるし、商売としての関心だけで動いているのではない」とマクドナルド。「今回の裁定は、消費者の選択の幅を制限するものだ」
 
情報元
・松尾 康徳, "プレステエミュレーター,Win版の緊急差し止め請求も棄却"
・橋本 敏彦, "SCE米法人,第2のプレステエミュレータも提訴", NIKKEI ELECTRONICS WIRE SERVICE NO.441, 日経エレクトロニクス編集日経BP社 (1999年4月13日)
 
橋本敏彦「プレステエミュレータに仮差し止め命令」日経biztechニュース(1999年4月22日)
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/show/leaf?CID=onair/biztech/pc/56733
・Wendy J. Mattson, "Connectixのプレステエミュレータに出荷差し止め裁定", MacWEEK/USA, ZD (1999/04/22)
http://www.zdnet.co.jp/macweek/9904/22/n_vgs.html
・Leander Kahney,合原弘子,岩坂 彰「プレステ・エミュレーター販売差し止め」Wired News (1999年4月22日)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/2348.html
・「プレステ・エミュレーターに出荷差し止め仮命令」No.455 Mainichi Daily Mail Computing(1999年4月23日)
・Stephanie Miles,秋田克彦「ゲーム・エミュレーター裁判、今回はソニーに軍配」CNET Briefs Tech News(1999年4月22日)
http://cnet.sphere.ne.jp/News/1999/Item/990423-1.html
・原毅彦,「SCEIがVGS出荷差し止め裁定にコメント。今後も正当性を主張」ZDNet/JAPAN(1999年4月26日)
http://www.zdnet.co.jp/gamespot/news/9904/26/news01.html
・SCEアメリカ
http://www.playstation.com/index.html
・米コネクティクス社
http://www.virtualgamestation.com/CVGSpr6.html
・「米国コネクティクス社に対する訴訟について」ソニー・コンピュータ・エンターテイメントの公式発表
http://www.scei.co.jp/dearscei/pr/990423.html
・鹿毛正之「プレステ・エミュレーターは合法---裁判所がソニーの訴えを却下」ASCII The Internet News Survice(1999年2月5日)
http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/990205/topi04.html
 上記ASCII24による、知的財産権に詳しい識者から得たというコメント。
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「裁判所の判断は、順当なものと思われる。今回のようなケースの場合、知的財産権の侵害を構成する要素は2つ考えられる」
「ひとつは、エミュレーターの開発者がソニーの作ったソースコードを盗用した場合。だが、今回のケースではその証明ができなかったと思われる」
「もうひとつは、Connectix社がユーザーに対しゲームソフト(CD-ROM)を無断複製するように仕向けた場合がある。しかし、Virtual Game Stationではオリジナルの媒体がそのまま利用できるので、無断複製は起こり得ない」
「それでもなお、ソニー側が『Connectixがユーザーに対し、ソフト使用許諾契約を違反するように促した』と言いたてる可能性もあり得る。だが、そう主張するためにはソニーがユーザーに対し、ゲームソフトの購入時に"ソニー純正のゲーム機器だけでプレーすることを許諾されたのであって、それ以外の機器によるプレーは契約違反である"ことを明確に認識させるようにしなければならない」
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 上記の契約の件は、おそらく(多くのビジネスソフトと同様)シュリンクラップ・ライセンスによってソニー側は達成しようとしているのでは。シュリンクラップ・ライセンスの実効性は議論のあるところだが。
 
 
1999/04/09
 
1. 日本の「不正アクセス規制法案」の法律案原文
 毎日新聞社・インターネット事件取材班「インターネット事件を追う」より
「規制等に関する法案全文」)
http://www.mainichi.co.jp/hensyuu/jiken/
 
2. コロンビア映画、著作権訴訟で3170万ドルの裁定
 3つのテレビ局が不法にTV番組を放送したかどにより訴えられていた事件で、ロサンゼルスの連邦地裁で陪審による損害賠償の裁定があり、記録的な賠償額が出されている。
 この事件は、現在ソニー傘下にあるコロンビア映画のテレビ部門であるコロンビア・ピクチャーズ・テレビジョン(Columbia Pictures Television)およびコロンビア・トライスター・テレビジョン・ディストリビューション(Columbia Tristar Television Distribution are units of Sony Pictures Entertainment)が、フロリダ州ジャクソンビルのWNFT、アラバマ州バーミンガムのWABM、フロリダ州フォート・ピアースのWTVXの3つのTV局は同社の持つ4つのシリーズ物コメディ"Who's the Boss", "Hart to Hart(探偵ハート&ハート)", "T.J. Hooker'', "Silver Spoons''を計440エピソード、正式な契約を得ないまま放送したとしている。
 この事件、当初は陪審でなく裁判官が、著作権法違反の損害賠償額を880万ドル、もしくは各エピソードにつき2万ドル×440本として支払いを命じたが、被告側はこれを不服として最高裁に上告した。そして著作権侵害が確定し、損害額の算出を陪審に行うよう差し戻されていたもの。
 
出典
・"Columbia Pictures wins $31.7 mln in copyright suit", Reuters (LOS ANGELES) (April 9, 1999).
http://legalnews.findlaw.com/scripts/legalnews.pl?nofr=y&L=Intellectual_Property&R=/news/19990409/bcentertainmentcolumbia.html
・1999年4月12日付 IPO DAILY NEWS
・テスコダイレクト知財ニュース
Columbia Pictures Television v. C. Elvin Feltner, Jr.
 
 
1999/04/07
 
1. 「三国志3」訴訟でコーエーが上告方針
 MainichiDailyMail Computing, 1999-04-07, No.443より
 ゲームのガイドブックに添付したプログラムが著作権を侵害したとして、ゲームメーカー大手のコーエー(横浜市)が、ガイドブックの発行元の技術評論社を訴えた「三国志3訴訟」の判決(東京高裁、3月18日)で、コーエーは控訴棄却の判決を不服として最高裁に上告する方針を決めた。同訴訟は、パソコン向けゲームソフト「三国志3」の発売元のコーエーが、ガイドブックに添付されたプログラムがコーエーの著作人格権と著作財産権を侵害するとして、プログラム製造頒布の差し止めと損害賠償などを求めていた。
 技術評論社のプログラムは、「三国志3」に登場するキャラクターの能力値を変更して遊べる機能を持つ。コーエーは技術評論社のプログラムは著作物を改変するものとして、93年に東京地裁に提訴したが敗訴、95年に東京高裁に控訴して争っていた。18日の高裁判決では改変の事実はないとして技術評論社側の主張をほぼ認め、コーエーが再び敗訴していた。コーエーは上告期限が迫っていることもあり上告するかどうかの態度を迫られていたが、法廷で争うことを選択した形。
 
出典:MainichiDailyMail Computing, 1999-04-07, No.443
・コーエー
http://www.koei.co.jp/home.htm
 
 
1999/04/04
 
1. 米特許庁、”個人発明者のご機嫌取り”に政策転換
 特許庁は、新たに「個人発明家窓口」を設けると発表した。(Office of Independent Inventor Program)
 レーマン前長官は特許ハーモを推進した関係上、個人発明家から激しく非難されたが、ディッキンソン現長官は懐柔策を模索しているようである。
 
2. 痛みをわかってくれる包帯
 毎週月曜はニューヨークタイムズのビジネス欄に特許関係の記事が載るので、これをチェックするようにしている。まともな記事も勿論あるけど、結構笑える発明品をまじめに紹介していたりして、ギャップが楽しい。
 この日の記事は上記の他、「痛みを感じる包帯」が特許権を取得したとあった。その後日本語版ワイアードにも同じ記事がのってたので...
 
関連情報
・SABRA CHARTRAND, "Federal Agency Reaches Out to Independent Investors", New York Times (April 5, 1999)
http://www.nytimes.com/yr/mo/day/news/financial/patents.html
・「痛みをわかってくれるハイテク包帯」ワイアード・ニュース・レポート[日本語版:寺下朋子/合原亮一](1999年4月2日)
http://www.hotwired.co.jp/news/news/2259.html
 
 
1999/04/02
 
1. レッドスキンズ、商標無効
 ワシントンDCの名物アメフトチーム(ほとんど阪神タイガース状態)、「ワシントン・レッドスキンズ」の名称は市民には親しまれているものの、語源がインディアンを意味する差別用語であるため常に議論の的となってきた。
 そして、ついに1999年4月1日、米特許庁商標審判部(Trademark Trial and Appeal Board)は、ネイティブ・アメリカンからの異議申立を受け、同商標がネイティブ・アメリカンを侮辱するものであるとして7件の商標の登録取消を命じた。(でもロゴは残ってる!あれを取り消されると、グッズの売り上げに大きく響くでしょう...)商標法第2条(a)違反らしい。
 レッドスキンズ側はCAFCに控訴する模様。
 
関連情報
・1999年4月5日付IPO Daily News
・Brooke A. Masters, "Redskins Lose Right to Trademark Protection", Washington Post (Saturday, April 3, 1999; Page A01)
http://search.washingtonpost.com/wp-srv/WPlate/1999-04/03/093l-040399-idx.html
・VICTORIA SLIND-FLOR, "Redskins ruling could hurt others - Any registration deemed a slur could also face cancellation." The National Law Journal, p. B01 (April 19, 1999).
http://www.ljx.com/cgi-bin/f_cat?prod/ljextra/data/texts/1999_0411_056.html
・特許庁商標審判控訴部の審決
http://www.uspto.gov/web/offices/com/sol/foia/ttab/2aissues/1999/1999.htm
・審決(American Indians. Harjo v. Pro-Football Inc., No. 21069 (2a Decisions 19999))PDF形式[350kB]
http://www.uspto.gov/web/offices/com/sol/foia/ttab/2aissues/1999/21069.pdf
・LAWRENCE J. SISKIND, "Astroturf Warfare - A ruling cancelling a football team's trademark gives fringe groups a 'heckler's veto'", IP Magazine (May 13, 1999)(ロゴも載ってる)
http://www.ipmag.com/dailies/1999/may/990512.html
・Brian D. Anderson, Esq., "THE REDSKINS CASE: TRADEMARK LAW & POST MODERNISM" IP News at web site by oblon, et al. (May 1999).
http://www.oblon.com/Ip/redskinsarticle.html
 
 
2. Eデータ社はロイヤリティ取るまで挫けない
 Eデータ社は、同社が所有するインターネット前の技術に関する特許をたてに、同種の技術を使用する企業から実施料を徴収しようとしている。これがこじれて裁判になったわけだが、ニューヨーク地裁では同社は負けた。しかし同社は直ちにCAFCに控訴した模様。小売業者の反応を伝えるCNETの記事が可笑しい。「Back Off(追い出し)」だって。
 
関連情報
・Brenda Sandburg, "E-Data Backs Off Patent Claims", The Recorder/Cal Law (April 2, 1999)
http://www.lawnewsnet.com/stories/A438-1999Apr1.html
http://www.ipmag.com/dailies/1999/apr/990402.html
・Dan Goodin, "Retailers Cheer End Of E-Data Challenge", CNET News.com (April 2, 1999, 2:45 p.m. PT)
http://www.news.com/News/Item/0,4,34592,00.html?st.ne.180.head
・Interactive Gift Express v. Compuserve, 95-6871
E-Data v. MicroPatent, 96-00523
 
 
1999/04/02
 
1. デジタルビデオに1%の「賦課金料率」上乗せ
 民生用デジタル録画機器や媒体(DVやD-VHSのビデオとテープ)の価格に上乗せされる「賦課金」の料率が1%に決まったと、日経エレクトロニクスのニュースで報じられている。
 記事によると、賦課金の徴収・分配を担当する”私的録画補償金管理協会”が、1999年3月31日に文化庁に対して認可申請し、「4月中にも認可の予定」(文化庁)とのこと。
 これが施行された場合、各メーカはデジタル録画機器や録画媒体の価格に、1%の「賦課金」を上乗せして販売することになる。賦課金は、私的録画補償金管理協会によって各メーカから一括して徴収され、各権利者団体に分配される。賦課金徴収の対象として政令指定するデジタル録画機器・媒体は、「DV方式のVTRとD-VHS方式のVTR、それぞれに対応する媒体となる見込み」(文化庁)とのこと。1999年6月1日からの施行を目指すという。
 
出典:
・芳尾 太郎,「ディジタル録画の「賦課金料率」は機器,媒体とも1% 対象はDV方式VTRと,D-VHS方式VTRに」,日経エレクトロニクス (日経BP社 1999年4月2日)
・”ディジタル録画の「賦課金制度」がほぼ固まる”,日経エレクトロニクス (日経BP社 1999年4月1日)
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/show/leaf?CID=onair/biztech/prom/54630
 
 
1999/04/01
 
1. 特許専門法廷、計3つに
 東京地方裁判所で、知的財産権の専門部署が増設された模様。専門の裁判官も12名に。
 
2. 最新版法令集発売中
 BNA社による知財関連法令集"Patent Trademark and Copyright laws"1999年版が発売。1999年3月1日時点での特許法(35 U.S.C.)、商標法(15 U.S.C.)、著作権法(17 U.S.C.)、その他地財関係の連邦法を掲載。実務家必携。定価85ドル。
 
主な改正点:
・デジタル・ミレニアム著作権法(The Digital Millennium Copyright Act)
 WIPO著作権・演奏・レコード条約の施行に伴う改正
 オンライン・サービス・プロバイダーの責任の所在
 船体デザイン保護のため13章を新設
・商標法条約(TLT)施行法(The Trademark Law Treaty Implementation)
 TLT施行に必要な法改正
 商標登録の拒絶理由や、異議申立不可能な登録の対象となった標章に対する削除の申請および抗弁の事由として「機能性」を追加
・ソニー・ボノ著作権期間延長法(The Sonny Bono Copyright Term Extension Act)
 著作権の存続期間を著作者の死後70年まで延長
・1998年音楽ライセンス法の公平化(The Fairness in Music Licensing Act of 1998)
 特定団体に関する著作権免除の範囲を拡大
・特許庁再編法(1999年会計年度)(The U.S. Patent and Trademark Office Reauthorization Act, FY 1999)
 特許料金の値下げ
・1998年植物特許改正法(The Plant Patent Amendments Act of 1998)
 特許法163条の改正→特許に係る植物から生産された部分の輸入に関する権利強化
 
 購入は、NGBあたりで扱っているはず。1998年版は1万3500円でした。
 あるいは、話題のインターネット書店「アマゾン・ドット・コム」を使ってみるのはいかがでしょう?ワシントンDCでも、店頭で売っている店はWashington Lawくらいしか知らない。どうせ注文するなら、インターネットの方が日本人には楽でしょう。日本からでも買えるようだし。1999年6月に検索してみると、送料込みでアメリカ国内88ドル95セント、日本では10459.25円でした。
 また、「Add All」というホームページでは、アメリカの39の本販売サイトのサーチエンジンを使って、一番安いのがどこかを教えてくれる。値段はともかく、便利なのは一度でほとんどの本屋の情報を検索してくれる点。洋書の参考書(ケースブック等)を探すのに重宝する。
 
・Samuels, Jeffrey M., ed. "Patent Trademark and Copyright Laws.", 1999 ed. Washington: BNA Books, 1999.
http://www.bna.com/bnabooks/details/d_ptcl.htm
・米国知的財産関連法・法令集1998年度版(NGBを介して)
http://www.ngb.co.jp/joho/USIP11.htm#01
・Washington Law and Professional Books
http://www.washingtonlawbooks.com/
・amazon.com日本語版
http://www.amazon.com/jp/
・Law Of Intellectual Property
http://www.amazon.com/exec/obidos/Subject=Law%20Of%20Intellectual%20Property/002-8273859-5770847
・Patent, Trademark, and Copyright Laws 1998 (Serial) by Jeffrey M. Samuels (Editor)
http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/1570181136/o/qid=924209950/sr=2-2/002-8273859-5770847
・Add All :Book Searching and Price Comparison
http://www.addall.com/
 
 
3. 今年の米特許法改正は?
 毎年出ては潰れる米特許法改正法案。今年も先行き暗そうである。
 下院司法委員会の議長ハワード・コーブル共和党議員(Howard Coble)は、法案反対派のダナ・ローラバッカー(Dana Rohrabacher、ご存じ、レメルソンの傀儡)、トム・キャンベル議員(Tom Campbell、大学や研究期間を代弁)相手に奮闘。
 コーブル議長は、アメリカ発明者保護法(American Inventors' Protection Act)を提案しているが、この案でも既に早期公開制度は外国で出願されたものに限っている。どうしようもない。
 
出典および関連情報
・Brenda Sandburg, "Accord Nearing on Patent Bill - Measure would make changes to PTO system", The Recorder/Cal Law (April 1, 1999)
http://www.lawnewsnet.com/stories/A410-1999Mar31.html
http://www.ipmag.com/dailies/1999/apr/990401b.html
・1999年4月12日付 IPO DAILY NEWS
・American Inventors Protection Act of 1999(BNA社のホームページで、法案が閲覧できる。PDFファイルで96ページ!)
http://www.bna.com/ptcj/
 
 
1999/03/31
 
1. 日本特許庁のホームページ、刷新
 トップページからして、わけのわからんオヤジがいっぱい並んでいてちょっと不気味であったはずの特許庁ホームページが、全面刷新とも言えるくらい大きく変わってる。子供向けのオーストラリア特許庁サイト「IPPY」を参考にしたのでは、と思えるくらい表現がマイルドになった。
 やはり、ウリは検索機能の拡充。従来の「特許・商標情報提供サービス」が大幅に改善されて、「特許電子図書館」となった。ご自分の目でご確認あれ。
 
・特許庁ホームページ
http://www.jpo-miti.go.jp/indexj.htm
・Ippy Online-The Australian Patent Office
http://www.ippyonline.gov.au/
 
 
1999/03/30
 
1. ソニー、007映画を諦める
 長年続いてきたジェームズ・ボンドを巡るソニーとMGMとの争いが、ついに和解
 007映画の新作を作成しようとしていたソニー・ピクチャーズ・エンターテイメントと、本家MGM(元々ボンド映画は、イギリスのイオン・プロによるものだが、世界配給の関係上、アメリカ配給権を持つユナイト(United Artists(UA))→MGM/UA(UAが「天国の門」の大失敗による経営不振でMGMと合併)→現MGMが管理していた。)とが映画化権について争ってきたもの。
 今回の和解によりソニー側は訴訟和解金として500万ドルをMGMに支払う。次にMGMは、旧作「カジノ・ロワイヤル」に関する権利として1000万ドルをソニーに支払う。
 カジノ・ロワイヤルはコロンビア映画(現ソニー映画)が制作したアメリカ映画であった。原作の雰囲気を木っ端微塵に破壊したサイケな怪作であり、原作に沿ったシリアスな再映画化を求めるファンも少なからずいる。(←ここでは全く関係ない話ですな。)
 ボンド映画の映画化権は、当初からカジノロワイヤルを除くすべてをイオンプロ(現Danjaq)が所有していた。なぜカジノロワイヤルのみ権利がないのか、詳しいことは知らないが、おそらくボンド映画が制作される前にアメリカのTVスペシャルとして同作が作成されたので、その際に一緒に権利も買われたのだろう(←推測)
 一方、随分前にケビン・マクローリーが「サンダーボール作戦」の権利を主張し、裁判で勝った。これはボンドシリーズの原作者、イアン・フレミングがボンドを世に送り出す前、フレミングとマクローリーが共同で作成したあらすじ(シノプシス)を、フレミングがサンダーボールで流用したため起こった問題。しかし、権利を得たマクローリーも、映画化に当たってはイオンプロと組むのが得策と考えたため、映画はイオンプロによる正規のシリーズとして作成された。(シリーズを通じてプロデュースはアルバート・ブロッコリが担当しているが、この作品のみ、マクローリーがプロデューサーで、ブロッコリは"presents"とクレジットされている。)
 その後、サンダーボール作戦をリメイクした(ショーンコネリーのボンド復帰作として話題をまいた)「ネバーセイ・セバーアゲイン」が作成された折りには、マクローリーはイオンプロと組まず、アメリカ映画として、つまり正規のシリーズとは別の作品として仕上げた。
 そして、マクローリーがソニーにボンド作品の映画化権を売ったことから、今回の争いが始まったのである。マクローリーがサンダーボール以外のボンド作品に権利を持っているかどうかは?であり、こちらの訴訟は係属中。
 
関連情報
・STERNGOLD, JAMES. "Sony Pictures, in Accord with MGM, Drops Plan to Produce New James Bond Movies", NY Times (March 30, 1999)
・Di Mari Ricker, "Bond vs. Bond - How MGM walked off with a license to film Hollywood's hottest spy", California Law Week (April 5, 1999)
http://www.lawnewsnet.com/stories/A465-1999Apr2.html
 
 
1999/03/29
 
1. またしても、厄介な特許が...
 「こんな特許が出ました!競業他社のみなさん、ライセンス料頂きますのでよろしく」−特に、インターネット関連でこういった記事を目にすることが多い。その多くは、既に業界内で周知となっている古い技術であり、今更そんな技術にお金を払ってられない、でもこれ以外の方法に変更するとなるとかなり大変、、、そんな特許の最たる例が所謂「サブマリンパテント」であり、故ジェローム・レメルソン氏はさしずめその筆頭といったところか。
 前置きが長くなったが、本日付のニューヨークタイムスに「Personalized Media Communications LLC」社がついに7番目の特許を取得したとの記事が載っていた。何で7番目なのかというと、6個の特許は既に無効になったから。(例えばIPサークルのホームページ参照)最近、CAFCがITCによる6番目の特許無効の判断を支持したので、ふーん、と思っていたら、この記事である。
 この特許、記事によれば非常に広範で、基本的なタイプのWebTVを含むものであるらしい。さらにその出願日は1981年というから始末が悪い。弁護士によれば、1981年の出願を親出願とする継続出願を300件以上、1995年6月に出願したらしい。ご想像の通り、特許の存続期間を出願日から20年に改めた改正法が施行される一日前である。特許法154条(c)の経過規定によれば、1995年6月8日の時点で存続している特許及びそれ以前に出願されている特許は、出願日から20年もしくは従来の特許日から17年のいずれかが適用される。(ただし、施行日以降に継続出願すれば、出願日から17年の縛りが適用されることになる。)
 もっとも、既にCAFCで無効にされたクレームが存在しているわけだから、これを根拠に特許の有効性を攻撃できると、ある弁護士は強気にコメントしているが。
 ちなみに、昨年この会社の所有する米特許5,335,277号につき、「digital detector for . . .」がミーンズ・プラス・ファンクション用語にならないという重要な判決があった。
 
出典および関連情報
・RIORDAN, TERESA "Patents: Company Wins 7th Patent for Specialized TV", NY Times (March 29, 1999)
http://www.nytimes.com/library/tech/99/03/biztech/articles/29pate.html
・米国特許第5,887,243号
・IPサークル
http://www.ipcircle.com/
・Personalized Media Communications LLC
http://www.personalizedmedia.com
Personalized Media Communications, L.L.C. v. International Trade Commission, No. 98-1160 (Fed. Cir. 1998).
http://www.ipo.org/PersonMEDvInt'sTradeComm..html
 
 
2. 2000年問題の損害賠償訴訟(Year 2000 damage suits)で限度額を設定−毎日新聞社のデイリーメールより。
 米上院司法委員会は1999年3月25日、2000年問題に起因する損害賠償訴訟における賠償金の支払額を制限する法案を10対7で可決し、本会議に送った。
 法案の内容は、
(1)懲罰的賠償金の上限を、実際の損失の3倍または25万ドルとする
(2)提訴前に被告企業側には90日間の猶予期間が与えられ、この期間内に損害の修復を進めることが可能
 米国では、訴訟の乱発によって請求総額が1兆ドルに達するとの試算もあり、コンピューター企業などが中心になって法案成立を強く働きかけているとのこと。民主党内には、本法案が消費者の訴える権利を制限するものであるとして消極的な見方も強いため、今後の調整には時間がかかる可能性もあり。
 一方で、州レベルにおいても訴訟を制限する動きが活発である。7つの州は、既に2000年問題で州に対して損害賠償を求める訴訟を禁止している。同様の法案は、今年になって30の州議会に提出されている。さらに幾つかの州では、民間同士の訴訟(private lawsuits)も制限する法案を通過させている。例えば、コロラド州で1999年4月6日に署名された法案によると、企業は2000年問題の危険性について言及しようと努めることによって、後の訴訟において強力な抗弁とできる。さらにこの場合は、救済としての懲罰的損害賠償(punitive damages)を禁止されるという。
 
出典および関連資料
・「米上院司法委が賠償金制限の法案可決」MainichiDailyMail Computing、毎日新聞社(1999/3/29)
・BARNABY J. FEDER, "Lawsuits Related to Y2K Problem Start Trickling Into the Courts", New York Times (April 12, 1999).
 
 
1999/03/24(3/30改訂)
 
1. ザーコウ事件、最高裁で口頭弁論−特許庁、旗色悪し?
 ディッキンソン特許庁長官対ザーコウ事件の米連邦最高裁における口頭弁論(oral argument)が本日開かれた。
 1993年から、前特許庁長官ブルース・レーマン氏が強力にキャンペーンを押し進めていた「審決取消訴訟における審理基準見直し」は、同氏の働きかけが功を奏したのか、CAFCで一旦負けた後も、再度CAFCで大法廷により再審理され、結局負けたにもかかわらず最高裁で上告を受理された。これだけでもかなり驚きと思うが、やはり大勢は特許庁の見解に疑問を投げかける者が多い。
 最高裁でも、原告特許庁側の意見陳述に対し最高裁判事は容赦なく質問、疑問を浴びせかける。「どこに問題がある?」
 特許庁の見解では、特許庁の審決を控訴審で審理する際、特許庁の行った事実認定は「実質的証拠により支持されている」限り、覆されないという。
 従来、および現状では、「明白な誤り」の基準で審理されている。要するに、審査官の拒絶査定、およびその審決において、特許性なしという判断の基礎となる事実認定は、「『明らかに間違い』で限り控訴審で覆すことはできない」ことになっている。これだけでもハードルは相当高い。現にCAFCで審決がひっくり返る確立は9%以下らしい。
 しかし、特許庁はこれだけでは足りず、どんな証拠でもいいから事実を裏付けるものがあれば、その事実認定は覆らない、といっている。これでは覆すことが一層困難になる。極端にいえば、どうも間違っているとしか思えないようなことでも、それを裏付ける証拠がわずかでもある限りは覆らないということになる。(どちらの意見が正しいかということはこの際問題でない。例えば反対の見解とこれを裏付ける証拠があって、そちらの方がもっともらしく思える場合でも、問題となっている事実を裏付ける証拠がわずかでもある限りは覆らない。)
 もしこの主張が認められれば、ただでさえ難しい拒絶査定に対する不服申立が、さらに難しくなることになる。現状でもアメリカでは日本と異なり、審判に行っても拒絶査定が棄却されることはほとんどない。この上高裁に訴えても、理論上勝つ見込みが激減するとなると、審査官がいい加減な拒絶理由を発した場合でも、反論する道が事実上閉ざされることになる。
 昨今、特許庁での審査の質が疑問視されて久しいが(特に最近活発)、これに対する特許庁の答えが、審査の質を上げるよりも、いちゃもんをつけにくくすることとは情けない。
 一方で、審判→審決取消訴訟のルートが閉ざされて困るのは出願人だけでない。これでは飯の種が減る、との危惧を抱いた弁護士たちも、反対運動に躍起である。今回の最高裁審理に関して、アミカス・ブリーフ(amicus curiae、法廷助言者、早い話、事件の当事者以外による援護射撃的意見書)の多いこと、多いこと。特許庁の主張を激しく非難している。逆に特許庁側を支持するものはほとんどいない。
 特許庁の理屈を一応紹介すると、行政手続法(Administrative Prosedure Act (APA), 5 USC)に基づいている。この法律は、従来手続がいい加減であった行政処分の質を改善すべく、いうなれば行政手続の最低基準を定めたものである。「arbitorary, capricious(恣意的且つ気まぐれ、要するに何の根拠もなくこうだ!と決めつけることはダメ)」や「実質的証拠(substantial evidence)」を基準と定めている。本当に最低限の基準である。しかし庁側の言い分では、行政機関の内この基準を採用していないのは特許庁くらいのものらしい。
 対して、現行のCAFCでの基準は上記の通り「明白な誤り」であり、これらよりも厳しく審理するものである。CAFCの採用している基準は、法律として定められていない。
 CAFCで大法廷により下された判決では、APAの立法経緯を調べている。APAの規定を見ると、552条は行政機関が一般公衆に情報を提供することを定めており、同553条は規則制定について所定の手順を踏まなければならないこと、同554条は正式な行政決定の手順、同556条は公聴会の手順を定めている。さらに559条は、「法により、もしくはその他の法により認められた追加の要件を、制限もしくは廃止する」ことを意図するものではないと定めている。
 今日の最高裁では、「追加の基準」には法律のみならず実務として採用されてきたルールも含まれる、と述べられた。現に何十年もの間、CAFCおよびその前身たるCCPAで採用された基準を、よりいい加減な基準に置き換える必然性、法的根拠がどこにある、というのである。そもそもAPAは行政処分の改善のための法律であり、既存の法則を変更(改悪)するために制定されたものでないはず。
 その他、オープンな記録に基づき判断される一般の決定に対し、特許庁での審理は基本的にクローズな記録に基づいているから、判断基準も異なる等と議論されていた。
 個人的に興味を引いたのは、不服申立の別ルートについて。特許庁の審決に対し、出願人はCAFCに直接控訴しても良いし、また地裁、すなわちワシントンDC連邦地方裁判所に一旦提訴しても良い。こちらの地裁ルートを利用することは実務上あまりない。なぜなら事実審(trial)なのでお金と時間がかかるからで、その後またCAFCに控訴することを考えると最初からCAFCに提訴した方が効率的と思われる。ところで、地裁では事実審なので、新たな証拠を出願人、特許庁双方とも提出できるのだが、これが裁判官審理(bench trial)で行われた場合、その事実認定はCAFCでは「明白な誤り」基準となる。この点は、れっきとした事実であるが、ならば特許庁で出された証拠記録を「実質的証拠」で審理して、地裁で提出された証拠を「明白なる誤り」で審理するというのは、どういうことか?取り扱いを区別する必然性は?金とヒマのある者だけが有利な審理基準を享受できるというのか?
 特許庁側の弁論、あいまいなり。CAFCの判決そのまま支持の可能性高し?
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 その後、「ナショナル・ロー・ジャーナル」誌に最高裁での口頭弁論に関する短い論考が掲載された。
 曰く、「特許法の問題というよりも行政機関のポリシーの問題かもしれない」
 以下、簡単にまとめると、、、
 この問題は前特許庁長官のブルース・レーマン氏(現在はワシントンDCの国際知的所有権研究所(International Intellectual Property Institute)所長)が在任中に提起したものである。同氏は後任のディッキンソン現長官が事件を追行するよう支持しているが、ディッキンソン氏はこの問題にそれほど熱意を持っていないかも知れない。口頭弁論後のインタビューでも、「司法省は今回の上告を認めなければならず、行政手続法(APA)法体系の発展において非常に重要な事件と考えているようだ。」とだけ述べて話を逸らしていた。
 口頭弁論で特許庁側に立ったのは、ローレンス・G・ウォレス副司法長官(Deputy Solicitor General Lawrence G. Wallace)。クラレンス・トーマス判事を除き(※同判事は法廷で発言しないことで有名)、最高裁判事達は同氏に矢継ぎ早に質問を浴びせかけ、APAの意味合いに関する最高裁の関心の高さが伺い知れた。
 ルース・ベーダー・ギンスバーグ判事は、なぜ裁判所の下す判断よりも特許庁の判断に対し、より大くの敬意(deference)を払わねばならないかを問い(※特許庁の主張通りであれば、裁判所の判断よりも特許庁の判断の方が覆し難くなる→特許庁の判断の方が重いことになる)、連邦議会がCAFCを特許裁判所として「事務員にまで」専門家を配したことをウォレス氏に指摘した。同氏は、「だからといって行政機関という靴に足を踏み入れてもよいということにはならない」と応えた。(※行政機関も専門家なのだから、我々の領域に軽々しく土足で踏み込んで欲しくない、というニュアンスだろう。)
 一方、ザーコウ側の弁護は、ジョージ・メーソン大学財団教授アーネスト・ジェルホーン氏(Ernest Gellhorn, a George Mason University Foundation professor)が担当した。同氏は、APAで「明白な誤り」基準を使用することは、行政機関の決定を再審理するための「最低基準(floor)として定めらた」ものであり、CAFCが1990年代に他の基準を採用したケースは全く見い出せないと主張した。
 その他のコメントとして、元特許庁長官で現在オブロン事務所(Oblon, Spivak, McClelland, Maier & Neustadt P.C.)のパートナーを努めるジェラルド・J・モッシンホフ氏(Gerald J. Mossinghoff)は、「CAFCが既に特許庁の判断を尊重していることは明らかで、審決の支持率は75%〜90%である」と述べている。さらに、フィネガン事務所(Finnegan, Henderson, Farabow, Garrett & Dunner L.L.P.)のドナルド・R・ダナー氏(Donald R. Dunner)は、「審決支持率を見れば現在の制度は有効と思われるので、法廷は(本件での特許庁の主張に)反対するだろう」と述べている。
 
関連資料他(実際に傍聴された有志の方々から有用なご意見を頂戴しました)
Dickinson v. Zurko, 98-0377 (U.S. 1999)
In re Zurko, 142 F.3d 1447, 46 USPQ2d 1691 (Fed. Cir. Desided on May 4, 1998)(in banc)
・Petition for a writ of certiorari(特許庁が1998年9月3日に最高裁に提出した裁量上告の申請書。PDFファイルでダウンロード可能。73ページ)
http://www.uspto.gov/web/offices/com/sol/notices/zurko.pdf
・Respondent's Brief(特許庁に反対して、IPOが出したもの。RESPONDENTS' BRIEF IN OPPOSITION TO PETITION FOR A WRIT OF CERTIORARI)
http://www.ipo.org/zurko.htm
・Scheinfeld, Robert C.;Bagley, Parker H. "The Federal Circuit and Its Standard of Review", Baker & Botts LLP.
http://www.bakerbotts.com/practice/iptech/library/articles/fedcirc.html
・Sandburg, Brenda. "PTO's Due Deference -How closely should the courts review denials of patents?", The Recorder (March 22, 1999)
http://www.lawnewsnetwork.com/stories/mar/e032299ab.html
・Slind-Flor, Victoria. "Court Hears Key Patent Case -The issue: the proper standard of review for patent decisions.", The National Law Journal (March 29, 1999)
 
 
1999/03/
 
1. 1998年のアメリカ特許事務所ランキング
 「インテレクチュアル・プロパティ・トゥデイ誌」は、この分野ではかなりポピュラーな月刊誌で、毎回ユニークな統計を掲載している。最新号で毎年恒例の「特許発行件数でみる米国法律事務所ランキング」が発表されている。
 順位に大きな変化はなく、オブロン、シュクリュー、ピルズベリーといった大手が顔を並べている。
 注目すべきは、伸び率。昨年に比し、軒並み20〜30%アップしているから驚き。昨年の出願件数は前年比で30%以上増加したというから、ここでもアメリカ経済の好調ぶりが反映されているのだろう。
 
出典:「Intelectual Property Today」1999年3月号
なんと1位から290位まで出てる。
http://www.lawworks-iptoday.com/03-99/pg06.pdf
 
 
1999/03/15
 
1. 112条記載要件の審査ガイドライン案に対するそれぞれの思惑
 米特許庁が1998年6月に発表し、一般から意見を求めていた112条第1パラグラフの記載要件に関するガイドライン案に対する「一般からのコメント」が、PTOのホームページで公開されている。この中には、審査指針見直しのきっかけとなった事件(University of California v. Eli Lilly, 119 F.3d 1559, 43 USPQ2d 1398 (Fed. Cir. 1997)、および従前の
Fiers v. Revel, 984 F.2d 1164, 25 USPQ2d 1601 (Fed. Cir. 1993),
Amgen, Inc. v. Chugai Pharmaceutical Co.(中外製薬), 927 F.2d 1200, 18 USPQ2d 1016 (Fed. Cir. 1991))の当事者であるリリー社やカリフォルニア大のコメントなどがあり、興味深い。
 
関連情報:
・Comments on Interim Guidelines for Examination of Patent Applications under the 35 U.S.C. 112 "Written Description" Requirement
http://www.uspto.gov/web/offices/com/hearings/com112/com112.htm
・1998年7月7日付特許庁公報
Request for Comments on Interim Guidelines for Examination of Patent Applications Under the 35 U.S.C. 112 1 "Written Description" Requirement
Guidelines for Patent Aplications - OG Date: 07 July 1998
http://www.uspto.gov/web/offices/com/sol/og/1998/week27/patappl.htm
・1998年6月15日付官報
[Federal Register: June 15, 1998 (Volume 63, Number 114)]
http://www.uspto.gov/web/offices/com/sol/notices/fr986-27.html
 
 
 
1999/03/10
 
1. 論文「財産権の政治性」
 CAFCのもう一つの側面について、政治的な観点からの興味深い論考。
 CAFCは、我々にとっては「特許専門の裁判所」であるが、「政府に対する請求」にも裁判管轄を有している(憲法修正第5条による金銭的損害賠償を連邦政府に求める請求や契約違反の訴)。いずれの面に力点を置くか、つまりどちらの分野に強い裁判官を任命するかは大きな関心事である。この意味で、次回の大統領選でもしアル・ゴア現副大統領が勝てば、民主党の力により特許以外の面に傾く(CAFCと連邦請求裁判所を抱き込む(pack))おそれがある。
 CAFCは元々レーガン政権によって1982年に設立されたため、当時の強いアメリカ復興という政策面から判事たちが選ばれたと想像されるが、彼らが高齢になった現在、新しい判事の補充が必要になってきた。これまでCAFC判事の指名は、他のそれと異なりあまり論争の対象となっていなかったが、昨年のクリントン政権によるティム・ダイク(Timothy Dyk)氏の指名は、例外的にロビー活動により激しく攻撃されている。ダイク氏はワシントンDCのJones, Day, Reavis & Pogue法律事務所の有能な訴訟弁護士であったが、連邦通信委員会の規則に関わった際の品性の問題で非難され、結局上院の確認投票の場に出てこなかった(CAFC判事の任命には、大統領の指名と上院の承認が必要)。現在クリントンは彼を再指名している。
 その他、CAFC各判事が指名された経緯や背景が紹介されている。
 
2. 論文「CAFCの面々」
 CAFC各判事のプロフィール紹介。CAFCの公式サイト(http://www.fedcir.gov/judgbios.html)でも各判事の経歴は確認できるが、お役所の公式書面よりマスコミの方が背後関係や実状に詳しく、面白いというもの。上記1.と併せて読むと面白い。例えば、リッチ判事は惚けかけている、メイヤー主席判事は元陸軍大佐で寡黙、少ない言葉で効率的な判決を書くタイプ(マークマン事件のCAFC大法廷判決では、珍しく強い口調で反対したことにも触れられている)、ミッシェル判事は細かい、プロパテント派で有名なニューマン判事は、元FMCの特許部長で寛大であり企業サイドの事情に詳しい、といった具合。
 
出典:「CAFCのベールを剥がす」より
・Otis Bilodeau, H. "Property Politics", Corporate Counsel Magazine (March 1999)
http://www.lawnewsnetwork.com/stories/mar/e030099p.html
・Rambler, Mark. "Face To Face With The Federal Circuit" Corporate Counsel Magazine (March 1999)
http://www.lawnewsnetwork.com/stories/mar/e030099n.html
 
 
1999/03/09
 
1. 中古ゲームソフトの販売は、結局違法なの?
 活性しているゲームソフト市場で、中古品の売買が盛んになると新品の売り上げが落ちるだろうから、メーカーとしては何とかしてこれを阻止したい。しかし、法律上それが可能なのかどうかは曖昧である。というわけで、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)が1998年6月に中古業者を著作権法違反で訴えた裁判は注目されていたが、このほど被告側が降服、つまり原告の請求を認諾したため判決を待たずして裁判は終了となった。
 この裁判、原告の主張ではゲームソフトは「映画」の一種であるという。著作権法第2条でいう「映画の著作物」に相当すれば、26条の「頒布権」すなわち「著作者は、...映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有する」ことになる。(逆に言うと、日本の著作権法では映画(及びこれに類するもの、例えば映画のソフト)にしか頒布権を認めていないため、著作権法で訴えるには対象が「映画」であると言い張るしかない。)
 そして、これをクリアすれば次はおなじみの「用尽(または消尽)」の問題である。つまり最初のソフト販売で権利者の権利は用い尽くされたのかどうかが争点となり、用い尽くされたとすれば権利者はもはや頒布権を主張できなくなる。だから被告側は「用尽」で突っぱねるものと思ったが、今回の試合放棄により結局答えは謎のままである。
 映画の頒布権については一般に用尽理論が適用されないという意見が多いように思われる。一方で特許権については、用尽説が一般に認められている。(平成9年7月のBBS事件は記憶に新しいが、ここで日本最高裁は特許の国際用尽には明言しなかった。なお米国の最高裁は1998年3月9日、ランザ対クオリティ・キング事件で著作権の国際消尽(first sale doctrine)を認めている。)というわけで、非常に興味があったのだが...
 なお、その後大手ゲームメーカーのエスニックが中古販売を条件付で認める契約を発表した。あくまでゲームソフトの頒布権を主張しつつも、中古販売を禁止するよりも許可制にして著作権許諾料(店の中古販売価格の7%)を徴収していこうとするエスニックの現実的なアプローチが興味深い。以下は、毎日新聞社のインタビューによる福嶋康博エニックス社長のコメントの引用。
 
 −エニックスは中古ソフト販売会社と頒布権問題で係争中だが、今回の契約改訂で何らかの影響は。
 
 福嶋社長 頒布権についての訴訟は、今月上旬に(他のメーカーと小売店との)東京での訴訟が和解した。「ゲームに頒布権がある」という判決が出なかったとされるが、これまで同種の訴訟でゲームに映画同様の頒布権を認められた判例は7件もある。ゲームメーカー側が頒布権をめぐる訴訟で敗訴したことは一度もない。この点からも、われわれはゲームソフトの頒布権は確立されたものと考えている。(下線強調は筆者による。)
 
関連情報
・「中古販売業者が全面的にゲームの頒布権を認める。ACCSが全面勝利宣言」
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/990309/accs.htm
・著作権関連法令集
http://www.cric.or.jp/db/article/a1.html
・被告側準備書面−ゲームは映画ではない、社会通念上から見ても...という主張
http://www.arts.or.jp/judge/judge_do/d_006.html
・「中古ソフト販売にルールが必要」福嶋康博エニックス社長, Mainichi Daily Mail Computing, No.434, (1999-03-25, 毎日新聞社)
 
 
1999/03/
 
1. レメルソン死すとも弁護士死なず
 レメルソン財団が今また大規模な訴訟を展開。
 1999年2月4日にコンピュータや製造機械でバーコードを読み取る「マシン・ビジョン」及び関連技術の侵害で、88社をアリゾナ連邦地裁に訴えたらしい。(1998年7月にも半導体企業26社を同じ裁判所に訴えている。)
 今回訴えを受けた気の毒な方々は、コンパック、ゼロックス、サン・マイクロシステムズ、シスコ、アセンド・コミュニケーションズ、3Com、クアルコム、コダック、ジェネラル・エレクトリック等々。
 ジェラルド・ホージャーがやってるのかと思ったが、レメルソン筋のコメントをしてるのはルイス・ホフマンという弁護士だった。
 詳しい資料は、IPOのFaxサービスで取り出すことが可能。1999年3月5日付IPOデイリーニュースでは、Fax番号(202)296-7500で、ドキュメント・コード番号「111」(但し「ヘビィ」らしいが)。
 
関連資料
・1999年3月4日、5日付IPO DAILY NEWS
・Sandburg, Brenda. "Lemelson Foundation Sues 87 in Complaint", The Recorder, Tuesday, March 9, 1999
http://www.lawnewsnetwork.com/stories/mar/e030999g.html
Lemelson Medical, Education & Research Foundation v. Lucent Technologies Inc., 99-0377 (1999)
 
 
1999/02/26
 
1. CAFC判決−補正の理由は常に明示すべき?
 ワーナージェンキンソン対ヒルトンデイビス事件で米連邦最高裁は、均等論を抑止する審査経過禁反言について、ある「推定」を導入した。つまり、審査段階でクレーム補正がなされており、当該補正の理由が特許性に関するものか否か不明な場合は、特許性に関する理由であると「推定」する。当該推定は、特許権者が特許性以外の理由で補正されていたことを証明できれば覆る。しかし、証明できない場合は当該推定によって審査経過禁反言が働き、均等論の主張が禁じられる。この意味で、特許権者には新たな責任が課された訳である。審査段階で予め補正した理由を明示しておくか、あるいは後の裁判で補正の理由を証明するか、という立証責任が。
 この判決後、審査段階で112条違反等のためクレーム補正する場合、つまり特許性と無関係である場合は、例えば補正書中で当該補正を行った理由が「クレーム明確化のためであり、特許性とは無関係である」旨を主張しておく実務が提唱された。ある事務所は、これ用の定型文を配布したくらいである。
 では、特許性に関する理由、要するに引例に基づき102条、103条で拒絶されている場合はどうか?この場合、補正の理由をあえて明示しない、つまり、もしかすると特許性に関係ない理由で補正していると判断されるかもしれない→均等論適用の余地を残しておく、という考え方があった。特許性が理由であれば均等論の適用はどのみち制限されるわけだから、特許性が理由でない可能性にかけてみる。補正の理由は引例回避に必要なものかそうでないかの線引きが困難な場合もある(特に、日本と違ってアメリカでは細切れの補正の追加よりも、クレーム全体を書き直すことが多い)から、裁判所の判断に委ねてみようという考え方である。
 しかし、これが大間違いである(らしい)という判決が下された。補正の理由が不明でワーナージェンキンソン推定が適用される場合、均等論は完全に阻害され、均等の範囲は一切なくなるという。そうであるとすれば、補正の理由はいかなるものであれ(特許性に基づくものであっても)明記しておく方が良さそうである。
 セクスタント・アヴィオニックSA対アナログ・デバイセス社事件で、CAFCはカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所の下した非侵害のサマリージャッジメントを支持し、特許2件とも非侵害と認定した。このうちの1件については、補正の理由が引例回避のためであることが明らかで疑問の余地はないため、当該補正部分につき均等論の適用なしとされた(バイ事件参照)。
 そしてもう一方については、審査段階で112条と103条により拒絶されており、補正の理由が特許性によるものか否かが不明であった。当然特許権者側は特許性によるものでないと主張したが、CAFCは受け入れなかった。つまり、特許権者は補正が特許性に関するものでないことを証明できなかった。そして、CAFCはワーナージェンキンソン推定を適用し、これにより禁反言の及ぶ範囲、すなわち均等論の制限される範囲を初めて判断することとなった。
 CAFCは先例がないので最高裁判決を調べ、特にクレームの不明確さによって一般公衆が被る被害を考慮、クレームを明確に示す責任は特許権者にあるとした。また、どこにも(審査記録、補正、意見書)指標がないため、クレームの文言範囲を超えてどこまで禁反言が及ぶかを定めることができないとし、競業他社も同様の困難に遭遇するであろうと考えた。これらから、当該推定により禁反言が適用される場合は、均等論の働く余地はないと判断することが妥当かつ論理的であるとした。つまり、この場合において均等論はすべてにおいて完全に阻害されることになる。
 この豪快な判決を担当したのは、ローリー、ガヤージャ、およびシニア・ジャッジ(高齢、非常勤?)のスミス判事。判決文はローリー判事が担当。ガヤージャ判事がこれに同意したことは容易に想像が付くが、他の判事がこれに同意するか否かは疑問である。
 もう一度この問題を考えてみると、
 (1) 補正の理由が特許性に関するものであることが明らかな場合は、「推定」の適用を待たずに出願人が放棄した部分についてのみ禁反言が働き、それ以外の部分については均等論の適用余地が残されている。(バイ事件)
 (2) 一方、補正の理由が特許性によるものか不明である場合、ワーナージェンキンソン推定が働く。この場合、特許権者が反証できない限り、禁反言が全体に適用されて均等論は完全に封じられることになる。
 この差はどこから来るのか。ローリー判事の弁によれば、「特許権者が補正理由を明確できず、またこのために推定を覆せない場合は、(放棄した範囲=禁反言の範囲を確定できず)問題となるクレーム限定に関して均等の範囲が不明瞭なまま残ることになって一般公衆の不利益となるので、認めるべきでない。」
 逆に、(自らの利益に反する自認をしなかった場合とは違って)引例回避のための補正であると出願人が認めている場合など、はっきりしている状況であれば、均等の範囲が不明確に見えても良いことになる。
 この両者の線引きは割と単純である。要するに、出願人が補正の理由を語ればいいわけだ。(もっとも、それが妥当かどうかは裁判所が判断することになるが。いくら補正の理由はこれです、と主張しても裁判所が納得しない限りどうにもならない。)
 気になるのは、補正の理由が明白なのはどこまでか、いいかえると、CAFCがどこまで補正の理由を判断してくれるのか、という点である。これまでCAFCは常にクレーム補正の理由を検討し、これに応じた禁反言の範囲をきっちり定めて均等論を適用するというスタンスを取ってきたと思っている。しかし今回は補正の理由を判断できないとして、初めて推定のルールを適用した。要するに、CAFCが初めてさじを投げた事件だったのだ。今後、どういう方向に進むのか、少々不安である。ちゃんと補正理由を検討してくれるんだろうね。簡単に「102条と112条が混じってて訳が分からないから『推定』しろ」ってなことになならないよね。穿ちすぎかな???
 
Sextant Avionique, S.A. v. Analog Devices, Inc., 98-1063,- 1077 (Fed. Cir. 1999).
http://www.law.emory.edu/fedcircuit/feb99/98-1063.wp.html
Warner-Jenkinson Co. v. Hilton Davis Chemical Co., 520 U.S. 17, 117 S. Ct. 1040, 41 USPQ2d 1865 (1997).
Bai v. L & L Wings, Inc., 160 F.3d 1350, 48 USPQ2d 1674 (Fed. Cir. 1998).
 
 
1999/02/
 
1. 有斐閣、「法律学小辞典・第3版」(4300円)を発売
 私のような法律を正式に学んだことのない人間には必携の書。
 
 
1999/01/01
 
1.日本特許制度改正
・FD出願(JIS10、40形式)廃止→紙出願か、オンラインか、X-FDか、パソコン出願
 紙出願だとDE手数料(データ・エントリ、要するに代筆料)が別途必要
 オンライン出願は平成12年までの命
 X-FD(特許庁出願フォーマット、通称Xフォーマット)は、パソコン出願ができない場合の代替措置のため、理由書必要(書式は不明)
→パソコン出願しかない!
・願書中の「発明の名称」は不要に
・EP出願に基づく優先権主張出願には、優先権書類の提出が不要に(三極の合意により、庁同士でデータをやり取りしてくれるようになった。)
 
 
2.欧州特許法改正
 1999年1月1日以降、日本の出願に基づいて優先権を主張するヨーロッパ特許出願には、優先権証明書の提出が不要になった。1997年9月1日以降の日本出願に優先権を主張している係属中の出願にも適用。
 ただし、優先権書類の翻訳文は依然として規則51(6)の通知までに必要。
 
情報元および関連情報:
・"European patent application: Japanese priority," Vossius & Partner
http://www.vossiusandpartner.com/eng/flash/japanese-prio.html
 
 

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