New! 2006-7-19 Update
本ページの内容
このページは、米国特許に関する最新の判決速報や、特許法改正のニュースといった最新情報の提供と、過去の重要判例の紹介等を通じて、米国特許制 度を学んでいく上での理解の手助けとして僅かでもお役に立てることを目的としています。
まだまだ試行錯誤の段階で、改良すべき点も多いですが、御助言、御叱責等を戴ければ幸いです。皆様のご援助によって、本ページを一歩ずつ完成させ ていきたいと思います。
掲 示板(特許編) 掲示板其の弐(※特許以外の馬鹿話編) 試行錯誤中
ひとりごと (最新の動向について、個人的なメモ)
リンク集 〜インターネットから入手できる特許情報〜 2003年6月7日 約3年ぶりに更新作業に着手しました(^_^;)
IPニュース (最低でも毎月一回の更新を予定。なお、過去のニュースにも時々手直しを加えています。)
2003年9月30日1.フェスト事件、地裁へ差し戻しへ
最高裁から差し戻されていたフェスト事件のCAFC大法廷審理による決定は、9月26日、地裁への差し戻しとなりました。審理に先立ち当事者に求めた意 見に対する回 答として、クレーム減縮補正の理由が明らかにされない場合すべての均等物を放棄したと推定することへの反 証は、法律問題であること(陪審でなく裁判官が決定すべき事項)、およびフェスト最高裁判決で示された反証の3つの手法に関して具体的に考慮すべき事項と してどのようなものがあるかについては、最高裁の判示は一般的な指針に過ぎない(各事件毎に個別のケースバイケースで判断される)、というものです。最も 注目されていた後者の論点は、明確な回答がないまま地裁へ差し戻されることとなりました。また均等物が予見可能であったか否かの立証においては、専門家証 人等の外部証拠に依拠することが認められるようです。
2000年にクレーム補正に厳格ルールを適用し批判を浴びたCAFC大法廷判決は、2002年の最高裁判決によって覆され、被告(侵害者)側有利 から特許権者保護に修正する大きな振り戻しがありました。が、今回のCAFC大法廷判決を見ると、最高裁の判示をより具体的な指針として一般化せず、特許 権者側が推定に反証する手法が明示されない結果、被告側が有利な方向に少し戻ったようにも思えます。
判決理由はローリー判事が起草され、レーダー判事が同意意見を、ニューマン判事(メイヤー首席判事)が 一部同意、一部反対意見を書かれています。
なお本ニュースは、スミス特許事務所(米ワシントン DC)のランディ・スミス弁護士(Randolph A. Smith (Smith Patent Office))より戴きました。追加情報はこ ちらをご覧下さい。
情報元および関連情報:
・Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., Nos. 95-1066 (Fed. Cir. 2003).
http://www.fedcir.gov/opinions/95-1066c.doc
http://laws.findlaw.com/fed/951066v4.html
・"Federal Circuit Addresses Patent Equivalents on Remand From Supreme Court." IPO Daily News (September 29, 2003).
http://www.ipo.org/Template.cfm?Section=This_Weeks_Daily_News
・Brenda Sandburg (The Recorder), "Federal Circuit Tweaks 'Festo' Decision Again." law.com (September 30, 2003).
(※有料化されています。)
2.新たな大法廷審理
一方で、フェスト事件の決定と同日にCAFCは、故意侵害について係争中の別件を自発的に大法廷審理に付すことを決定しました。裁判で問題になる鑑定書の扱い、すなわちディスカバリーで鑑定(法的助言)の結果を開示しない場合の影響が問題となっています。 CAFCの先例によれば、「被告侵害者が法的助言を求めたか否かについて沈黙を守るときは、法的助言を得なかったか、あるいは侵害ありとの助言を得たもの と結論することとなる(クロースター・スペードスティール事件)」、「侵害の可能性のあるいかなる行為を行う前に弁護士から完全な法的助言を得る積極的な義務が存在する(アンダーウォーターデバイス事件)」とされています。
今回のクノール対ダナ事件で、CAFCは以下の4つの問題点を取り上げています。
1.侵害訴訟において被告側から弁護士・依頼者間守秘特権もしくは弁護士職務活動成果(attorney-client privilege and/or work product privilege)を行使した場合、故意侵害の判断に関して事実認定者が上記事実をもって被告に不利な判断に資すことは妥当か?
2.被告が法的助言を得ていない場合、このことをもって被告に不利な判断に資すことは妥当か?
3.仮に本法廷が法理を変更し、被告に不利な影響を本件に及ぼさないとする場合、本件の結論はどのような ものとなるか?
4.被告が法的助言を何ら得ていない場合においても、侵害に関する実質的な抗弁が存在すれば故意侵害の責任を破棄するに十分か?
上記問題点に関する当事者の意見およびアミカスブリーフが求められています。
実際上、訴訟においては非侵害との鑑定を予め得ていたことを開示して、故意侵害を逃れるケースが多いと感じていますが、そのために秘匿特権を放棄してし まうことによるダメージをどのように考えるのか、実務上興味あるテーマです。フェストがCAFCから離れても、やはりCAFCから目が離せません。追加情報はこ ちらをご覧下さい。
情報元および関連情報:
・Knorr Bremse Systeme Fuer Nutzfahrzeuge GmbH v. Dana Corp., Nos. 01-1357, -1376, 02-1221, -1256 (Fed. Cir. 2003) (order).
http://www.fedcir.gov/dailylog.html
・Knorr Bremse Systeme Fuer Nutzfahrzeuge GmbH v. Dana Corp., 133 F. Supp.2d 833 (E.D. Va. 2001) (partial summary judgment); 133 F. Supp.2d 843 (E.D. Va. 2001) (findings of fact and conclusions of law); Civ. A. No. 00-803-A (E.D. Va. Mar. 7, 2001) (final judgment and injunction); No. 00-803-A (E.D. Va. Apr. 9, 2001) (amended final judgment).
2003年4月3日1.MPEP 8版改訂
MPEP最新版が、米特許庁ホームページにアップロードされています。最新版は第8版1訂で、2003 年2月付けとなっています。200章、700章、1800章、2100章あたりが改訂されており、米特許法102条(e)の扱いなどが変更されています。
情報元および関連情報:
・"Manual of Patent Examining Procedure (MPEP) Edition 8 (E8), August, 2001 Latest Revision February 2003." U.S. Patent and Trademark Office
http://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/index.html
・"MANUAL OF PATENT EXAMINING PROCEDURE Eighth Edition Instructions Regarding Revision No. 1" U.S. Patent and Trademark Office
改訂箇所がまとめられています。
http://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/mpep_e8r1_BluePages.pdf
2003年1月15日1.2002年米国特許取得ランキング 米特許庁より、2002年に米国特許を取得した企業のランキングが発表されています。1位は不動といっても よいIBM社で、1993年から10年連続で首位を守っております。2位は最近NECが連続していましたが、今回は久しぶりにキヤノンが定位置を奪回しま した。3位は同数で、そのNECとマイクロンがランクされています。詳細な順位はこ ちらをご覧下さい。
順位 企業名 特許取得数 1 IBM 3,333 2 キヤノン 1,895 3 NEC 1,833 3 マイクロン・テクノロジー 1,833 5 日立製作所 1,616 6 松下電器産業 1,566 7 ソニー 1,456 8 ジェネラル・エレクトリック 1,417 9 三菱電機 1,408 10 サムスン電子 1,329 情報元および関連情報:
・"USPTO RELEASES ANNUAL LIST OF TOP 10 ORGANIZATIONS RECEIVING MOST U.S. PATENTS" USPTO (January 13, 2003).
http://www.uspto.gov/web/offices/com/speeches/03-01.htm
2002年12月21日1.米特許庁料金値上げ 米国特許庁の料金大幅値上げ案も、本年の大きなニュースでした。大きな反対にあった結果、大幅値上げはまだ 成立しておりませんが、とりあえず来年2003年1月1日より、消費者物価指数に応じた10ドル程度の値上げが決定されています。
主な改正は以下の通りです。
項目 現行料金(かっこ内はスモールエンティティ) 改正後 特許出願料 $740 ($370) $750 ($375) 継続審査請求(RCE) $740 ($370) $750 ($375) 2ヶ月延長 $400 ($200) $410 ($205) 3ヶ月延長 $920 ($460) $930 ($465) 4ヶ月延長 $1,440 ($720) $1,450 ($725) 5ヶ月延長 $1,960 ($980) $1,970 ($985) 特許登録料 $1,280 ($640) $1,300 ($650) 3年半での年金 $880 ($440) $890 ($445) 7年半での年金 $2,020 ($1,010) $2,020 ($1,010) 11年半での年金 $3,100 ($1,550) $3,150 ($1,575) PCT国内移行(日本もしくは欧州が受理官庁) $890 ($445) $900 ($450) PCT国内移行(日本もしくは欧州以外が受理官庁) $1,040 ($520) $1,060 ($530)
1分類当たりの商標出願料 $325 $335
情報元および関連情報:
・"Revision of Patent and Trademark Fees for FY 2003 Effective January 1, 2003." 67 Fed. Reg. 70847 (November 27, 2002).
http://www.uspto.gov/web/offices/com/sol/notices/67fr70847.pdf
・"Certain Fees to be Adjusted"United States Patent and Trademark Office OG Notices: 26 (November 26, 2002).
http://www.uspto.gov/web/offices/com/sol/og/2002/week48/patadjs.htm
・"Final rule makes 1.5 % COLA increase for certain patent and trademark fees." 65 PTCJ 116 (December 6, 2002).
2002年12月20日1.フェスト事件、再びCAFCへ 2002年に限らず、ここ数年来最も注目を集めたフェスト事件は、現在最高裁からCAFCに差し戻されてお ります。再度CAFCが大法廷で審理すると決定され、当事者双方及び第三者に対し書類提出が求められていました。
本件のCAFCでの口頭審理の日程が2003年2月6日に決定した模様です。ただし、まだCAFCのホームページ では掲載されておらず、また大法廷審理か裁判官3名の合議による審理かも明らかにされておりません。
情報元および関連情報:
・Gregory Aharonian, "Festo oral argument scheduled for 6 February 2002." Internet Patent News (Dec. 19, 2002).
2002年5月29日1.フェストCAFC大法廷判決を最高裁が破 棄 1.はじめに
均等論侵害の主張を制限する審査経過禁反言の適用が争われた注目のフェスト事件に対する米最高裁判決が2002年 5月28日に下されました。結果は、最高裁は全員一致でCAFCの大法廷判決を破棄し、事件をCAFCに差し戻すというものです。
特に最高裁は、CAFCが提示したコンプリート・バー、すなわち禁反言が適用されると均等論侵害は完全に排除され るという厳格適用ルールは、ワーナージェンキンソン最高裁判決の指針を無視していると述べています。そして、特許権者がクレーム減縮補正によって現実に放 棄したものが何であるかを調べ、この範囲への均等論侵害を排除するという、より柔軟な適用であるフレキシブル・バーに近いアプローチを採用しています。
この結果、審査経過禁反言の適用はCAFCの解釈したような絶対的なものでなく、特許権者自身がクレームを補正し た理由によって、禁反言の適用すなわち均等の範囲が判断されることとなりました。このように均等論の適用される余地が残ったという面からは、特許権者側に 有利な判決のように思えますが、一方で特許権者側の立証責任がより重要になったとも言えます。2.事件の背景
本件のフェスト対燒結金属工業事件では、ロッドレスシリンダーに関する2件の特許権が争われました。地裁、 CAFCではいずれも均等論に基づき特許権侵害とされましたが、最高裁でワーナージェンキンソン事件の判決が下されたことを受け、ワーナージェンキンソン 最高裁判決に従って審理し直すようCAFCに差し戻されました。CAFCは再度均等論侵害を肯定しましたが、その後大法廷により審理し直され、その結果均 等論侵害は否定されました。この判決はCAFC判事の間で意見が割れましたが、多数意見はクレームが減縮補正されれば禁反言が適用され、補正されたクレー ム構成要件に関しては一切の均等論侵害が認められないとする新たなルール「コンプリートバー」を導入しました。
これに対し、最高裁への上告が認められました。最高裁では、CAFC大法廷判決の内、主に以下の点が審理されまし た。
(1) 先行技術に関する規定以外も含めた特許法のいかなる規定についても、これを充足するためになされたクレー ムを減縮する補正はすべて、補正の理由如何に関わらず自動的に審査経過禁反言を生じるものであるか?
(2) 審査経過禁反言が認定されると、均等論侵害の主張は完全に阻害されるか?3.最高裁の判決
今回の最高裁判決は全員一致によるもので、ケネディ最高裁判事が起草されています。判決では、審査経過禁反言の適 用は先行技術を回避するためになされたクレーム補正に限られず、特許法の要件を充足するためになされたあらゆる補正に適用されることが確認されています。 しかしながら一方では、補正されたクレームの文言に係るすべての均等論侵害が、禁反言により阻害されるものでないとされています。
上記(1)の争点について、クレーム補正が特許取得のための補正であり、かつ減縮補正の場合に禁反言が働くこと、 また補正の理由が特許法102条や103条に限られず、112条違反の補正も対象となり得ることは、CAFCの判断と一致しています。ただし112条違反 であれば必ず特許性に関する補正に該当するというわけでなく、純然たる表面的な補正であってクレーム範囲を減縮しない場合であれば禁反言は生じないと述 べ、議論の余地を残しています。
また上記(2)の争点については、減縮補正によって放棄した技術的事項を審理した上で、禁反言の及ぶ範囲を判断し なければならないとしており、一律に禁反言を自動適用することを否定しています。最高裁は特に審査段階で審判による不服申し立てでなくクレーム減縮補正を 選択した特許権者の判断を尊重し、またCAFC判決以前の法理に従って存続する特許権に与える影響を考慮しているようです。
審査段階での拒絶理由に対する出願人側の対策としては、クレームを補正することによって権利取得を部分的に断念す るか、あるいは審判を請求して不服を申し立てるかの途があり、いずれを選択するかは出願人の判断です。ここで、仮にCAFC大法廷判決に従って存続中のす べての特許権についてコンプリートバーを適用したとすれば、クレーム補正のあるものはすべての均等物を放棄したことになり、出願人側に不利な結果となりま す。発明者はクレーム減縮補正にそのような不利益があることを知らないで、従前の法理に従ってクレームを補正したのですから、クレーム減縮補正がすべての 均等物を放棄することになると知っておれば、補正でなく審判請求を選択したかも知れません。したがって、一律に禁反言を完全に適用することは妥当でないと いうことになります。
そうすると、次に問題となるのは禁反言をどこまで適用するかという問題です。今回のフェスト判決によれば、「特 許権者は、争いに係る具体的な均等物をクレーム補正によって放棄していないことを立証しなければならない」と判示されています。クレームの減縮補 正は一般的な放棄と推定されますが、特許権者はこの推定を反証により覆すことができます。推定を覆す手法を最高裁は幾つか提示しており、例えば争いに係る 均等物が予期できないものであったこと、またはクレーム補正の根底にある理由が均等物とは無関係なものにすぎないこと、あるいはその他特許権者が均等物を 予測し得なかったことを示す合理的な理由が存在することなどが挙げられています。
本件ではフェスト社がクレームを補正した理由が明らかにされていません。よって特許権者が禁反言適用の推定、およ び争点となっている均等物を放棄したとの推定に対し反証してこれを覆せるかどうかを審理する必要があります。このため最高裁は、本件をCAFCに差し戻し ました。
本件の今後の展開としては、ワーナージェンキンソン事件がそうであったように、クレーム補正の理由は審査記録から 明らかでなく、事実に関する審理が不十分であるため、ワーナージェンキンソン事件と同様にCAFCからさらに地裁に差し戻される可能性があると思われま す。4.実務に与える影響
本判決の結果、均等論に対する制限が緩和されたため、その分だけ特許権者には有利になったと言えるでしょう。実際 上、殆どの特許はクレームの減縮補正を経て特許を受けている以上、仮にCAFCの法理に従うとすれば均等論侵害の主張は極めて制限されてしまいます。今回 の最高裁判決の結果、クレーム補正によって禁反言は適用されるとしても、未だ均等論侵害を主張する余地は残されているわけですから、存続中の多くの特許権 は引き続き均等論侵害による保護が受けられると言えます。
一方で、クレーム補正の理由を明らかにする立証責任が特許権者側にあることも確認されました。特に、具体的な均等 物を放棄していないことを立証しなければならないとありますが、この反証を実際にどのようにして行うかは判決からは必ずしも明確でなく、現実にはそのよう な立証は困難ではないかとさえ思われます。そうしますと、特許権者の反証により均等論を主張できる余地が理論上は残されているとは言うものの、実際上は必 ずしも均等論侵害の主張が容易ではないとも考えられます。この点につきましては、今後の判例の動向を注視する必要があるでしょう。
本件については多くの方から情報をいただきました。特にスミス特許事務所(米ワシントンDC)のランディ・スミス 弁護士(Randolph A. Smith (Smith Patent Office))には判決文をファックスしていただいた上、お電話まで頂戴しました。この場を借りてお礼申し上げます。
詳細分析については、こちらをご覧下さ い。情報元および関連情報:
・Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., et al., 62 USPQ2d 1705 (U.S. 2001).
http://laws.lp.findlaw.com/us/000/001543.html
http://laws.findlaw.com/us/000/00-1543.html
http://a257.g.akamaitech.net/7/257/2422/28may20021100/www.supremecourtus.gov/opinions/01pdf/00-1543.pdf
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Held: Prosecution history estoppel may apply to any claim amendment made to satisfy the Patent Act's requirements, not just to amendments made to avoid the prior art, but estoppel need not bar suit against every equivalent to the amended claim element.
・Tony Mauro (American Lawyer Media), "U.S. Supreme Court Vacates 'Festo' Decision: High court rules claim amendments don't preclude application of doctrine of equivalents." Law.com (May 29, 2002).
http://www.law.com
ケネディ最高裁判事の顔写真付き
・"Supreme Court Disagrees With Federal Circuit's 'Complete Bar' Rule for Patent Doctrine of Equivalents." IPO Daily News (May 29, 2002).
http://www.ipo.org/whatsnew.html
・"Patent Protections Upheld By Supreme Court." FindLaw Top Headlines (May 28, 2002).
http://news.findlaw.com/news/s/20020528/courtpatentsdc.html
・Randolph A. Smith (Smith Patent Office)
http://www.smithpatentoffice.com/
・アレックス・シャルトーヴ米国特許弁護士(Alex Chartove)からも情報を頂きました。いつも有り難うご ざいます。
2002年4月5日1.明細書に開示しクレームしない事項に均等 論及ばず 1.はじめに
明細書の詳細説明で開示しておきながらクレームしなかった事項に対して、均等論侵害を主張できるか否かが争われた 注目事件の判決がCAFCで下されました。2002年3月28日、ジョンソン&ジョンストン社対REサービス社事件の大法廷判決において、CAFCはク レームしなかった事項は公衆に放棄したものであるとして均等論侵害を認めませんでした。この結果、従前二つに割れていた先判例の矛盾がCAFCレベルで解 消されることとなり、マクスウェル事件での法理をほぼ踏襲する形で判例が確立されました。
もちろん、上告により覆る可能性は依然残されており、特に均等論に対する厳格適用の可否がフェスト事件で審理中で あることを考慮すれば、同じく均等論に対する制限と捉えられる本件を最高裁に取り上げる可能性も否定できません。
2.事件の経緯
本件で争われたのはジョンソン社が所有する米国特許5,153,050号で、プリント回路基板の製造方法に関する 技術です。明細書中では基板材料としてアルミニウムが好ましいとしつつ「ステンレススチールやニッケル合金などの金属も使用できる」とも記載されていまし た。しかしながらクレーム中では「アルミニウムシート」のみが記載されていました。
一方、REサービス社はスチール基板を使用していました。これに対しジョンソン社はカリフォルニア北部地区連邦地 裁に提訴し、陪審審理により均等論侵害が認められました。
3.CAFCの判断
控訴審では、明細書に開示した事項がどのように扱われるかが争われました。この争点については、マクスウェル事件 とYBM事件が対立しています。マクスウェル事件では、明細書に開示してクレームしなかった事項は公衆に開放したという法理が既に確立されていると判示し ています。一方、その後に下されたYBM事件では一転して均等論侵害を認めました。
この対立について、CAFC大法廷は特許権の保護範囲を確定するクレームの意義に傾注しています。すなわち、出願 人が特許庁では厳しい審査を避けるためにクレームを狭くし、特許を得た後裁判では明細書に開示があることを理由にクレームを拡大解釈するよう均等論を主張 することは認められないというものです。このように均等論による救済を特許権者に認めない理由には、出願人は特許後2年以内に再発行出願でクレームを拡大 することができるし、また継続出願を行うこともできるという選択肢があると指摘しています。
また判決では、特にマクスウェル、YBM両事件の対比と最高裁判決の経緯を丁寧に説明されています。判決文は84 頁にも渡る長大なものですが、このうち多数意見は13頁程度で、起草判事名のない無記名判決となっています。
これに対しクレベンジャー、レーダー、ダイク、ローリー判事の4人が結論は同じで理由付けの異なる同意意見を、 ニューマン判事が反対意見をそれぞれ出されています。クレベンジャー判事は本判決が単に従前の古い法理に従ったにすぎないことを明らかにされています。 レーダー判事は別の解決策として「予測性に基づく均等論阻却」基準を提唱されています。これは出願人が審査の段階で予測できクレームに含めることができた と合理的に考えられる事項については、均等論で再取得を認めるべきでないというものです。ダイク判事は今回の判決がグレーバータンク最高裁判決と合致して いないことを強調されています。ローリー判事はレーダー判事が唱える予測性阻却理論に対し疑問を呈されています。そしてニューマン判事は、今回の判決が均 等論への更なる攻撃であり、最高裁やCAFCの先例と矛盾すると批判されています。
4.今後の対策
本件によって、開示されクレームされない事項に均等論が及ばないことが明確になりました。上告の可能性を含めて今 後の動向に注意する必要はありますが、実務的にはクレーム作成時にこれまで以上に実施例がすべて包含されていることを確認するよう注意する必要があるとい えるでしょう。また既に特許になったものについても、発行から2年以内の、特に重要案件については再確認を行い、もしクレームし忘れた事項が発見された場 合は再発行出願を検討すべきかも知れません。
実施例などで「...も使用できる」との一文を付記することはよく行われていますが、これがクレームの文言上カ バーされているかどうかまでチェックすることは意外と見落とされがちです。さらにこのような表現が含まれていたとしても、米国においてはクレームされる事 項はすべて図示しなければならないという条件があります。このため代替例の記述のみからクレームを作成することが困難な場合もありますので、代替例を実施 例に書く場合は、クレーム文言に含まれていることのチェックのみならず、それを図示した図面があるかどうかも確認すべきでしょう。
均等論については日米とも重要なトピックですが、日本においては均等論の積極的な適用の方向、米国においては逆に 限定的な解釈の方向にあり一見すると対照的な潮流となっています。ただ、現在米連邦最高裁でフェスト事件が審理中であるように、その判断は常に流動的であ るため、重要問題として今後も動向を注視し続ける必要があるでしょう。
詳細分析については、こ ちらをご覧下さい。情報元および関連情報:
・Johnson & Johnston Assocs. v. R.E. Serv. Co., Nos. 99-1076, -1179, -1180, 2002 WL 466547 (Fed. Cir. 2002) (en banc) (per curiam).
http://www.ipo.org/2002/IPcourts/Johnson_v_RE.htm
・"En Banc Court Says Patent Owner Cannot Use Doctrine of Equivalents to Protect Disclosed But Unclaimed Subject Matter," IPO Daily News (April 1, 2002).
http://www.ipo.org/whatsnew.html
・Richard Hung, "No Coverage for Disclosed But Unclaimed Subject Matter under the Doctrine of Equivalents," Morrison & Foerster LLP (March 29, 2002).
http://www.mofo.com/news/ArticleDetail.cfm?concentrationID=14&ID=687&Type=3
アレックス・シャルトーヴ米国特許弁護士(Alex Chartove)からも情報を頂きました。いつも有り難うご ざいます。
・Brenda Sandburg (The Recorder), "Ruling Is 'Nail in Coffin' of Doctrine of Equivalents," law.com (April 3, 2002).
http://www.law.com
・"Doctrine of Equivalents Does Not Cover Disclosed but Unclaimed Matter." 63 Pat. TM & Copyright J. 480 (April 5, 2002).
・Maxwell v. J. Baker Inc., 86 F.3d 1098, 39 USPQ2d 1001 (Fed.Cir. 6/11/1996), cert. denied, 117 S. Ct. 1244 (1997).
http://www.ll.georgetown.edu/Fed-Ct/Circuit/fed/opinions/95-1292.html
・YBM Magnex Inc. v. ITC, 145 F3d 1317, 46 USPQ2d 1843 (Fed. Cir. 5/27/1998).
http://www.law.emory.edu/fedcircuit/may98/97-1409.wpd.html
・米特許庁規則1.87およびMPEP608.02(d)
The drawing in a nonprovisional application must show every feature of the invention specified in the claims.
2002年1月26日1.サブマリン特許は無効の可能性 1.はじめに
バーコードメーカ各社がレメルソン財団の「マシンビジョン」特許の無効確認を訴えた注目訴訟の判決がCAFCで下 されました。正確には特許無効(invalidity)でなく権利行使不能(unenforceable)の主張で、その根拠は継続出願の繰り返しにより 出願審査を故意に遅滞させたことが懈怠に当たるというものです。この抗弁は審査懈怠論(defense of prosecution laches)と呼ばれており、適用の可否が論点となっていました。
今回の判決でCAFCはネバダ州連邦地裁が審査懈怠論を否定した判決を破棄差し戻しとし、レメルソンの特許群が権 利行使不能である可能性を認めました。つまり特許の無効を明確に宣言したのではなく、権利行使不能とする法的根拠を是認したものです。しかしながら審査懈 怠を肯定した本判決の意義は極めて大きく、レメルソン財団が進める特許ライセンス戦略への影響は必至と見られます。また今回俎上にあげられたバーコード関 連特許に限られず、本件で確立された法理は継続出願の繰り返しで特許された「サブマリン特許」全般に及ぶため、レメルソン財団のみならず他のいわゆるパテ ントマフィアに対しても影響を及ぼすと考えられます。今後さらに最高裁への上告も含めて事件の行方が注目されます。2.事件の背景
本件は、バーコードスキャナ製造メーカのシンボル・テクノロジー社(Symbol Technologies, Inc.)とコグネックス社(Cognex Corporation)が、故レメルソン氏(Jerome H. Lemelson)が出願しレメルソン財団(Lemelson Medical, Education & Research Foundation, Limited Partnership)が管理する「マシンビジョン」および自動認識技術に関する特許権の行使権不存在確認を求めて提訴されたものです。
マシンビジョン(machine-vision)とは、機械視覚、ロボットビジョンなどと訳されており、ロボット やコンピューター、テレビカメラやイメージセンサなどを用いた画像認識による機械視覚検査システムを指し、バーコードを使った管理システムとも関連してい ます。レメルソン財団はマシンビジョンやバーコード技術に関して、未だ審査継続中の特許出願を含め多くの特許権を保有しています。存続中の特許権だけでも 185件あるといい、これらの出願日は1954年から1956年となっています。
レメルソン財団は、ユーザ(バーコードメーカにとっては自社製品を購入してくれている顧客)からライセンス料を徴 収するという戦略を採っていたため、バーコードメーカがレメルソンに特許権侵害で提訴されていた訳ではありませんでした。しかしながらバーコードメーカか らすれば、バーコード関連機器を購入している顧客が、何の貢献もしていないペーパーパテントに基づいて不当なライセンス料を徴収されるている状況は容認で きるものではなかったのでしょう。顧客の利益を守る必要があると判断し、提訴に踏み切ったとされています。当初2社は別個にネバダ州連邦地裁に提訴してい ましたが、主に審査懈怠論が主張されていたこともあり、同地裁で審理が併合されました。地裁では審査懈怠論が否定されたため、これに対して原告はCAFC に控訴していました。3.CAFCの判断
このようにCAFCでは特許の無効判断が求められていた訳でなく、法律論として審査懈怠論が認められるか否かだけ が争点となりました。審査遅滞を原因とする懈怠の抗弁とは、出願日から相当遅滞して特許された特許権は、たとえ出願人が特許法の規定に従っているとして も、斯かる遅滞に合理的な理由なく、かつ理由の説明もない場合、衡平法上(エクイティ)の観点から懈怠により権利行使不能とされるという理論です。 CAFCは最高裁の古い判決であるウッドブリッジ判決およびウェブスター判決に依拠して、特許法上審査懈怠論が存在可能であることを確認しました。
レメルソン側は反論として、第一にウェブスター最高裁判決がインターフェアレンス手続から生じたクレームに限定さ れると主張し、そのように解釈したドナルド・チザム教授の大書「パテント」を引用しました。しかしCAFCは、インターフェアレンス事件に限定するように 解釈する根拠がないとしてこれを否定しています。CAFCの見解では、最高裁はインターフェアレンス事件であることよりも、クレームの提出が遅延した理由 の合理性を重視しているとのことです。
また第二にレメルソンは、1952年の特許法改正により審査懈怠論は廃止されていると主張しました。1952年の 特許法改正では、それまで判例法や実務として認められていた継続出願、分割出願を規定する120条、121条が新設されています。CAFCは立法の経緯や 立法趣旨から、これらの規定により審査懈怠論を廃止するという意図や目的はなく、審査懈怠論が有効であることを確認しました。
さらにレメルソンは第三として、審査懈怠論をCAFCが否定した2件の先例とならない判例 (nonprecedential opinion)が、第8巡回裁判所のアナスタソフ判決で述べられた論理によってCAFCを拘束するとも主張しましたが、CAFCは認めませんでした。
なお今回の判決に対しニューマン判事は、特許法および規則を遵守する限り継続出願に対して制裁を科すことはできな いとして、反対意見を述べられておられます。4.まとめ
レメルソンのマシンビジョン特許については、本当に有効かどうかが判らないまま訴訟やライセンス交渉が行われてき ており、これまで特許の有効性を正面から判断した判決がほとんどありませんでした。それだけに今回の裁判の行方は関係者の間で注目されていました。 CAFCの明確な判断が下されたことは、今後の特許制度の安定にも大きく寄与すると思われます。一方で当然ながらレメルソン側の上告が予想され、今後の動 向にも注意する必要があります。
なお今回の判決に関しては、アレックス・シャルトーヴ米国特許弁護士(Alex Chartove)からも情報を戴いています。この場を借りて お礼を申し上げます。情報元および関連情報:
・Alex Chartove, "CAFC says Lemelson Patents Could Be Unenforceable." The CAFC Study Forum (January 25, 2002).
http://communities.msn.com/TheCAFCStudyForum/_notifications.msnw?type=msg&action=showdiscussion&parent=1&item=10
(閲覧には無料のユーザ登録が必要です。)
・Symbol Tech., Inc., et al.,v. Lemelson Med., Educ. & Research Found., Ltd. P'ship, L.P. 00-1583 (Fed. Cir. 2002).
http://www.ipo.org/2002/IPcourts/Symbol_v_Lemelson.htm
合議体:メイヤー、ニューマン、クレベンジャー判事
判決文:メイヤー首席判事
争点:Whether, as a matter of law, the equitable doctrine of laches may be applied to bar enforcement of patent claims that issued after an unreasonable and unexplained delay in prosecution even though the applicant complied with pertinent statutes and rules.
・Woodbridge v. United States, 263 U.S. 50 (1923).
・Webster Electric Co. v. Splitdorf Electrical Co., 264 U.S. 463 (1924).
・Anastasoff v. United States, 223 F.3d 898 (8th Cir. 2000), vacated as moot, 235 F.3d 1054 (8th Cir. 2000) (en banc).
・4 Donald S. Chisum, Patents §11.05[1] at 11-264 (1996)
"Possible implications of Webster Electric outside the interference context were dispelled by the Supreme Court in Crown Cork & Seal Co. v. Ferdinand Gutmann Co."
・Thomas G. Eshweiler, "Ford v. Lemelson and Continuing Application Laches Revisited", 79 J. Pat. & Trademark Off. Soc'y 457 (1997).
・Bott v. Four Star Corp., 1988 WL 54107 (Fed. Cir. May 26, 1988).
・Ricoh Co. v. Nashua Corp., 1999 WL 88969 (Fed. Cir. Feb 18, 1999).
・Symbol Tech., Inc., et al.,v. Lemelson Med., Educ. & Research Found., Ltd. P'ship, 99-CV-0397 (D. Nev. Mar. 21, 2000).
・"Landmark Federal Circuit Opinion Says Lemelson Patents Could Be Unenforceable for Unreasonable Delay in USPTO." IPO Daily News (January 25, 2002).
http://www.ipo.org/whatsnew.html#jan25
・Nicholas Varchaver, "The Patent King," Fortune (May 14, 2001).
http://www.fortune.com/indexw.jhtml?channel=artcol.jhtml&doc_id=202216
コグネックス社のCEOロバート・シルマン(Robert Shillman)氏のコメントが写真入りで紹介されています。レメルソンを知るには最適の記事です。
2002年1月14日1.2001年特許取得件数ランキング 米特許庁が恒例の年間特許取得件数の多かった企業を発表しています。トップ3位は前回と同様、IBM、 NEC、キヤノンで、前回4位だったサムスン電子が5位になった替わりに、前回7位だったマイクロン・テクノロジーが300件以上増やして4位に浮上して います。日本企業が赤字続きのDRAM事業から続々と撤退している状況からすると興味深い結果に映ります。
詳細なデータは米特許庁のホームページなどから入手できます。情報元および関連情報:
・"USPTO RELEASES ANNUAL LIST OF TOP 10 ORGANIZATIONS RECEIVING MOST PATENTS: IBM repeats at top of list," USPTO (January 10, 2002).
http://www.uspto.gov/web/offices/com/speeches/02-01.htm
・「米国特許、9年連続のIBMが断トツ」日経エレクトロニクス2002年1月27日号p.42
2000年と2001年のデータをグラフで表示してくれており、上位各社の増減が非常に分かり易いです。
2002年1月10日1.マッケルビー判事が辞任 ある弁護士によると、米国特許訴訟の裁判地として最も人気のある連邦裁判所は、バージニア州とデラウェア州 だ(った)そうです。バージニアが人気があるのは、ロケット・ドケットとして知られる特急審理で名高い東部地区のバージニア州アーリントン支部があるか ら、という理由が容易に想像できます。ではデラウェアはどうでしょう?法律の関係からデラウェア州に本拠を置く企業が多いという側面はあるでしょうが、デ ラウェア州ウィルミントンにある同州連邦地裁にはロデリック・マッケルビー判事(U.S. District Court Judge Roderick R. McKelvie)がいたから、というのも大きな要因であったと思われます。マッケルビー判事は特許案件に卓越したおそらく最も高名な連邦地裁裁判官で、 先日報告したLNPエンジニアリング・プラスチック社事件も同判事の担当でした。
IPOデイリーニュースによると、同判事が5月31日付で辞任されるとの発表があったそうです。民間への転職を考 えれおられるそうで、裁判官辞任によって過去ご自身が議論した企業、団体が関わる事件を担当しなければならない事態を自ら忌避できる、とコメントされてい ます。
その後、大手特許法律事務所のフィッシュ&ニーブ(Fish & Neave)に入所されたそうです。情報元および関連情報:
・"JUDGE MCKELVIE TO RESIGN," IPO Daily News (JANUARY 9, 2002).
http://www.ipo.org/whatsnew.html
2002年1月9日 トランスクリプトが公式に入手可能になりました。1.フェスト最高裁事件の口頭審理
米国時間の1月8日、注目のフェスト事件について連邦最高裁にて口頭審理(oral argument)が開かれました。いくつかリポートが届いております。最高裁はフェストCAFC判決に否定的であろうというのが大方の予想(というか希 望)であったと思われましたが、トランスクリプトを読んだ限りでは必ずしもそうとは断言できない感じで、最高裁判事が事件の重要性を認識した上で迷ってい るような印象を受けました。本年5月頃までに下されるであろう判決が待たれるところです。トランスクリプトではどの裁判官がどの質問をされたかは明記され ていないので、以下はニュースや推測に基づいています。
レンキスト最高裁首席判事とケネディ、スカリア判事はCAFCの大法廷判決による厳格適用ルールは行き過ぎでない かと疑問を投げかけています。
一方、ブレイヤー、スティーブンス判事はCAFC判決を支持しているようです。ブレイヤー判事は、均等論侵害によ り生じる不確実さがあるため、CAFCのフェスト判決で確立した「明確な線引き」ルールが必要であると述べられました。
これに対し、フェスト社の代理人であるロバート・ボーク弁護士(Robert H. Bork)は厳しい主張を展開し、CAFCの判示は1853年から連綿と続く均等論を廃止するものであると述べました。「問題が均等論であるとすれば、そ の答えは特許庁に規則を策定させるか、あるいは連邦議会に均等論を無効にさせるかして均等論を廃止することとなる」と述べました。なおボーク弁護士は元司 法省長官(former U.S. Solicitor General)で、最高裁判事の候補にも名前が挙げられていましたが、最終的に現在在任中のケネディ最高裁判事が指名を勝ち取ったという経緯がありま す。
これに対し、燒結金属工業の代理人としてCAFC大法廷に続き法廷に立ったニュースタッド弁護士(Arthur I. Neustadt)は、技術革新には明確ルールが必要であると訴えました。最終的に実効性のないクレームであったとしても、それがあるために均等論侵害で 訴えられて差し止めや製造中止、損害賠償のおそれがある以上、誰もその技術分野で研究開発を進めようとはしないという理論です。2000年に認められた特 許侵害訴訟31件のうち、27件は均等論侵害でなく文言侵害でした。
また一方で、本件では司法省も口頭弁論への参加が事前に認められていました。司法省のアミカス・ブリーフは両当事 者の意見に不満を表明していたにもかかわらず、ウォレス司法次官(Deputy Solicitor General Lawrence G. Wallace)はほとんどの時間をCAFCの明確ルールを支持することに費やしました。
ボーク弁護士もニュースタッド弁護士も、ワーナージェンキンソン最高裁判決が自己の見解を支持しているとそれぞれ 主張しています。ただしニュースタッド弁護士に対し、ケネディ判事は「我々がワーナージェンキンソンで述べたことを拡大解釈し過ぎている」として疑問を呈 されました。
本件についてはアレックス・シャルトーヴ米国特許弁護士(Alex Chartove)から情報を頂いております。氏の運営される 「CAFC研究フォーラム」ではレポートの原文を読むことができます(無料のユーザー登録が必要)。情報元および関連情報:
・Alex Chartove, "brief report on today's Festo hearing," The CAFC Study Forum (January 9, 2002).
http://communities.msn.com/TheCAFCStudyForum/general.msnw?action=get_message&mview=0&ID_Message=8&pss=k
・Tony Mauro (American Lawyer Media), "Supreme Court Hears Arguments in Landmark 'Festo' Patent Case," law.com (January 9, 2002).
http://www.law.com/professionals/iplaw.html
こちらのレポートは、かなりフェスト社寄りです。
・"LANDMARK PATENT EQUIVALENTS CASE ARGUED IN SUPREME COURT," IPO Daily News (January 9, 2002).
http://www.ipo.org/whatsnew.html
"...IPO did not take a position on this case."
IPOでは会員間で意見の対立があったため、本件ではいずれの立場も支持していません。
・Greg Aharonian, "Observations on the Festo hearing," Internet Patent News Service (January 8, 2002).
・Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co.,No. 00-1543 (U.S. 2002).
http://supreme.lp.findlaw.com/supreme_court/docket/2001/january.html#00-1543
・ARGUMENT TRANSCRIPTS
http://www.supremecourtus.gov/oral_arguments/argument_transcripts.html
http://a257.g.akamaitech.net/7/257/2422/30jan20021630/www.supremecourtus.gov/oral_arguments/argument_transcripts/00-1543.pdf
PDFファイルで49ページ(レターサイズ)
・"Parties Debate Estoppel Limits On Doctrine of Equivalents Infringement." 63 Pat. TM&Copyright J. 226 (January 11, 2002).
http://ipcenter.bna.com/PIC/ippic.nsf/(Index)/C3BFD3972E510DD985256B410054FF11?OpenDocument
無料で閲覧できます。
・Exhibit Supply Co. v. Ace Patents Corp., 315 U.S. 126 (1942).
2002年1月5日1.日本語引例の不提出のみで不衡平行為が認 定されるものでない 米国出願でIDSとして日本語公報などを提出する際、全文英訳を付けるかどうかは、非常に難しい問題です。 以前話題になった半エネ研対サムスン電子事件では、日本公開公報の全文翻訳を提出しなかったことなどを理由に、最終的に不衡平行為が認定され特許は権利行 使不能とされました。この判決により、従来からの実務であった英文抄録のみの添付の是非が問われ、一部の企業ではIDSで提出する日本語文献すべてに全文 訳を付けることにしたという話も聞きます。確かに、確実性を重んじるならばもっともな判断ですが、出願全件に実施するには負担が大きすぎるのも事実です。 仮に全訳を付けないと特許が無効になるかもしれないという強迫観念にかられているのであれば、それは誤解されています。
不衡平行為の認定は確かに怖いですが、簡単に認定されるものでありません。例えば、単に文献を提出しなかったか ら、あるいは翻訳文を提出しなかったからというだけで、直ちに認定されるものではないのです。そこには、特許庁を欺こうとする意図(intent to deceive)、すなわち「故意」や「重過失」などの認定が必要です。この点を思い出させてくれる判決がCAFCでありました。
LNPエンジニアリング・プラスチック社対ミラー・ウエイスト・ミルズ社事件では、米国特許に対応する日本出願の 審査過程で日本特許庁に引用された日本公開公報について、再審査の過程で米特許庁に提出しなかった点が争われました。具体的には、日本語公報の部分訳を所 有していた代理人が、これは特許庁に提出した関連出願と重複するものであるから本件特許に重要でないと判断し、再審査の過程で米特許庁に提出しませんでし た。しかし連邦地裁は提出されなかった日本公報が重要であると認定しました。ここで、日本特許庁が既に特許性に関連有りとして引用していた日本公報につい て、代理人が全文翻訳を入手しなかったことが問題とされました。
しかしながら、地裁はこの代理人の行為全体から、米特許庁を欺こうとした詐欺的意図は認められないと判断し、 CAFCもこれを支持しました。ここで判ることは、事実として引例が重要であったとしても、これを提出しなかったからといって特許権の行使が不能となるわ けではないということです。判決文を起草されたレーダー判事は、不衡平行為の認定が地裁の判断に相当依拠することに言及されています。「本件における意図 に関する地裁の判断は、公判における証人(おそらく代理人)の証言に相当重きを置いている。本法廷は控訴審において証人の信憑性や動機について評価するこ とは許されないし、事実そのような能力もない。」結局、引例が重複していない重要資料であったことが裁判所で確認され、しかも不提出であったにもかかわら ず不衡平行為は認定されませんでした。
本件は英文抄録もしくは全訳の提出の是非が争われた事件ではありませんが、開示義務に対する考え方を示唆している と思います。
裁判所は引例が重要であったかどうかだけでなく、特許を欺く意識があったかどうかを判断して不衡平行為を認定しま す。つまり、故意に引例を隠そうとしたり相当な不注意があったという場合でなければ、仮に引例を提出しなかったとしても特許が権利行使不能とされることは 通常ない、といえます。より確実にするには、万一法廷で開示義務違反が争われたとき、欺瞞の意図がなかったことを証明する証拠を準備しておくことがベスト でしょう。例えば、担当者が文献を検討した結果、「本件技術とは無関係である」、「既に提出した文書と同内容」などの結論を、文書として残しておくことな どが考えられます。このような点を十分検討した上で、引例を提出するかどうかや翻訳文をどのようにするかといった問題は、臆することなく事案毎に正しく判 断する、ということになると思われます。関連情報:
・LNP Engineering Plastics Inc. v. Miller Waste Mills Inc., No. 00-1501 (Fed. Cir. 2001).
http://www.ipo.org/2001/IPcourts/LNP_v_Miller.htm
...A very deferential standard of review, however, governs inequitable conduct determinations. Moreover, the district court's determination on intent in this case depended heavily on the assessment of witness testimony at trial. This court may not reassess, and indeed is incapable of reassessing, witness credibility and motive issues on review. Upon this record, this court detects no clear error in the district court's finding that Mr. Schwarze did not intend to deceive the PTO.
・"Prior Art Process May Be Relevant To Patented Product Made by That Process," 63 Pat. TM&Copyright J. 183 (January 4, 2002).
2001年11月20日1.フェスト事件の口頭弁論は1月8日 フェスト事件の上告審における口頭弁論の期日が決定しています。来年年明けの2日目に当たる2002年1月 8日に予定されています。ワシントンDC近辺にお住まいの方は、寒空に並んででも傍聴の価値あり、かもしれません。
フェスト事件に関しては米国のみならず日本でも既にかなりの議論が論じられており、論文数だけでも相当数に上って います。またCAFCの判例でも、多くの事件で引用されています。先頃のCAFC判決では、クレームを拡張補正した場合にはフェストルールが適用されない 旨の判決も出されて注目を集めました。いずれにせよ、最も重要な、最高裁の最終判断に注目が集まります。関連情報:
・"SUPREME COURT OF THE UNITED STATES OCTOBER TERM 2001:For the Session Beginning January 7, 2002"
http://www.supremecourtus.gov/oral_arguments/argument_calendars/monthlyargumentcaljanuary2002.pdf
Tuesday, January 8 (3) 00-1543 FESTO CORP. V. SHOKETSU KINZOKU KOYGO KABUSHIKI LTD.
・Dockets for 00-1543
http://www.supremecourtus.gov/docket/00-1543.htm
Jun 18 2001 Petition GRANTED.
SET FOR ARGUMENT January 8, 2002.
・Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., et al., No. 00-1543 (U.S. 2001).
http://supreme.lp.findlaw.com/supreme_court/docket/2001/unscheduled.html
・"IPC files Brief with Supreme Court in Festo," Intellectual Property Creators
http://www.ipcreators.org/SC/Festo/Festo_page.htm
アミカスブリーフを始め、各種書面をpdf形式で読むことができます。ブリーフの提出者から直接入手したのか、テ キストデータが入っていたりワードのファイルで収録されていたり、データの綺麗さではベストでしょう。
・「連邦最高裁、Festo上告事件の口頭弁論期日を来年1月8日と決定」 IPコンテンツ配信サービス11月号(日本ビジネス翻訳株式会社)
http://www.ngb.co.jp/0111151.htm
・"Festo v. SMC," Oblon, Spivak, McClelland, Maier & Neustadt, P.C.
http://www.oblon.com/Ip/seeker.php3?Festosummary.html
被告燒結金属工業株式会社側の代理人であるオブロン・スピバック事務所のサイト。F先生よりご教示いただきまし た。やはりpdfファイルがアップされています。この事務所が提出したブリーフのみテキストデータで入っているので便利です。ただし、他のブリーフはあま り綺麗に取り込まれておらず、OCRをかけるにはつらいです。
2001年6月19日 1.フェスト事件の上告受理 フェスト事件の上告が受理されたと報じられています。最高裁自体は今回の上告受理にあたって特に意見を付し ていませんが、各界からは多くの意見書が提出されていました(友人のランディ・スミス弁護士は全部のブリーフを入手したそうです。時間があったら読んでは 見たいですが、彼は本当に全部読むつもり?)。その多くは、CAFC大法廷判決がコピイストを助長すると批判的ですが、一方でIBM、フォード、コダック などの大手はCAFC判決を維持するよう主張しています。結局、権利範囲を明確に線引きすることのメリットとデメリット、どちらを選択するかが最高裁に委 ねられたという気がします。
なお、ウォールストリート・ジャーナルの記事では燒結金属工業を「フェスト社の所有する商標登録されたデザインを コピーした競合企業」と紹介しています。歴史的事件に日本企業が関与していることは感慨深いものではありますが、それが一般の米国人の目にどう写っている のかが少し気になりました。ここは家庭用ビデオ裁判で米映画会社相手に最高裁で勝利したソニーのように、法廷で勝って汚名返上して欲しいところ?でしょう か。
それはさておき、新聞やマスコミの報道では書き手の視点が記事の印象を大きく変えてしまうことがよくあります。ト レードドレスに関する先の最高裁判決ウォルマート対サマラ・ブラザーズ事件でも、確かワシントンポスト紙あたりが「最高裁、コピー商品にOKを出す」みた いな見出しを付けていました。この方が法律家でない一般大衆の興味を引けるから、という商業的な理由かどうかは判りませんが、特許に携わる一人としては、 少なくとも記事の書き手の主観を排して、事実を確認するよう心掛けたいと思います。例えば、複数の特許権で技術を包括的に保護することを「パテントポート フォリオ」と呼ぶこともあれば、「特許の囲い込み」と呼ぶこともあります。また、類似技術を「コピー」と否定的に呼んだり、肯定的に「デザイニング・アラ ウンド」と呼んだりします(ヒルトンデイビス事件でも議論されましたが)。しかし、クレームの範囲外で研究開発することは法上認められていますし、むしろ 技術発展のため奨励さえされています。そのために、権利範囲たるクレームを明確にしようとすることは意義があるとも思えます。
ところで、既に報道されているように、フェスト側の弁護士は当初、クリントン大統領を訴追しようとした元独立検察 官のケネス・スター氏が担当でしたが、その後利益相反の問題で辞任しました。実際、彼は有名なヒューズ・エアクラフト事件で最後のCAFC控訴事件に関 わっていました。彼の所属するカークランド&エリス事務所(Kirkland & Ellis)は、重要な特許事件を一手に引き受けているのでしょうか?文字通りの「スター」に代わって担当になった別のスターは、最高裁判事に指名された こともある(承認が得られなかったそうです)ロバート・H・ボーク氏です。上告を認めさせたことで、早速面目躍如といったところでしょうか?
対する燒結金属工業側は、多くの日本企業をクライアントに抱えるオブロン・スピーバック事務所のネームドパート ナー、アーサー・ニュースタッド弁護士です。CAFCの口頭審理では結構押されていただけに、こちらも名誉挽回なるか?
無駄話ばかりで裁判での争点には意識的に触れていませんが、悪しからず。
なお、この情報はアレックス・シャルトーヴ米国特許弁護士(Alex Chartove(Morrison & Foerster LLP))、ランディ・スミス弁護士(Randolph A. Smith (Smith Patent Office))からも戴きました。この場を借りてお礼申し上げます。関連情報:
・CERTIORARI GRANTED
Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., Nos.00-1543, review granted (U.S. June 18, 2001)
The petition for a writ of certiorari is granted.
http://supct.law.cornell.edu/supct/html/061801.ZOR.html
・Brenda Sandburg, "Patent Blockbuster Goes to High Court:IP attorneys looking to U.S. Supreme Court to clear up confusion over 'Festo'" The Recorder (June 19, 2001).
http://www.law.com
・Associated Press, "Supreme Court Agrees to Consider Closely Watched 'Copycat' Patent Case," Wall Street Journal (June 18, 2001).
・"Supreme Court Agrees to Review Decision Limiting Equivalents Infringement," 62 Pat. TM&Copyright J. (June 22, 2001).
http://ipcenter.bna.com/ipcenter/1,1103,1_906,00.html
・Warner-Jenkinson Co. v. Hilton Davis Chemical Co., 520 U.S. 17, 41 USPQ2d 1865 (1997).
・Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., 234 F.3d 558, 56 USPQ2d 1865 (Fed. Cir. 2000). (Festo III)
・Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., 172 F.3d 1361, 50 USPQ2d 1385 (Fed. Cir. 1999). (Festo II)
・Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., 72 F.3d 857, 37 USPQ2d 1161 (Fed. Cir. 1995). (Festo I)
・"No Equivalents Claims Are Permitted On Elements Amended for Patentability," 61 at. TM&Copyright J. (December 01, 2000).
http://ipcenter.bna.com/ipcenter/1,1103,1_712,00.html
2001年4月10日1.フェスト事件は係属中の全件に適用あり? 議論の続くフェストCAFC大法廷判決は、最高裁への上告も絡んで未だ影響が確定していませんが、CAFC の見解によれば、フェスト・ルールは係属中のすべての事件に対し、遡及的に適用される模様です。
先例とならない判決(non-precedential decision)であるインサイチュフォーム・テクノロジーズ社対キャット・コントラクティング社事件において、CAFCは既に地裁で均等論侵害が認め られCAFC自身が認容したものであっても、フェスト事件を適用して改めて非侵害と判決しています。
本件では破損した下水管などの修理方法に関する特許が争われています。テキサス南部地区連邦地裁は紆余曲折を経て 均等論侵害を認めました。CAFCは均等論侵害を支持する一方で、他の争点につき地裁に差し戻しています。その後の地裁の判決に対し、両当事者はさらに CAFCに控訴しました。ところが、控訴審の口頭弁論の後CAFCによりフェスト判決が下されたため、被告であるキャット社がフェスト判決に従って均等論 侵害ありの地裁判決を破棄するよう求めたのが本件です。
CAFCのシャル判事は、連邦最高裁のハーパー対バージニア州税務局事件を引用し、「フェスト事件で確立した法理 をフェスト事件の当事者に適用した以上、フェスト事件の判示は(CAFCへの)直接控訴において未決となっているすべての事件、およびフェスト判決の判決 日の前後を問わずすべての事案に関して、完全な遡及効を与えなければならない」と判示しています。さらにジェームズBビーム・ディスティリング社対ジョー ジア州最高裁判決を引用し、「裁判所がある事件において当事者に法理を適用したときは、他のすべての事件に関しても手続的要件や既判事項(res judicata)で禁止されない限りは同様に適用しなければならない」とも述べています。したがって、従前の判決で審査経過禁反言や均等論侵害について CAFCが既に決定した事項であっても、これらの事項が控訴審において未決であるならば、フェスト判決を適用しなければならないということです。
原告のインサイチュフォーム社は、最終判決は既判事項によって拘束力を有し、地裁で最終判決が下されている点を主 張しましたが、その最終判決に対して控訴されていることや、最終判決が未決で控訴審における再審理の対象であること、さらに更なる審理のため地裁に差し戻 されているため最終判決にあたらないことなどから、この主張は退けられています。
一方、「当該事件における法理」の原則(law of the case doctrine)によれば、従前の判決を変更することはできないことになっています。しかし、先日のリットン事件でフェスト判決を適用したのと同様、本 件でもこの原則の例外が適用されています。要するに、適用される法理が争点に係る法律問題について相反する決定を導くような場合には、「当該事件における 法理」の原則は適用されません。この結果、「フェスト判決の適用が手続的要件や既判事項で禁止されない場合は、再審理の対象とされるすべての事件に対し、 フェスト事件で述べた法理を適用しなければならない」と結論しています。以上より、本件においてもフェスト事件の均等論完全阻却理論(コンプリート・ バー)が採用され、均等論侵害は否定されました。
フェスト判決を適用する判決が増えるに従い、どのような具体的基準や見解が示されるのかが気になるところですが、 今のところは「クレーム補正があれば均等なし」というシンプルなルールのみが強調されることが多いようです。ただ、実務上の対策として一部で提唱されてい る、クレーム補正に代えて旧クレームを削除し、新クレームを追加するというやり方では、実質的にクレーム減縮となって完全阻却を逃れることはできないとい うフェスト判決での判示は追認されています。
フェスト判決が出たからといって、最高裁での上告が確定するまでは下手な動きは禁物(包袋中にクレーム補正がある から安易に非侵害と決め込むなど)といわれていますが、そのような懸念をよそにCAFCは我が道をどんどん進んでいるようです。それにしても、このような 重要な判示があるにもかかわらず何故CAFCは本件をアンパブリッシュド(unpublished)、としたのでしょうか。お陰で、先例判決 (published opinion)のみを扱うIPOデイリーニュースには本件は掲載されていませんでした。アンパブリッシュド・オピニオン、すなわち非先例判決は公開はさ れるし判例集にも掲載されますが、先例として他の判決中で引用することはできないとされています(CAFC規則47.6)。
PTCJのコメントによれば、新たな判例は必ずしも遡及的に適用されてきたわけではないようです。例えば有名な ヒューズ事件では、本件とは逆に「当該事件における法理」原則に従い、ペンウォルト大法廷判決による「構成要件毎」の基準によらず「発明全体」として均等 であると判断しました。ところがその後のワーナージェンキンソン最高裁判決を受けた差し戻し審においては、CAFCはヒューズ事件の均等性判断は構成要件 毎の基準と完全に一致していると述べています。理屈は通りますがご都合主義的にも見えます。
なお、本件のシャル判事はフェスト判決でも多数意見を起草されています。今回の合議体を構成したメイヤー主席判事 は、先日のリットン事件で多数意見を起草されました。情報元および参考資料:
・Insituform Technologies Inc. v. Cat Contracting Inc., No. 99-1584 (Fed. Cir. 3/26/01).
http://www.finnegan.com/cases/99-1584.htm
(合議体はメイヤー、ミシェル、シャル判事)
・"Festo Applies Retroactively To All Open Patent Cases," 61 Pat. TM&Copyright J. 538 (April 6, 2001).
http://ipcenter.bna.com/ipcenter/1,1103,1_867,00.html
・Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., Ltd., 234 F.3d 558, 56 USPQ2d 1865 (Fed. Cir. 2000).
・Harper v. Va. Dep't of Taxation, 509 U.S. 86, 97 (1993).
・James B. Beam Distilling Co. v. Ga., 501 U.S. 529, 544 (1991).
・Litton Systems, Inc. v. Honeywell Inc., 238 F.3d 1376, 57 USPQ2d 1653 (Fed. Cir. 2001).
2001年2月9日1.リットン事件も均等論侵害なし フェスト事件でCAFC大法廷が確立した審査経過禁反言の厳格適用ルールが、リットン事件でも適用されまし た。2001年2月5日、リットン対ハネウェル事件においてCAFCは、特許法112条第2段違反で補正された再発行特許について、明らかに特許性に関す る法定要件のため補正されたものであるとして禁反言の適用を認め、均等論の主張を認めず非侵害との判決を下しました。
本件でCAFC首席判事のメイヤー判事は、112条第2項「発明者が自身の発明と見なす事項をクレームする」要件 に対する違反を、明らかに特許性に関する補正であるとし、フェスト判決に従い禁反言の完全適用(コンプリート・バー)を認めました。そしてクレーム構成要 件に関して禁反言が働く場合は、斯かる構成要件について均等の範囲は一切認められないというフェスト判決に従って、非侵害を認定しています。
一方、「当該事件における法理(the law of the case)」という判例上確立された原則があり、訴訟の前の段階で判断された争点については例外を除いて再審理しないとされています。ただ、この原則は裁 量であり、また例外として(1)斯かる争点に適用される法理について相反する判決が拘束力を有する裁判所でなされた場合、(2)従前の決定が明らかに誤っ ており司法の実体に反するよう働く場合については除外されています。したがって、CAFCは補正されたクレーム構成要件に及ぶ禁反言の範囲の問題について 相反する法則を採用しているため、フェスト判決の定める禁反言完全適用を本件で採用することは上記原則によっても妨げられないと判断されました。
さらに今回の判決はヒューズ事件とも矛盾しないと判示されています。ヒューズ事件は介在する大法廷判決であるペン ウォルト事件に完全に従っており、またワーナージェンキンソン事件での判示事項を変更するような事由は見あたらないため、矛盾する結論を導くものでないと メイヤー判事は判断しています。
フェスト事件はCAFC判事の間でも大きく意見が割れているため、今後の動向は依然不透明と思われていますが、今 回フェスト判決に従った判断が下されたため、同判決のいう禁反言の厳格適用という方向性がまずは確認されたと言えます。特に、102条、103条違反に限 らず112条、101条違反でも特許性に関する補正理由となり得る、と判示されていた訳ですが、本当に112条違反でも定常的に均等論侵害が主張できなく なるのか、あるいは特殊なケースに限られるのか、若干疑義がありましたが、今回の判断により一般原則として適用される模様であることが確認されました。つ まり、フェスト判決が文面上宣言している均等論の大幅制限という状況を、現実に起こっているものとして認識する必要があるでしょう。よって、均等論に頼ら ないクレームドラフティングと、審査段階における補正理由の明確化という実務を改めて見直し、徹底させることが重要かと思われます。
フェスト大法廷判決の議論はまだ収束しておらず、実務上の対策も未だ意見が割れています。クレーム範囲の異なる独 立クレームや従属クレームを出願時に多く立てておいて、審査段階で補正することなく削除で対応するという案と、そのような方策は意味をなさないという意見 とが対立しています。個人的には、少なくとも引例回避のための補正であることが明白であり認めざるを得ない場合は補正理由を意見書中で明記しておく、これ は確実に言えますが、難しいのは曖昧な場合です。この場合についても正直に、つまり後で問題となったときに合理的な理由を弁明できるように、審査段階で明 記しておくべきと考えています。均等範囲を完全に剥奪される最悪の事態を考えれば、少しでも救える可能性のある範囲を残しておく方が安全と思うからです。 ただ、本当にこの判決が今後支配的になるのか、ひょっとしたら将来最高裁で覆される、あるいは数年後にCAFC自身が再度見解を変更、修正する可能性もあ るため(まさに今CAFCは自身の見解を自ら覆している訳ですから、数年後にまた同じことが起こらないとはいえません)、今の時点ではこれがベターであろ うとしか言えません。関連情報:
・"Federal Circuit Applies 'Complete Bar' Rule of Festo Case in Deciding Honeywell Did Not Infringe Patent Under Doctrine of Equivalents," IPO Daily News (Feb. 8, 2001).
http://www.ipo.org/whatsnew.html
・Litton Systems, Inc. v. Honeywell Inc., No. 00-1241 (Fed. Cir. 2001).
http://www.ipo.org/2001/IPcourts/litton_v_honeywell.htm
フェスト事件に比べると随分短いので、読みやすいです。事実関係の詳細は、前回のCAFC判決にあたってくださ い。
・Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., Ltd., 234 F.3d 558, 56 USPQ2d 1865 (Fed. Cir. 2000).
http://www.ipo.org/Festo.htm
2001年1月28日1.CAFC、再度大法廷で均等論を扱う フェスト事件の混乱が収集しないまま、CAFCは再び別件での大法廷審理を決定しました。
ジョンソン&ジョンストン対REサービス事件に関して、一昨年の1999年12月7日に口頭弁論が3人のCAFC 判事による合議体において行われています。この件で判決書は出ていないようですが、2001年1月24日、CAFCは所属判事全員で本件を審理することを 決定しました。本件の詳細な事実関係は不明ですが、争点となっているのは明細書で開示した事項でクレームしなかった事項は、均等論で保護されるか否か、の ようです。
CAFCの決定によれば、以下の点が審議されるとあります。
(1) 明細書で開示されクレームされなかった技術的事項に関し、特許権者は均等論を主張できるか否か?できるとす ればどのような条件下において認められるか?
(2) 本件において特許権者は明細書で開示したがクレームしなかった技術的事項について均等論の主張を妨げられる ため、陪審による侵害ありとの認定は破棄すべきか否か?
この論点については、先例として有名なマスクウェル事件とYBM事件が対立しています。マクスウェル事件では、ク レームしなかった事項に関しては均等論でカバーできないとされましたが、逆にその後のYBM事件では均等論による保護を認めています。両者の明確な区別が 不明瞭であったため、明細書に開示されたがクレームされなかった事項について均等の範囲が及ぶか否か、本件で明確な指針が示されるものと期待されます。
なおこの問題については以前に早稲田大学の高林龍教授よりご教示をいただいております。ご参考までに、そのときの 模様を私なりにまとめたものをアップしておきます。関連情報:
・Johnson & Johnston Assoc. Inc. v. R.E. Service Co., en banc ordered, 99-1076, -1179, -1180 (Fed. Cir. 2001).
http://www.ipo.org/2001/IPcourts/Johnson.htm
・IPO Daily News (Jan. 26, 2001).
http://www.ipo.org/whatsnew.html
・Maxwell v. J. Baker Inc., 86 F.3d 1098, 39 USPQ2d 1001 (Fed.Cir. 6/11/1996), cert. denied, 117 S. Ct. 1244 (1997).
http://www.ll.georgetown.edu/Fed-Ct/Circuit/fed/opinions/95-1292.html
・"SYSTEM DISCLOSED BUT NOT CLAIMED BARS EQUIVALENTS INFRINGEMENT FINDING," 52 PTCJ 198 (6/13/96).
・YBM Magnex Inc. v. ITC, 145 F3d 1317, 46 USPQ2d 1843 (Fed. Cir. 5/27/1998).
http://www.law.emory.edu/fedcircuit/may98/97-1409.wpd.html
・"Equivalents Charge May Be Based On Disclosed But Unclaimed Matter," 56 PTCJ 134 (6/4/98).
・"En Banc Federal Circuit Will Decide Status of Disclosed But Unclaimed Matter," 61 PTCJ (February 2, 2001).
http://ipcenter.bna.com/ipcenter/1,1103,1_820,00.html
2000年12月18日1.フェストウ事件の論考 話題のフェストウCAFC判決について、多くの論評が発表され始めています。例えば、クレーム補正で均等論 を制限されるのであれば、クレームを補正しない、つまりクレームを削除して新たなクレームを追加するようにする、などのテクニックが紹介されています。ど のような方向に事務が傾くのか、しばらく様子を見る必要がありますが、個人的な考えではそのようなテクニックに走ることは危険であるような気がします。こ れまでのCAFCの動向を見ると、ルーティーンなテクニックを否定してるように思えるからです。技法を凝らして魔法の言葉を考え出すよりも、出願審査段階 における従来の「(補正理由など)要らないことは言わない」という態度から、「必要なことははっきりと言う」方向に転換するのがベターではないでしょう か。つまり補正理由はすべて明確にして、権利取得のため必要な場合はクレーム範囲の一部を疑義なく放棄するのが結局は安全かつ確実でないかと現在のところ 考えています。
なお、112条違反でも「特許性に関する理由」、つまり禁反言が働くことを考えると、無用な補正を一層排除する必 要があるでしょう。特に我々日本人の書く明細書では、クレームの記載不備として112条第2項違反の拒絶を受けることが多いです。このような事態を回避す るために、例えばネイティブによる出願前チェック(あるいは出願前に余裕を持って代理人に明細書を送付し、特許弁護士による少なくともクレームのリビュー を受けるようにする)がより一層重要になると思われます。
2.ハイパーリンク特許 これも話題になったブリティッシュテレコムのハイパーリンク特許について、同社は米大手ISPのプロジディ 社をニューヨーク連邦地裁において特許侵害で訴えた模様です。BT社はライセンス契約の申し出(実質的には警告状)を17社のISPに送付したようです が、今後の展開に興味あるところです。
情報元:
・Gregory Aharonian, "Another pre-IPO IP job; BT sues Prodigy; More on Festo and DOE," Internet Patent News (Dec. 18, 2000).
2000年12月1日均等論の適用はさらに制限方向に 待たれていたフェスト対燒結金属工業事件のCAFC大法廷判決が、サンクスギビング休暇明け早々の11月 29日に出されました。判決は被告燒結金属の逆転勝訴で、問題となった2件の特許について特許性に関するクレーム補正がなされていたため、引例のない自発 補正であっても審査経過禁反言が働き、その結果として均等論の適用はなく、したがって文言侵害、均等論侵害ともに無しというものです。
判決理由によれば、特許性に関する理由でクレームの構成要件が補正された場合、均等論の適用は完全に制限されると 判示されており、従前のセクスタント判決を踏襲したものとなっています。このため「自発補正や112条の場合は禁反言が働かない」という法理は(既に破棄 された本件フェスト事件の従前の判決では採用されていましたが)覆されたことが確認されました。この結果、均等論に対する制限は今後ますます厳しくなって いくものと予想されます。
判決文は予想通り長大なもので、169ページにもわたる力作です。本大法廷において提示されていた5つの問題につ いて、それぞれ詳細な検討がなされています。(1) クレーム補正が禁反言を生じるか否かを判断する際、「特許性に関する実質的な理由(a substantial reason related to patentability" )」とは先行技術を回避するためになされた補正に限定されるか?
→引例回避のための補正に制限されず、特許性の法定要件に関するあらゆる理由が含まれる。102条や103条の補正 に限らず、101条や112条の拒絶理由を回避するための補正も特許性に関する理由となり得る。禁反言の適用を新規性や非自明性理由の補正に制限すれば、 審査経過禁反言の機能が果たせなくなる。ワーナージェンキンソン最高裁判決は明確に答えていないが、この判示に反しないと思われる。(2) 審査官の求めや拒絶理由通知に応答するためでなく、自発的に行ったクレーム補正は禁反言を生じるか?
→自発補正も他のクレーム補正と同様に扱うので、特許性に関する理由でクレーム範囲を減縮したのであれば禁反言を生 じる。特許庁が特許性無しと判断した場合と出願人自らが特許性無しと判断した場合とで取り扱いに差を設ける理由がない。これは出願人の主張に起因する禁反 言の法理の扱いとも一致する。(3) クレーム補正により審査経過禁反言が生じるとき、補正に係るクレームの構成要件について均等の範囲は どの程度残されているのか?
→補正されたクレームの構成要件に関しては完全に均等論の適用が妨げられるため、均等の範囲は一切ない。1983年 のヒューズ事件以降幾度となく適用されてきた禁反言の柔軟適用を破棄し、より厳格なルール、すなわち補正に係るクレームについて均等の範囲を認めないこと とする。今日の特許の重要性に鑑みると、クレームの果たすべき公示機能、すなわち権利範囲を明確に定めるという権利書としての役目に注目する必要がある。 よって一般公衆が権利範囲の内と外の境界線を明確に線引きできるように、禁反言の適用を明確にする必要がある。禁反言の完全適用は、クレームがこのような 機能を果たすために最も効果的である。(4) クレーム補正の理由が立証されないため禁反言の推定が生じる場合、クレーム補正に係る構成要件に均等 の範囲はどの程度残されているか?
→補正の理由が説明できないときは当該クレームの構成要件について均等の範囲は一切認められない。この問題はワー ナージェンキンソン最高裁判決で言及されており、CAFCもセクスタント事件での判示を追認する。(5) 本件における侵害との判決は、ワーナージェンキンソン最高裁判決で判示された均等論の適用について 「ある構成要件を全体として無視するような拡大適用は認められない」との要件に違反することになるか?
→今回の特定の事件においては回答を要しない。よって「オールエレメントルール」の議論は後日行う。特に(3)の議論はもっとも詳細な検討が展開されていますので、是非ご確認下さい。また同意意見、反対意見 についても、各判事の考え方が表れており大変興味深いです。今後、本件に関する論文は山のように出てくるでしょうから、米実務家の意見にも注目したいとこ ろです。
今回の決定により、多くの方が言われていた均等論制限の方向性が明確になりました。特許に携わる者としては、均等 論に頼らない正確なクレームドラフティングがますます要求され、同時に中間処理における言及には細心の注意を払う必要があると改めて認識しました。今後の 実務上の対策としては、本件判決を解析して技巧的な抜け道を検討するよりも、素直にCAFCの指示した方針に沿うことの方が確実であると思われます。つま り、権利範囲を広く解釈されることを願って補正書や意見書を曖昧にしておいても、曖昧な部分はゼロとして狭く解釈されるおそれが高くなったと考えられます から、曖昧さを極力排する必要があるでしょう。拒絶理由に応答する際には、何が根拠で拒絶されているのか、そのために具体的にどこを補正したのかを詳細に 説明することが結局は確実であると思われます。関連情報:
・Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., No. 95-1066 (Fed. Cir. 11/29/00).
http://www.ipo.org/Festo.htm
・Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., 187 F.3d 1381, 51 USPQ2d 1959 (Fed. Cir. 1999).
・[Vocated] Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., 172 F.3d 1361, 50 USPQ2d 1385 (Fed. Cir. 1999).
・[Vocated] Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., 72 F.3d 857, 37 USPQ2d 1161 (Fed. Cir. 1995).
・"No Equivalents Claims Are Permitted On Elements Amended for Patentability," 61 Pat. TM.& Copyright J., 104 (December 1, 2000).
・IPO Daily News (November 30, 2000).
極めて分かり易くイエス/ノーが示されています。
・Jonathan Ringel, "Federal Circuit Renders 'Doctrine of Equivalents' Toothless for Certain Plaintiffs," American Lawyer Media (December 4, 2000),
2000年10月3日ビジネス方法特許改善法案
本日、「2000年ビジネス方法特許改善法(Business Method Patent Improvements Act of 2000Business Method Patent Improvements Act of 2000)」がハワード・ブレナン議員(Howard Berman)により提出されました。この法案が今年連邦議会通過する可能性は低いですが(今会期106議会は間もなく閉会します)、米国でも問題となっ ているビジネスモデル特許(最近の日本特許庁の定義に従い、「ビジネス方法特許」と呼ぶことにします)について、通常の特許以上の制限を加えようとする動 きは注目する価値があるでしょう。
この情報は友人のアレックス・シャルトーヴ米国特許弁護士(Alex Chartove)より頂きました。同氏によりますと、法案の 概要は以下のようなものだそうです。A.ビジネス方法の定義
現在、米国特許法にはビジネス方法特許の定義がなく、判例でも明らかにされていません。今回の法案では、極めて広 範な定義がなされています。
(1) 「ビジネス方法」とは、以下を指す。
(A) 企業や団体を管理運営その他営む方法であり、ビジネスを行う際に使用する技術を含む
(B) 金融関係のデータ処理方法
(2) 運動、指導その他の人的技能に用いられる技術
(3) (1)で述べる方法あるいは(2)で述べる技術のコンピュータを利用した実施
さらに「ビジネス方法発明」についても広範な定義がなされており、
(1) ソフトウェアその他の装置を含むビジネス方法であるすべての発明
(2) ビジネス方法であるクレームを含むあらゆる発明
このような定義だと、悪名高いゴルフパット方法のような特許も含まれそうです。しかし、各定義の解釈はさらに議論 の余地があるでしょう。B.180日後公開
ビジネス方法特許出願については、特許付与前に18ヶ月の出願公開と別に、出願日から180日で公開される提案も なされています。C.立証責任
現行の米特許法では、特許を無効にするには「明白かつ説得力のある基準(clear and convincing evidence)」という比較的高い立証基準が要求されています。しかし今回の法案では、これよりも低い「証拠の優越(preponderance of the evidence)」基準で特許の無効を主張できるように改められています。D.自明性の推定
通常の特許出願では、特許庁が特許の無効性を立証しなければならず、これができない出願は特許として成立させなけ ればなりません。しかしビジネス方法出願については、特許庁審査官に出願を拒絶にする能力や設備が不足していると指摘されています。先行技術となる特許公 報が殆ど存在しないため、引用文献のサーチができず、その結果特許性の疑わしい特許でも拒絶できないために特許として成立することが問題とされています。
今回の法案では、ビジネス方法特許出願について特許庁側の義務が留保され、立証責任が転嫁されています。つまり、 コンピュータで実施するビジネス方法を出願した場合、特許出願人側が特許性があることを立証しなければなりません。E.先行技術調査に関する要件
現行の特許制度では、出願前に出願人が先行技術調査を行う義務はありません。
これに対し法案では、ビジネス方法特許出願については調査結果の開示義務が課せられています。これは調査結果を開 示する義務ではなく、出願人が先行技術を調査したレベル(範囲?)についての報告義務です。以上はあくまでも法案の段階でありますから、これが今後のトレンドであると早計されることのないようにご注 意願います。
例えば、先頃アマゾン・ドットコム社がワンクリック特許を取得したことについて非難に晒されたとき、ジェフ・ペゾ スCEOはビジネス方法特許については特許の権利期間を短縮すべきなどと大胆な声明を発表しました。この内容は日本でも大きく報道されましたが、このよう な言動は全く実効性のない、あくまで一私企業の見解に過ぎないという点が見逃されていたように思います。仮に同氏の提案を実行しようとすれば、条約から改 正しなければならないことになり、とても容易に実現できるレベルのものでないことが判ります。
米国ではいろいろな意見を持った人や団体が多く、好き勝手なことを述べています。その際、日本のような事前の意見 摺り合わせという発想はありません。ですから、一部の極論に振り回されることのないよう、冷静に問題点を見つめる必要があります。特に一連の日本における ビジネスモデル特許の過剰報道について感じました。
関連情報:
・Alex Chartove, Esq. (Akin, Gump, Strauss, Hauer & Feld, LLP)
・H.R. 5364, "Business Method Patent Improvements Act of 2000" proposed by Reps. Howard Berman (D-Calif.) and Rick Boucher (D-Va.).
http://www.ipo.org/BusinessMethods.pdf
PDF形式で20ページ
・"Summary of the Business Method Patent Improvements Act"
http://www.ipo.org/Berman.html
イメージファイル、非常に読みづらい
・THOMAS -- U.S. Congress on the Internet
http://thomas.loc.gov/
2000年7月20日米特許庁、ビジネス方法特許に関するホワイトペーパーを 発表
先頃、三極の専門家レベルで行われたいわゆる「ビジネスモデル特許」に関する意見摺り合わせについては、各 マスコミで大きく取り上げられ、NHKの番組でも紹介されました。要は、従来のビジネス方法を単にコンピュータ上やインターネット上で実行するだけでは進 歩性が認められない、という見解を主要国が確認したものでした。
ところが、日本の報道機関で大きく報道されたのとは対照的に、米国においてはそれほど大きなニュースとされていな かったように思います。ビジネス特許ブームは日本で先行しており、米国においては世間が考えているほどに注目されていないということが改めて浮き彫りに なった気がします。実際、日本における今のビジネスモデル特許に関する報道のされ方には問題があると私個人は考えています。一部のマスコミがセンセーショ ナルに報道して、いたずらに不安感を煽っているのではないかと思うのです。事実を正確に伝えて欲しい、そのためには報道する側がまず正確な知識を得て欲し いと望みます。
さて昨日、米特許庁もビジネス方法特許についてやっとホームページ上に正式見解を発表しています。結構分量があり ます。
米特許分類705、「自動化された金融・管理データ処理方法」、一般にビジネスモデル特許と捉えられている技術分 野に関する、米特許庁の調査結果報告というべきもので、歴史的背景の解説から特許庁での審査取り組みなどが丁寧に報告されています。まだ内容をすべて確認 した訳でありませんが、実務のみならず学術研究としても興味深いものです。
個人的に興味を引いたのは、クラス705での特許取得件数ランキング発表です。1995-1999年の統計では ピットニー・ボウズやIBM、シティバンクにマイクロソフトといった企業に加えて、富士通や日立、松下電器産業などの日本企業が名を連ねています。
なお、この情報はスミス特許事務所のランディ・スミス米特許弁護士(Randolph A. Smith)より頂きました。関連情報:
・"White Paper: Automated Financial or Management Data Processing Methods (Business Methods)", USPTO (July 19, 2000).
http://www.uspto.gov/web/menu/busmethp/index.html
・Download for White Paper
http://www.uspto.gov/web/menu/busmethp/downloads.htm
・Randolph A. Smith (Smith Patent Office)
http://www.smithpatentoffice.com/
2000年7月10日特許戦略の本
米国で昨年出版され話題になったケビン・リベット他著「Rembrandts in the attic(屋根裏部屋のレンブラント群)」の日本語版が、7月7日付けで発売されています。邦題は、「ビジネスモデル特許戦略」(NTT出版)という、 時流に沿ったありきたりのタイトルになっていますが、本書はビジネスモデル特許に限らず知的所有権全般を扱っており、特に企業の経営陣が知財をどのように 捉え、どのように活用すべきかについての多くの指針を、具体的な例を挙げながら紹介しています。法律書でなくビジネス書として簡単に読めるのでお勧めで す。
関連情報:
・ケビン・リベット、デビット・クライン著「ビジネスモデル特許戦略」(NTT出版)1900円
2000年5月17日PCT出願の継続出願は最早無意味?
前回報告しましたとおり、米国特許実務では必携とされている米国特許審査便覧、いわゆるMPEPの改訂版が 先頃発表されています。多くの部分が改訂されていますが、中でも特に日本人には興味深いと思われる箇所があります。
PCT出願で米国を指定する場合、米国においてはPCTの国内段階に移行するよりも、PCT出願に基づく優先権を 主張して継続出願(バイパス継続出願"Bypass Continuation"と呼ぶ向きもあります)を行う方が有利との見解がありました。その理由は、PCTの国内段階移行出願では、102条(e)の後 願排除効発生時が国内段階移行時(具体的には国際出願のコピーと翻訳、料金、宣言書を米特許庁に提出したとき)とされていますが、PCTに基づく継続出願 として通常の米国内出願を行えば、後願排除効の効力発生時はPCTの国際出願日に遡るというものです。その根拠は、従前のMPEP 715、1896、2136.03などに記載されていました。
ところが今回改訂された最新版MPEPによれば、PCTの継続出願であっても102条(e)の後願排除効発生は、 米国内出願の提出時になるであろうと書かれています(新MPEP 1896他)。残念ながらその理由や法的根拠については、MPEP中では詳しく検討されていません。変更された実務がいつの時点から有効なのか、過去の出 願についてはどのように扱うのか、といった疑問にも一切言及されていません。ただ、MPEPの差し替え確認用チェックリスト中で、特に注意すべき変更が加 えられた箇所として、MPEP 1896につき「当該変更は、昨年11月に成立した特許法改正で102条(e)に加えられた変更の立法経緯に沿うものである」と述べられています。
元々、PCTの継続出願で本当に後願排除効が国際出願日に遡るのか、という議論について裁判所の判例があった訳で なく、実務家の間でも疑義のあるところでした。しかし今回、特許庁の見解として従来の立場を明確に変更したことには留意しなければなりません。いずれにし ても、この問題について裁判所が判断を下すまでは本当のところは誰にも判りません(MPEPは法律でも規則でもなく、特許庁の運用実務を述べているに過ぎ ないので、特許庁の判断で自由に変更されています。裁判所がMPEPの記述を覆すことも珍しくありません。一方、裁判所がMPEPの記述を裁判の際参酌し たり依拠することもあります)。
なお、今回のMPEPの改訂部分は多岐にわたっており、これ以外にも重要な変更箇所があるやもしれません。米印刷 局発行の正規MPEPでは、上述した差し替え確認用チェックリスト(Instructions Ragarding Revision No. 1と書かれた青色のページ)に変更箇所が簡潔に説明されていますので、この部分だけでも一読をお勧めします。
この情報は、ウェンデロス・リンド&ポナックLLP特許法律事務所(Wenderoth, Lind & Ponack, LLP)のマイケル・D・デイビス氏(Micheal R. Davis)より頂きました。参考資料:
・"Manual of Patent Examining Procedure (MPEP) Edition 7 Revision 1 (E7R1), February, 2000.", USPTO (May 8, 2000).
http://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/mpep.htm
今回よりPDF形式で利用できるようになりました。なお、上述の改訂部分がまとめられた差し替え説明書は、印刷版 を購入すれば付いてきます。
・ MPEP 1896: The Differences Between a National Application Filed Under 35 U.S.C. 111(a) and a National Stage Application Filed Under 35 U.S.C. 371 [R-1]
http://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/mpep_e7r1_1800.txt...When a U.S. national application filed under 35 U.S.C. 111(a) becomes a U.S. patent, its effective date as a prior art reference against a pending application is its effective U.S. filing date other than an international filing date. See 35 U.S.C. 102(e). Thus, if the 35 U.S.C. 111(a) application claims the benefit of a prior copending PCT international application under 35 U.S.C. 120, its effective date as a reference will be the U.S. filing date of the 35 U.S.C. 111(a) application and not the international filing date. When a U.S. national stage application filed under 35 U.S.C. 371 becomes a U.S. patent, its effective date as a prior art reference against a pending application is the date applicant fulfilled the requirements of 35 U.S.C. 371(c)(1) (the basic national fee), (c)(2) (copy of the international application and a translation into English if filed in another language), and (c)(4) (an oath or declaration of the inventor). See 35 U.S.C. 102(e)...・Henry, Mark J., "The USPTO Reverses Policy on 'Bypass Continuation' Applications.", Intellectual Property Today, p 54 (May, 2000).
http://www.lawworks-iptoday.com/
同誌は相変わらず有用な情報を提供してくれていますが、上記ホームページの方は残念ながら昨年11月以降更新され ていません。
2000年5月11日MPEP最新版、発表
米特許庁での審査手続に関して、審査官のバイブル的存在である米国特許審査マニュアル(Manual of Patent Examining Procedure)、通称MPEPの最新版が発表されています。米国特許の実務に関わる方々にとっては、必携といえます。印刷版の配布は既に開始されて いますが、この度特許庁のホームページにおいても、最新版が無料で利用できるようになりました。従来のテキストファイル、HTMLに加えて、今回より PDF形式でもアップされています。
今回の改訂版は、1999年7月付の第7版を改訂した第一訂版で、2000年2月付となっています。既に発表され ている新施行規則については、2000年2月の時点で施行されているものを除き、反映されていません。したがいまして、早期公開制度や当事者系再審査につ いては、次回改訂版で扱われるものと予想されます。情報元および関連情報:
・"MPEP Edition 7 Revision 1 (E7R1) Now Available in Acrobat Portable Document Format (PDF) and Text Files.", U.S. PTO (May 11, 2000).
http://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/index.html
2000年3月20日米特許法改正を受けた施行規則案
米特許庁では昨年末に成立した改正特許法の施行に向けて、現在急ピッチで施行規則の改訂作業を進めていま す。すでに発明者保護に関する規則案は発表されていますが(日本人には殆ど関係ないので割愛しました)、本日、特許出願に関する規則案が発表されていま す。この中には、以下のような規定が含まれています。
・規定料金の支払いにより出願について継続審査請求を認めた規定
・仮出願の出願日から12ヶ月目の日が土日もしくはワシントンDCの祝日に当たる場合に、仮出願の係属期間を翌営業 日まで延長する規定
・通常出願が仮出願の出願日の利益を主張する場合の同時係属の要件を削除する規定
・仮出願から通常出願への変更を認める規定
・譲受人が共通の場合に、特定の先行技術(102条(e))を自明性拒絶の引例として適用しない規定関連情報:
・"Changes to Application Examination and Provisional Application Practice.", 65 Fed. Reg. 14865 (March 20, 2000).
http://www.access.gpo.gov/su_docs/aces/aces140.html
http://frwebgate.access.gpo.gov/cgi-bin/getdoc.cgi?dbname=2000_register&docid=fr20mr00-26
http://www.uspto.gov/web/offices/com/sol/notices/chngapplexm.pdf
2000年3月3日日本語文献の部分訳提出で不衡平行為
注目を集めていた半導体エネルギー研究所対サムスン電子事件のCAFC判決が下されています。この事件は、 IDS提出に絡む日本語文献の翻訳の問題が争われていたため、地裁判決の時点から大いに議論されてきました。結果は、部分訳に真の重要部分が開示されてい なかったことなどを理由に不衡平行為が認定され、特許権は行使不能とされています。
半導体エネルギー研究所(SEL)は、TFTに関する米国特許第5,543,636号('636特許)を有してい ます。この出願審査段階において、およそ90件の文献をIDSとして提出していました。この中には、日本公開公報昭56-135968号(キヤノン文献) も含まれていました。しかし当該文献については、英文抄録でなく、日本語のままの公開公報全文と、本願との関連性を示す簡潔な説明(concise explanation of its relevance)と、特定部分の英訳を提出していたのです。
この部分訳は、本願とは無関係な従前の別出願との関係で作成されていたもので、キヤノン文献のうち4箇所を短く説 明した1ページの翻訳文でした。この中には、本件'636特許の係争クレームに係る一の構成要件である窒化シリコンのゲート絶縁膜(silicon nitride gate insulator)の開示も含まれていました。
また関連性の簡潔な説明では、「薄膜トランジスタのゲート絶縁膜として窒化シリコンを使用するもの("the use of silicon nitride for a gate insulating layer of a thin film transistor")」とだけ書かれていました。
SELの代表であり発明者でもある山崎舜平博士は、当該部分訳が他の出願との関係で作成されていたもので既に手元 にあったため、規定に従い当該部分訳を日本語公報の全文と共に特許庁に提出することを決定したと証言しました。(MPEP609では、英語でない文献を IDSとして提出する際、翻訳文を新たに作成する必要はないとしながら、翻訳文が手元にある場合はこれを提出するよう求めています。)
さらに同氏は、キヤノン文献の部分訳提出の際に、窒化シリコンゲート絶縁膜がキヤノン文献の内で636出願と関連性 ありと思われる唯一の開示であったとも証言してます。このことは、関連性の簡潔な説明でも述べられています。
しかし、キヤノン文献の翻訳されていない部分に、636特許のクレーム発明の特許性審査と関連する記載があったこ とが裁判所により認定されたのでした。特に、翻訳されていない部分には636特許と同一の構造を開示した記述があるのにこれを翻訳せず、代わりに636特 許の構造と若干異なる開示部分を翻訳していました。要するに、翻訳されていない部分にもっと重要な、直接的な記載があったことが重視された模様です。
一方でSELは、ツァイ博士の論文(Dr. C.C. Tsai, "Amorphous Si Prepared in a UHV Plasma Deposition System")もIDSとして提出していました。同文献には、アモルファスシリコンにおける不純物の低減により電子デバイスの特性改善を図る旨が記載さ れていました。
被告サムスン側の専門家証人であるフォナッシュ博士(Dr. Fonash)は、キヤノン文献の全文訳とツァイ文献との組み合わせにより、636特許の係争クレームは自明であると主張しました。さらに同氏は、キヤノ ン文献の非翻訳部分を開示しなかったため、審査官は先行技術に照らして636出願の非自明性を検討する能力を著しく妨げられたと結論しました。これについ て山崎氏は、不衡平行為の口頭審理の際、このことを渋々認めながら、キヤノン文献の全文訳を提出することは同氏にとっては「親切すぎる」ことになり、全文 訳があれば特許庁は「より便利であったろう」と証言していました。
結局のところ本件では、重要部分を特許庁から隠そうとする意図がかなり強く認定されたため、結果として不衡平行為 が認定されたものと理解できます。決して、部分訳(あるいは既成の英文抄録でも同じと思われますが)を提出したことだけが理由で特許権を無効にされた訳で はない点を良く理解する必要があると思います。
一部の企業では地裁判決後、IDSとして提出する日本語文献にはすべて全文訳を提出するよう実務を改めたところも あったと聞いていますが、本CAFC判決後でもそこまでやる必要はないと考えます。ただし、部分訳にしろ英文抄録にしろこれらをIDSに添えて提出する際 に、クレーム発明の審査に重要と思われる部分がきちんと開示されていることを確認する作業は、より一層重要になってくると思われます。
なお、本件では別の争点としてRICO法(Racketeer-Influenced and Corrupt Organization、組織犯罪防止法)に基づく反訴もサムスン側から提起されていましたが、この訴えはCAFCにより却下されています。情報元および関連情報
・Semiconductor Energy Laboratory Co. Ltd. v. Samsung Electronics Co. Ltd., 98-1377, 99-1103 (Fed. Cir. 3/2/2000).
http://www.ipo.org/semiconductor_v_samsung.htm
・SEL 2
Semiconductor Energy Laboratory Co. Ltd. v. Samsung Electronics Co. Ltd., 94 F. Supp.2d 477, 46 USPQ2d 1874 (E.D. Va. 10/23/1998).
・SEL 3
Semiconductor Energy Laboratory Co. Ltd. v. Samsung Electronics Co. Ltd., 94 F. Supp.2d 537 (E.D. Va. 1998).(※USPQに掲載なし)
・"Submitting Partly Translated Reference Justified Inequitable Conduct Finding" (56 PTCJ 36, 5/14/1998).
・"Inequitable Conduct In Related Application Renders Issued Patent Unenforceable" (57 PTCJ 1404, 12/10/1998).
・作成 豊栖 康司
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